都内に住む65歳の男性Aさんは1年ほど前、外出間際に自宅でトイレを済ませ、ふとズボンを見て驚いた。太腿部分に縦に2、3筋、尿の染みが付いていたのだ。以来、用を足した後は毎回、1分ほど便器の前から動かず、尿漏れに細心の注意を払っているという。
 そんな初めての“失敗”を思い出すと今でも恥ずかしく情けない。そのため妻はもちろん、周囲の誰にも明かしていない。
 「家族や友人を連れた外出時でなくてよかったが、今後を考えると不安。尿漏れを防ぐ商品が目につくものの、自分の老化を認めるようで、とてもじゃないが買いに行けない」(Aさん)
 この症状は医学的に「排尿後尿滴下」と呼び、50代以上の男性は3人に1人が経験していると言われる。男性は女性に比べ尿道が長く、そこに溜まった尿の一部が、衣服を整えた後などに漏れ出すことがあるのだ。

 また、こんな体験者も。
 会社員男性Bさん(43)は、1年ほど前から、尿意を我慢できなくなった。そのため、仕事で出向く前などは何度もトイレに行く。それでも過去に1度、間に合わずに漏らしてしまい、グレーのズボンにできた大きな染みをコートで必死に隠した。
 事情を知る同僚に、女性用パットを使う人もいるらしいと耳打ちされたこともあるが、本人は「試してみたいが店頭で買うのは恥ずかしい」と言って悩む。思いがけず訪れる尿漏れとなると、予防も困難だ。

 専門家によれば、訴える男性の割合が増加傾向にあるという尿漏れは、加齢とともにそのリスクが高くなる。また、症状の出始めは筋肉や中枢神経が衰え始める50代以降からだという。
 加えて、男性特有の要因として、前立腺がんや前立腺肥大といった病気とその手術の影響も挙げられる。

 尿漏れ、失禁は、長らく女性の悩みと捉えられてきた。ようやく、男性専用の「軽失禁パッド」が出てきたのは一昨年の春以降で、昨年秋には主要メーカー5社の製品が出揃い“ちょい漏れ対策”などと呼んで、宣伝に力を入れ始めている。
 これまでのところ、生理用品から発展した女性用のものをベースにしているが、製品の形はさまざまで、メーカーの試行錯誤の跡がうかがえる。

 主要メーカーの『ユニ・チャーム』は、尿の吸収量別に20まで4種類を揃え、現時点でシェア1位。幅広い扇形を前に装着するのは、陰茎の動きをカバーするためだという。
 同社の調査では、尿漏れに悩む男性はもともと女性用で代用したり、ちり紙・ハンカチで対処していたことから、2年前の発売後、1年で市場規模は3倍に拡大したという。
 「男性トイレにもいずれ汚物入れが当たり前になってくると思われます」
 と、同社関係者は話す。
 一方、『花王』の製品は吸収量50で長さが36センチあり、「1枚で夜までOK」と安心感を強調。昨年10月には、男性がより買いやすいようにとパッケージのデザインを改良している。