NHK 大河ドラマ「真田丸」(作:作三谷幸喜/毎週日曜 総合テレビ午後8時 BS プレミアム 午後6時)
1月31日放送 第4回「挑戦」 演出:吉川邦夫

ショー・マスト・ゴー・オン


天正10年(1582年)3月20日、織田信長(吉田鋼太郎)に会いに諏訪に向かった昌幸(草刈正雄)と信繁(堺雅人)。
信繁は、昌幸が武藤喜兵衛時代、三方ヶ原の戦いで家康(内野聖陽)を追いつめた話が好きだと眼を輝かせる。後々の信繁の行動(大阪の陣で家康を追いつめる)の根拠を、三谷幸喜は丁寧に紡いでいるように思える。
第1話でフラッシュフォワード(大坂の陣で活躍する勇猛果敢な真田信繁の姿を最初に見せている)を用い、
未来の姿を共通認識させた上で、過去から未来に至る出来事を積み重ねていく構成だ。
第4話では天正10年6月、本能寺の変までが描かれた。大阪の陣まで、あと33年!
というわけで、相変わらず、堺雅人と大泉洋は、15、6歳くらいの少年を演じている。


織田のところには家康もいて、彼は昌幸に三方ヶ原の戦いの話をするが、昌幸はしらを切る。
昌幸は、乱世を生き残るため、何かにつけて本心を隠して駆け引きをする。これも「真田丸」の特徴のひとつであり面白さのひとつでもある。第4話でも何度も駆け引きが出て来た。
まず、昌幸が上杉に送った密書を奪い、織田に渡しておきながら、すっとぼける室賀正武(西村雅彦)との
やりとり。
室賀の狙いは薄々分かりつつ、確信をつけないので、牽制し合うだけ。室賀がわざとらしい身振りをして、この人絶対何か隠していると思わせる。

次は、4話の重要シーン。信長に会う前に、息子信忠(玉置玲央)に織田と上杉に送った文について確認される。なにゆえ両方に助けを求めたのか追求されると、なんだかんだと誤摩化す昌幸。挙げ句に、乱世を生き抜くためにこういう知恵は欠かせない、小さい国は慎重にならざるを得ないのだと主張し、この手紙(上杉への)が届かないとなれば、織田に守ってもらうしかないと言いだす。なんて面の皮が厚いんだ。
家康はその嘘を看破しようと、上杉の家老・直江兼続の名を出して脅す。
信繁アップ、家康アップ、信忠アップ。昌幸アップ。ゆっくり顔にズームしていくカメラワークがやっぱり「クイズミリオネラ」っぽい・・・。
家康と信繁が見つめ合う。一歩も引かないふたり。その奥に、眼光鋭い信繁がいて、緊迫感を煽る。ここも、信繁の未来に重要な影響を与えている場面である。
そしてこの場面、妙に画面に色がついている。庭側からアンバーな色をつけた照明を強く当てて、演劇的な効果をつくりだす。
その光に照らされて、織田信長がカツカツと足音をさせてやってくる時は、舞台俳優・吉田鋼太郎の力もあって、もの凄い迫力だった。まさに威光!
吉田がシェイクスピア劇を得意とする俳優のせいか、ここだけ俄然、シェイクスピア劇場化して見えた。もっとも、この時代、ヨーロッパではシェイクスピア(1564生まれ、1616没)が生きていた時代と重なるからか、なんとなく親和性があるのは、黒澤明がシェイクスピアの「マクベス」を戦国時代劇に置き換えた「蜘蛛巣城」などを見ても明らかなのだ。
というのもあって、今回の、信繁と家康のやりとりは「ハムレット」の劇中劇を見ているようだった。三谷幸喜は、東京サンシャインボーイズ時代の「ショー・マスト・ゴー・オン〜幕をおろすな」で「マクベス」を上演する話を描いているが、今回は「ハムレット」を使って、「戦・マスト・ゴー・オン」をやっているような感じがする。
ハムレットが父を殺した犯人をみつけるため芝居をうち、見ている時の反応で、犯人の確信を得ようとする。舞台上で演技する旅芸人たち、犯人らしき人物、その反応を見るハムレットと、素知らぬ顔をしている中でのスリルが面白いシーンだ。さながら、昌幸は、狂ったふりをしているハムレットか。そういえば、2話に表れた武田信玄の亡霊(林邦史朗)も、ハムレットの父の亡霊みたいな登場の仕方だった。
なんてことを思いながら見ていると、「真田丸」の演劇的なシーンでは、照明が濃いことに気づいた。
松(木村佳乃)の夫・小山田茂誠(高木渉)を信幸(大泉洋)に見つからないように隠すため、きり(長澤まさみ)と梅(黒木華)と松が、かさかさのかかとをテーマにしたよもやま話(ガールズトーク)を繰り広げるふりをする時すら、部屋の中の陰影が強い。

信長と明智光秀(岩下尚史)のシーンも妙に芝居がかった演出で、今度は照明が真っ赤、さらに桜風吹が舞っていた。

さて、なんとか織田につくことができた真田家。ただ、上野の所領・沼田城と岩櫃城を差し出した上、安土に人質を出さないといけなくなる。信繁は、松を人質にして、お付きの者の中に茂誠を紛れ込ませるアイデアを思いつき、とり(草笛光子)を人質にという昌幸に、皆は、松を!と誘導する。ここでもまた芝居合戦が繰り広げられる。
なぜか信幸まで「人質とは時には密偵の役わりをはたすもの」と言って加担する。
面白いのは、「真田丸」の芝居合戦ではたいてい、皆の本心を視聴者にも伝えた上で行われているが、信幸の本心だけがわからなかったことだ。
松たちの猿芝居を見逃し、松を人質に出す事にも賛成するのはなぜか。長男の立場としては茂誠のことを見逃せないが、本当は情が深くて、板挟み気分なのだろうかなどと、想像する楽しみを残しておいてくれた。
(木俣冬)