先ごろ行なわれたリオデジャネイロ五輪アジア最終予選(兼アジアU−23選手権)で、U−23日本代表が優勝。上位3カ国に与えられるリオ行きのキップを獲得した。

 大会前、日本のリオ五輪出場はかなり厳しいと見られていた。この年代では2011年アジアU−19選手権、2014年アジアU−22選手権、同年仁川アジア大会と、いずれもベスト8で敗退していたからだ。実際、日本の実力は、今大会でも5、6番手といったところだったと思う。

 そんななか、日本が最終的に優勝までできたのは、スタッフも含めたチームの総合力によるところが大きかった。

 日本は中2日(準々決勝後は中3日)で試合が続く過密日程を踏まえ、毎試合のように選手を大きく入れ替えた。早川直樹コンディショニングコーチは語る。

「ワールドカップはグループリーグを抜ければ成功だが、この大会は準決勝で勝って初めて評価される。なので、グループリーグが終わっても余力があるようにしなければならない。ターンオーバーで使ってもらったおかげで、選手はフレッシュな状態でピッチに立てた」

 また、手倉森誠監督が「(体力の)回復にもつながるし、食事があるからこそ元気でいられる」と語っていたように、日本代表専属シェフである西芳照氏をチームに帯同させたことも慧眼(けいがん)だった。

 こうしたチーム一丸となったサポートもあって、選手のコンディションは高いレベルで保たれたまま、最後の決勝まで戦うことができた。

 日本のコンディショニングがいかにうまく進められていたかは、開催国カタールと比較するとよく分かる。

 2022年自国開催のワールドカップへ向け、この世代の強化を図るカタールは、選手個々の技術ではおそらく今大会でもナンバー1だっただろう。テンポよくパスをつなぐコンビネーションもよく、チームとしての完成度も高かった。

 しかし、少数精鋭で強化してきたツケなのか、選手層が薄く、先発メンバーはほぼ固定。交代出場の選手すらも限られており、19日間で最大6試合を戦う集団としてはあまりに脆弱だった。

 結局、決勝トーナメントに入って試合終盤の息切れが目立ち、失点が増加。3位決定戦でイラクに1−2の逆転負けを喫し、リオ五輪出場を逃した。

 過密日程であっても、いかにコンディションを保ち、力を落とさずに最後まで戦い抜くか。そんなノウハウの有無が、今大会の明暗を分けた。総合力がものを言う大会にあって、アジアでは突出した経験値を持つ日本と韓国が決勝に進んだことは、当然と言えば当然だった。

 また、今回のアジア最終予選が集中開催となり、拘束期間が(ホーム・アンド・アウェー方式による1試合ごとの期間より)長くなったことで、各チームがヨーロッパでプレーする選手を招集し切れなかったことも、日本にとっては幸いした。

 たとえば、イラクのアリ・アドナンなどは、その代表である。過去の対戦で常に日本が苦しめられてきた大型レフティは、イタリア・セリエAのウディネーゼに所属しており、今大会を欠場。イラクは代わって経験の乏しい選手を起用せざるをえず、左サイドのやり繰りに苦労していた。

 いずれにしても、今回の開催方式が日本にはプラスに働いたことは間違いない。

 もしロンドン五輪以前のようなホーム・アンド・アウェー方式だったら、結果は違うものになった可能性は十分にある。現状のアジアにおける(この世代の)力関係を考えれば、日本はあらゆる意味でうまく戦った。100点満点どころか、120点をつけてもいいと思う。

 とはいえ、それはあくまでも、現状の力関係を認めたうえでの話である。

 言い換えれば今大会は、「もはや日本はアジアにおける絶対的な強者でない」ことを、思い知らされた大会だったと言っていい。

 日本は今大会で6試合を戦ったが、そのうち主導権を握って試合を進められたのは、グループリーグ第2戦のタイ戦くらい。あとの試合は、相手に攻め込まれる苦しい時間が続いた。初戦の北朝鮮戦を筆頭に、相手の拙攻に助けられた面があったことは否めない。

 それでも、ある程度守備に回る時間が長くなるのは構わない。U−23代表は岩波拓也、植田直通、奈良竜樹と優れたセンターバックが揃った、日本では稀有な世代。それを考えれば、このチームの長所を生かした戦い方だったとも言える。

 問題だったのは相手の攻撃を防いだ、その後だ。

 せっかくボールを奪っても、2本3本とパスをつなぐことができない。必然、攻撃は、相手DFラインの背後を狙ったロングボールに頼ることが多くなった。

 このチームがそれほどボールポゼッションにこだわっていなかったのは確かだ。手倉森監督にしても「日本は今回、耐えて勝つスタイル」だと語っている。

 しかし、この問題は、チームのコンセプトうんぬんの話ではない。やらないのではなく、やろうとしてもできなかったというほうが、表現としては実際の現象に近い。

 現在の日本では、育成年代の多くのチームが、多少の差こそあれ、「しっかりとパスをつないで攻撃を組み立てること」を重視している。にもかかわらず、その代表であるチームがアジアレベルでさえボールを保持できず、劣勢を強いられ、「耐えて勝つ」ことしかできないのが現実なのである。

 MF矢島慎也は日本の課題について、こんなことを話してくれている。

「韓国戦の前半はファーストタッチのコントロールがよくなくて、そこを相手に引っかけられてショートカウンターという展開が多かった。うまく(パスを)つなげないときに、自分がどうするか。(準々決勝の)イラン戦もそうだし、そこはずっと課題で今大会でもなかなかうまくいかなかった。僕のところ(右MF)でもっとボールが収まれば、悪い展開も少しはよくなる。そこは個人のスキルの問題だと思う」

 確かに、決勝の韓国戦を見ていても、矢島に限らず、相手に囲まれた状況から苦し紛れのワンタッチパスで逃げようとしてミスになり、逆に危険なカウンターを受けるシーンは多かった。

 いくら守備に軸足を置くにしても、これではあまりにも苦しい。

 キャプテンのMF遠藤航はリオ五輪出場を決めた後、「内容は全部満足できるものではない」と認め、こう語っている。

「ガマンして、しのいで勝てるのは自分たちのよさだが、これで五輪も勝てるとは思っていない。日本らしい崩しや攻撃サッカーを目指していかないと。(耐えて勝つことで)結果が出たので、これからは攻撃の部分で自分たちのよさを出せる戦いをしていきたい」

 決勝トーナメントに入ってからの日本は、他を圧倒するコンディションのよさを武器に、試合を終盤勝負に持ち込んだ。だとしても、もっとパスを動かし、相手に足を使わせて消耗させるのならともかく、ただひたすら相手の攻撃に耐えているだけでは、終盤勝負に入る前にやられかねない。

 幸いにして、リオ五輪出場を逃すという最悪の事態は避けられた。だが、結果と内容は別の話。肝心な問題――これが4大会連続でU−20ワールドカップ出場を逃している原因にも通じている――は何も解決していない。

 今大会でMVPを獲得したFW中島翔哉は、より直接的な言葉で現状を口にする。

「ここまで勝ち上がったのは運もあって、そういうのがかみ合った感じだった。自分たちの実力は上のほうじゃないと思う」

 2010年ワールドカップ南アフリカ大会や2012年ロンドン五輪など、日本が守備に軸足を置くことで好成績を残した例はある。

 だが、今回はまだアジア最終予選の段階にして、このありさまである。

 もはや、もっと頑張れと、このチームの尻を叩けば済む問題ではない。日本サッカー界全体の問題として、深刻な事態だと受け止める必要がある。

浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki