電子マネーでの支払い【撮影/荒木尊史】

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邱永漢氏に師事し、2005年より、チャイニーズドリームを夢見て北京で製パン業を営む荒木さん。中国の旧正月「春節」(2016年は2月8日)を前に、荒木さんが肌で感じた2015年の中国の動向を振り返ってもらった。

 北京でパン工場と日本食レストランを経営しているのだが、春まで残すところわずかとなり、連日の忘年会もようやく終わりがみえてきた。あとは春節を無事にやり過ごし、1日も早く平常を取り戻すことに意識を集中させるだけだ。例年、この春節の時期はとくに時代の変化を感じやすい。

 元の切り下げ、爆買い、一人っ子政策の廃止、株の暴落、転覆や土砂崩れの大事故など昨年も多くの中国のニュースが世界を賑わせた。こうした大ニュースとは別に、本稿では私が昨年1年間で感じた変化を振り返ってみたい。あくまで、私が北京という街で暮らすなかで個人的に感じたことであり、経済統計的な根拠のある話ではないことは先に断っておく。

1.離職者が減った

この1年は離職者が例年に比べると随分と少なく、人材面では非常に安定した経営をすることができた。数値でみても明らかなとおり、中国の景気は減速している。当然、資金が回らなくなり潰れる工場も多い。そうした状況も安易な転職に歯止めをかけているのかもしれない。

2.物価と給与は安定

数年前の凄まじい勢いでの物価および人件費の高騰は一服した感がある。毎年春頃に行なわれる最低賃金の改正だが、今年はどうなるのか注目している。

3.電子マネーの普及

どこでもかしこでも電子マネーで支払いができるようになった。先週行った両替屋では、客が自身のスマホから両替商のスマホに電子マネーで人民元を支払い、USドルの現金を手にしているのを見て驚いた。レストランでもスマホでの支払いが当たり前になりつつある。

4.ネット宅配ビジネスの大ブーム

雨後の筍のごとく、大手資本から個人ベンチャーまで無数のネット宅配ビジネスが生まれた。スマホの普及に伴うように、ありとあらゆるものがスマホのアプリと電子マネーで取引されるようになった。

ネットビジネスでは完全に日本を凌駕しており、ネット専門の宅配パン屋、宅配野菜屋、出前代行サービスなど、考えられるものはすべて誰かしらが取り組んでいる。私の予想を超えるスピードで各社売上を伸ばしているが、競争も激しく、今後どうなるのか非常に気になる分野である。

5.小売業者は冬の時期

ほとんどの小売業が前年を下回る売上となっている。ネット販売に奪われている部分もあるだろうし、海外の爆買いの影響もあるだろう。景気の影響は当然だが、苦しい話しか耳に入ってこなかった。

6.外食産業は元気がよかった

レストランの件数はこの数年で驚くほど増えたが、まだまだ増え続けている。潰れる店もあるが、日本では考えられないような売上をあげているところも少なくない。外食ブームはまだまだ続くのか、気になるところである。

7.電気自動車が急速に増えつつある

北京汽車が売り出した電気自動車を目にすることが多くなった。北京で乗用車を買うには抽選でナンバープレートを手に入れないといけないが、当選率は1パーセント以下である。そのような中、北京市政府が電気自動車のナンバープレートだけは自動交付を認めたため、急速に増加している。とくに北京で増えてきている白タクの3割は電気自動車のように思える。

8.空気は前年、前々年に比べればマシになってきている

12月に北京で初めて大気汚染刑法で最高レベルの「赤色警報」が発令され大ニュースになったが、12月を除けば少しずつマシになってきているように感じる。

9.在住外国人が減ってきている

とくに日本人の減少が目立っているが、他の国々も減少している。人民元高による生活コストの上昇。PM2.5による健康被害の懸念。景気減速によるビジネスの見直しなど、複数の要因が合わさっての結果であろう。外国人向けのサービスマンションも減りつつある。

 今年の冬は過去最高に寒かったということも印象に残ったが、これは他の地域も同じようであるので割愛した。ほかにもいろいろあるが、きりがないので続きは次回にしたい。

(文/写真:荒木尊史)

著者紹介:荒木尊史 2005年より、チャイニーズドリームを夢見て北京で製パン業を営む。邱公館(北京)食品有限公司。