「MEKURU」(Gambit)VOL.7

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 SMAP解散騒動に清原和博の逮捕と大ネタつづきの芸能マスコミ。だが裏側では、そんなビッグニュースを差し置いて芸能マスコミ人たちが「え、これ本当!?」とにわかに騒ぐ"事件"が起こっている。

 それは、先日発売されたばかりのオシャレカルチャー雑誌「MEKURU」(Gambit)VOL.7に掲載された、あるインタビュー記事の存在。同誌では小泉今日子の50歳を記念して90ページ以上にわたる彼女の大特集を組み、松田聖子や秋元康、宮藤官九郎、糸井重里といった彼女と縁の深い人々が小泉との思い出話などを語っているのだが、そのなかでとんでもない人物が登場しているのだ。

 その人物とは、小泉の所属事務所であるバーニングプロダクションの社長で、「芸能界のドン」と呼ばれる周防郁雄氏。これまでメディアに決して登場することのなかった彼が、なんと6ページにおよぶロングインタビューに応じているのだ。

 ジャニーズ事務所のジャニー喜多川氏が"芸能界の帝王"であるならば、周防氏はまさに"芸能界の黒幕"。バーニング自体の所属芸能人は郷ひろみや小池徹平、ウエンツ瑛士、内田有紀など10数名で事務所規模は小さいが、いわゆる"B系"と呼ばれるバーニング系列の事務所や「業務提携」といったかたちでバーニングの庇護下にある芸能人の数は多数にのぼり、芸能プロダクションの7割はバーニング系だと言われているほど。スターダストプロモーションやアミューズ、研音、オスカープロモーション、ホリプロといった大手プロダクションも周防氏には頭が上がらないという権力を誇り、芸能界を裏から牛耳ってきた"芸能界のラスボス"といっていい存在だ。

 また、周防氏は政財界や警察にも強いパイプを持ち、さらに2001年には事務所への銃撃事件も起こっているように暴力団がらみの噂もささやかれた。このような圧倒的なバックの"力"を背後にちらつかせながら、一方でバーニングはマスコミを懐柔。テレビ局の編成やプロデューサー、スポーツ紙や週刊誌の記者、広告代理店などには手厚い接待を行い、ときに便宜をはかることでキャスティング権を握り、逆にB系タレントのスキャンダル記事を潰してきた。つまり、マスコミに恩を売ることでメディアを掌握し、「バーニングには逆らえない」という絶大な権力を得てきたのだ。

 このように、コワモテで裏のフィクサーと恐れられてきた周防氏だが、昔からなぜか"小泉今日子に甘い"と言われつづけてきた。たとえば周防氏が同じように目をかけてきた藤原紀香や内田有紀にしても、恋愛スキャンダルが起こったり結婚しようとすると、相手の男性だけでなくタレント本人にも厳しい対応を行ってきたというが、なぜかキョンキョンだけは扱いが違った。

 しかし、今回の「MEKURU」インタビューを読むと、その謎が解けた。というのも、周防氏がいかに小泉今日子を可愛がっているかがよくわかるからだ。

 インタビューのなかで、周防氏はまず小泉今日子と初めて会ったときの印象をこう語る。

〈会った瞬間に『ああ、すごいな』って思ったんですよ。アゴがとがってるところがすごく良いし、目力と言うのかな......目が違ったの。僕はいつもね、タレントさんを自分の事務所でマネージメントするかどうかって、初めて会った瞬間にポーンと決めちゃうんだよ。僕にとっては、今日子は本当に言うことなかったです。『やった〜』っていう気持ちだったね〉

 会った瞬間に小泉今日子に惚れ込んだ周防氏は、彼女を『寺内貫太郎一家』『時間ですよ』『ムー一族』(すべてTBS)といった人気ドラマを手がけた演出家の久世光彦と引き合わせる。小泉にとって久世は〈演技もお行儀も文章を書くことも全部私に教えてくれた人だった〉(『小泉今日子書評集』中央公論新社)と語るほどの存在で、1983年に久世演出作品『あとは寝るだけ』(テレビ朝日系)に出演して以降、本人が〈恩師と言える唯一の存在〉と評するほどの関係となる。

〈今日子は初めて会ったときから一味違う子だったからね。"久世は絶対、今日子にピッタリだなあ。これは早めに会わせにゃいかん"っていう、僕の直感だったんです〉
〈ただね、何回か僕は久世と揉めたんです。僕を通さずに今日子と仕事を進めるから、『おまえ、いい加減にしろ、コノヤロー』って大喧嘩したこともあって(笑)。先輩の田邊さん(田邊昭知/田辺エージェンシー代表取締役社長)が間に入って僕の前で久世のことを怒ってくれたから、丸く収まったんだけど。『その仕事をやるのはいいけどさぁ、俺に一言話をすればいいじゃないか。そのたった一言ができないのがおまえの悪いとこだよ』なんて言ったりしてね(笑)〉

 周防氏と久世氏のトラブルを収めたのが、SMAP解散騒動でも名前の出た田邊昭知氏だったというのは興味深いがそれはともかく、このエピソードひとつとっても、小泉が周防社長にとって、特別な存在だったことがよくわかる。

 というのも、事務所を通さないで仕事を進めるというのは芸能界においてもっとも重大なルール違反であり、その後の取引を一切中止してもおかしくないトラブルだからだ。とくに"所属事務所への裏切り、造反は許さない"という姿勢を貫く周防氏にとっては、絶対に許せない問題だったはずだ。普通なら小泉も久世も芸能界から追放されていてもおかしくない話だが、しかし、そうしないほど周防氏は小泉を宝のように特別に扱っていたのだろう。そしてその後も、『花嫁人形は眠らない』(TBS系)、『センセイの鞄』(WOWOW)と、小泉は定期的に久世演出作品に出演することになる。

 このように小泉が事務所を通さずに勝手に物事を進めるのは、実は久世との一件だけではない。もともと聖子ちゃんカットでデビューした彼女が、事務所に無断で髪を切ってショートカットにしたエピソードは有名だが、事務所スタッフから大目玉を食らっても不思議ではないこの一件に関しても、周防氏はあっけらかんと語る。

〈そういうのは全部、本人がやりたくてやったことなんだよ。刈り上げにするときも、僕にはなんの相談もなかったしさ(笑)。でもねぇ、それがピッタリ似合うんだよね。(中略)もともと彼女に才能があったんでしょうね。事務所は何もしてないの。彼女に関しては、僕は何も能書きを言えないんだよね(笑)〉

 彼女がやりたいと言ったものはやらせる。その一例が、91年にリリースされた小泉今日子作詞のシングル「あなたに会えてよかった」だ。発売前、この曲を聴いた周防氏は「こんなの売れるわけねぇだろう」「(売れたら)なんでも言うこと聞いてやるよ」と一顧だにしなかったのだが、結果は小泉の読みが当たり、105万枚以上売り上げる大ヒット曲に。小泉の自己プロデュース能力の高さが数字として証明された格好だが、だからこそ周防氏は目を細めるかのようにこう語るのだ。

〈ほとんど今日子本人がやりたいようにやってるけど、彼女がやることなすこと、なんか納得しちゃうんだよね〉

 あの「芸能界のドン」に、「なんか納得しちゃうんだよね」と言わせてしまう......。すべてを黙らせてしまうキョンキョンの実力には思わず震えてしまうが、当然ながら久世氏の一件で問題になったはずの事務所を通さない仕事も、その後、小泉今日子は継続して受けていく。しかしなぜ、彼女だけは"特別"なのか──その理由は、周防氏が重要視する"義理"を小泉が守っているからだろう。

〈彼女の素晴らしいところはね、デビューして人気が出始めた頃に彼女を認めてくれたアシスタント・プロデューサーとかディレクターからの、『私が、僕が、一本立ちしたときは、小泉さん協力してね』なんていう約束を、今でもちゃ〜んと守ってるところ。だから、事務所も知らないところで1シーンだけ出てる作品がいっぱいあるんだよ(笑)。その義理堅さは半端じゃないよね〉

 さすがは元厚木のヤンキー、キョンキョン。目ざといだけでなく、スターになってもレディース魂を忘れない小泉だからこそ、周防氏も一目を置いているというわけだ。事実、コワモテで鳴らす周防氏が、小泉のことを語るとまるで"好々爺"状態。いまなお小泉に"メロメロ"であるようだ。

〈自分のとこのタレントを褒めるのも気持ち悪いんだけど、天才に近いと思う。センスもいいしね〉
〈彼女が僕のことを認めてるとは思わないけどね(笑)。でも、僕も長いことこの業界にいるからねぇ......もう50年とか、半世紀にわたっているわけですから、良いにつけ悪いにつけ、長年つきあってきたからこその"何か"はあるのかもしれない。きっとね、そんな子には、これからもう二度と出会えないんだと思う〉

「『芸能界のドン』も小泉今日子には甘い」、その噂を見事に裏付けるようなインタビューである。これまで決して表に出ることのなかった周防氏が、なぜ今回これまでの禁を破りインタビューを受けたのか? それは、75歳となった周防氏が、置き土産として小泉に何かを残したかったからではないだろうか。インタビューではこんなことを語っている。

〈僕ももう75歳になるから、あと何年生きられるかわかんないけど......〉
〈頑張ってほしいね。前から、いろんな分野でプロデュースをしてみたいって言ってるから、そっちの方向に進むのかもしれないけど......すべてのことに頑張ってほしいと思う〉

 このインタビューは、これまで悪名高かった「芸能界のドン」が初めてメディア上に現れ、人間らしさを見せた瞬間であり、同時に「あの周防氏をも懐柔してしまうキョンキョンはやっぱりすごい」ということを印象付けた。昨年には小泉がバーニングから独立を画策しているとも報じられたが、頭のいい小泉がドンの逆鱗にふれるような真似はしないだろう。逆に、周防氏に万が一のことがあったとき、二代目芸能界のドンを襲名するのは小泉ではないのか......そんな気さえしてしまうのだった。
(新田 樹)