間宮祥太朗、オンリーワン世代の葛藤「ヌルッと育ってきた僕らはこれからどうなる?」
このスタイリッシュな20代の若者の口から「根性」という、らしからぬ“昭和”な言葉が飛び出す。「僕、昭和っぽいってよく言われるんですよ」。間宮祥太朗は笑いながらそう語る。まもなく公開となる映画『ライチ☆光クラブ』は古屋兎丸の人気コミックを実写化した作品だが、そのオリジナルは1985年に発表された伝説の舞台。20代前半の若者は昭和のエネルギーにどう向き合い、何を手にしたのか?

撮影/平岩亨 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.

愛に生き、愛に壊れ、破滅していく…



――醜い大人たちを否定し、自分たちの世界を作り上げるために廃墟に集う少年たち――。独特の世界観が貫かれた作品ですが、演じる側として脚本の段階でどのようなイメージを持たれましたか?

撮影前は、まずはセットが建ってみないことには、この世界観をどう映像化するのか、見えてこない部分が大きかったです。でも、実際のセットを見て「あぁ、なるほど。これなら大丈夫」と確信しました。



――あの廃墟の中の秘密基地が精巧に再現されていたんですね。

大きな倉庫の中にすべて作られていました。演じている最中はただ、そこで過ごすだけでよかった。不思議なことにあそこに何日もいると、気持ちがどんどん閉鎖的になっていくんですね(笑)。

――ダークな世界観、少年たちの狂気に心が浸食されていく?

太陽の光が差さない暗闇、寒さと淀んだ空気。その中で少年たちは、ガサゴソとゴキブリのようにうごめいていて、でも彼らは自分たちを正義だと信じている哀しさみたいなものもあって…。“少年性”というものが無条件に持つ残酷さを突きつける、素晴らしい舞台装置でした。



――間宮さん演じるジャイボは、リーダーのゼラ(古川雄輝)を妄信し、その手足として狂気と残酷性を発揮するトリックスター。コミックでは一番の人気キャラクターです。演じる上でどんなことを意識されたんですか?

自分で演じる際にジャイボを「奇抜だ」と認識してしまうと成立しないと思いました。奇抜さというのは、日常生活で接するタイプの人間かそうじゃないかなんでしょうけど、ジャイボもゼラも決して自分を「奇抜」とも「異常」とも感じていないと思うんです。

――むしろ、世界や大人たちが「異常」で自分たちこそが「正義」だと。

彼らが迎える結末は、彼らなりの正義を貫いた結果であり、ジャイボは愛に生き、愛に壊れ、破滅していく。その愛が、周囲を巻き込んで切り裂いてしまうほど鋭利だったというだけなんです。その意味で純粋さを意識し、僕の世界の中心はゼラだという気持ちで演じました。ピュアで、かわいらしく、哀しくもどかしい生き物だなって思います。




――ジャイボを含め、あの廃墟に集った少年たちの心情は理解できますか?

絶対的な存在を前にすると、人間は自分で思考することをやめてしまうものなんだなというのは理解できました。ある種の集団心理の恐ろしさというか…それが壊れたときのもろさも恐ろしいものだなって思いましたね。