週刊女性編集部に電話があったのは、1月26日号で宗教法人善弘寺分院宗永寺(東京都足立区)がさいたま市岩槻区で生活保護者に提供している施設が同市の貧困ビジネス規制条例に違反し、とんでもない“ぼったくり施設”だと実態を暴露した直後だった。

「記事にある施設の連絡先を教えてもらえませんかねぇ」

電話の主は、生活保護を受けてアパート暮らしという60代の男性で、コンビニで記事を立ち読みしたという。よくよく話を聞くと「実はここへ入りたい」と言う。

同施設の入居者などによると、生活保護費の受給日に施設職員が同行し、入居費として“全額没収”。1日500円ずつお小遣いを渡していた。食事は粗末でバランスも悪く、自立生活を促すことはない。「働け」と言わないかわりに、金ヅルのように扱っていた。

同施設は新規入居者受け入れを禁じられている。しかし、宗永寺の施設は近隣に複数ある。問題のある施設・運営元として取り上げたため、「おすすめできません」と断った。

男性は深い事情は語らなかったが、違反施設のどこに魅力を感じたのか。運営元がしっかりしている施設や公的施設の情報を伝えようとすると、「知っているから結構です」と電話を切られてしまった。

貧困問題に取り組むNPO法人『ほっとプラス』は、違反施設と同じさいたま市岩槻区内で、生活保護受給者向け施設を9棟、約50部屋運営する。そのうち一緒に立っている6棟は、良心的な大家さんが無償提供している。

「元気にしている?」

「あなた、ちゃんと食べているの?」

同じ敷地内に住む大家の女性は、ここで暮らしているおよそ30人の生活保護受給者に頻繁に声をかけていた。入居者どうしも会話がある。前記した宗永寺の施設はまるで収容所のように会話が少なかったが、こちらはアットホームな雰囲気に包まれている。敷地内の掃除や除草は居住者みずからやっていて、隅々まで行き届いていた。

「代表の藤田さんたちは大学生のころから、熱心に生活保護の方の支援活動をされていましてね。大学を卒業された10年ほど前に、本格的に施設を造りたいというので、父が快くOKしたんですよ」(大家さん)

彼女は元教員だったようだ。

「私も長く福祉関係(民生委員)をやっていたものですからね。生活保護は社会的な弱者、例えば、心身に障害を持っておられる方や、リストラされた方、犯歴があって社会復帰できない方などが受けてしかるべき権利です。国内ではまだまだ偏見があって、アパートの部屋をなかなか貸してもらえない。社会の意識を変えていくためにもと思って、応援しているんです」(同)

ほっとプラス代表で聖学院大学客員准教授の藤田孝典さんは、「明日はわが身ということをわかってほしい」と話す。

「生活保護を受けている方は、中卒や高卒が約80〜90%いらっしゃる。心身が不自由な方もいます。そういった方々は生活保護の平均的な月額12万〜13万円以上の仕事に就くのはなかなか難しいんですね。また、誰でも受給者になりうるし、他人事ではありません。こうした人たちを支えていくのは、国として当たり前のことなんです」

取材・文/フリーライター山嵜信明と週刊女性取材班