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●離婚の慰謝料がとれるのってどんな時?
離婚の慰謝料とは、ズバリ「離婚によって傷ついたので慰謝料払ってください」という名目のものです。法的には「婚姻関係を破たんさせる有責行為があり、これにより被った精神的苦痛を慰謝するための賠償金」という位置づけとされており、夫婦生活に亀裂を生じさせるような原因を作った側が、それにより離婚を強いられた相手方に対して支払うべきお金ということになります。

細かい話ですが、離婚の際の慰謝料については、不倫や暴力といった個別の行為自体による精神的苦痛、離婚に至るまでの一連の行為による精神的苦痛、配偶者の地位を奪われたことに対する精神的苦痛といった側面を併せ持つということもできます。法的には、円満な夫婦生活を侵害するという意味で、不法行為(民法709条)に基づく慰謝料請求となります。

○婚姻関係を破たんさせるような行為をした時

離婚の慰謝料がそのようなものである以上、相手方が「婚姻関係を破たんさせるような行為」をした場合、基本的には離婚原因を作った、として慰謝料請求ができるといえます。

法定の離婚原因として挙げられるのは、不貞行為、悪意の遺棄、婚姻を継続しがたい重大な事由等ですが、やはり典型は不貞行為=不倫・浮気ということになります。また、一方的に家出をして生活費も渡さないといった「悪意の遺棄」も離婚原因です。「暴力」、「性交拒否」、「精神的虐待」、最近騒がれている「モラハラ」といった事情も、場合によっては「婚姻を継続しがたい重大な事由」があるとして、離婚原因となり、慰謝料請求が認められる可能性があります。

不倫の場合は、婚姻関係を破たんさせた原因が、配偶者と不倫相手の2人が共同したことになります(共同不法行為)。そのため、配偶者と不倫相手両方に慰謝料請求をすることができます(不真正連帯債務)。

●慰謝料の相場はどのくらいの金額?
慰謝料は、「どれだけ傷ついたか」を金額で示すものとなります。基本的には、明確な基準があるわけではなく、ケースバイケースで決まることがほとんどです。

ただ、裁判所の認定を検討してみると、「不倫などがあっても離婚に至らないケースは100万円以下」「不倫などが原因で別居に至ったケースは100万円〜200万円」「不倫などが原因で離婚に至ったケースは100万円〜300万円」程度に落ち着くことが多いようです。一応の相場といえるかと思います。

○慰謝料が決まる事情

実際の判断では、婚姻期間の長短、不倫の期間・回数、離婚原因の悪質性、年齢、子供の有無、等のさまざまな事情を考慮して算定することになりますが、一応の目安としては、以下のような事情を総合考慮することとなります。

○年齢=浮気相手の年齢や夫婦の年齢により再婚の可能性等が変わる

○婚姻期間=期間が長いほど傷は深い

○浮気発覚前の婚姻生活の状況=円満であった程、崩壊させた責任が重い

○被害者側の落ち度=自身にも落ち度があれば慰謝料は減額される

○浮気の期間・内容・頻度=内容が重く長年繰り返されれば責任は重い

○約束反故=もうしないと約束したのに破った場合は悪質=増額される

○精神的苦痛の程度=うつ病になるなど大きな精神的損害があれば増額される

○子どもの有無・年齢・影響=子供がいる、ショックを受けている等の事情は増額事由

○反省・謝罪等=原因を作った後も不誠実な対応に終始している場合は増額される

○経済状況=相手の収入や資産が高額な場合、若干増額の可能性がある

これらを総合考慮して、「さすがにそれはひどい」という事情があればあるほど、慰謝料は高額になります。一方、「原因を作った側にも酌むべき事情がある」「請求する側にも問題があったのではないか」といった事情があれば、慰謝料を減額する方向に働きます。

●相手が慰謝料の減額請求をしてきたらどうすればいいの?
こちらが請求した慰謝料の額に対し、「納得いかない」と減額の主張をされることはよくあることです。法外な請求をしている場合はもちろん、総合考慮の結果、「法的に高額」と判断されるは減額に応じねばならないこともあります。

その場合、上記の慰謝料の相場や、考慮事情等が参考になると思いますが、あくまで上記金額等は、「裁判に至った場合に裁判所が認定する金額」ということになります。裁判に至らない以上は、「合意しない限り金額は決まらない」わけですから、納得いかないまま減額に応じる必要はありません。最終的に納得のいく金額で合意に至ることを目指すべきです。簡単に減額には応じない、これが一番大事なことです。

○証拠はしっかり保存を

また、請求する側が証拠をしっかり持っていた方が慰謝料を減額されずにすむという側面があります。裁判になった場合、証拠がないと負けてしまう可能性もありますので、「払ってくれないのであれば裁判を起こします」と強気で主張するためにも、不倫や暴力などの証拠はしっかり保存しておくようにしましょう。

例えば、不倫にまつわる写真やメール、暴力によるけがやうつ病等の診断書などは、大事な証拠となってきます。なお、証拠は初めから全て相手に開示するよりは、小出しにするか、裁判まではある程度隠しておくのが得策です。

「相手から離婚を申し入れられている。しかし法定の離婚原因がない」というケースは、相場よりも高額が期待できるケースです。法定の離婚原因がない以上、納得いかない離婚に応じるべきいわれはありません。慰謝料についても妥協しない姿勢でよいでしょう。

意地悪な言い方に聞こえるかもしれませんが、相手が法に訴えても離婚ができない以上、「絶対に離婚したい」のであれば、「それ相応の手切れ金を払ってください」ということになるわけです。こういったケースは「納得のいく金額を提示してくれるまで離婚はしません」という姿勢を貫くことによって、高額の慰謝料の獲得が見込めます。

離婚はやむを得ないとあきらめてしまい、しかも納得いかない金額で離婚をしてしまうと後々になって後悔する方も少なくありません。一方、納得のいく慰謝料を受け取れれば、仮に離婚せざるを得ない状況となっても、ある程度、気持ちを前向きに今後の人生をスタートさせることができる、そういった一面は否定できないと思います。

相手方に全面的に責任があるようなケースであれば、安易に妥協はせずに、しっかりと慰謝料を支払ってもらうことが大事です。悩んだときは、弁護士も頼ってくださいね。

※写真は本文と関係ありません

<著者プロフィール>
篠田恵里香(しのだえりか)
東京弁護士会所属。東京を拠点に活動。債務整理をはじめ、男女トラブル、交通事故問題などを得意分野として多く扱う。また、離婚等に関する豊富な知識を持つことを証明する夫婦カウンセラー(JADP認定)の資格も保有している。外資系ホテル勤務を経て、新司法試験に合格した経験から、独自に考案した勉強法をまとめた『ふつうのOLだった私が2年で弁護士になれた夢がかなう勉強法』(あさ出版)が発売中。『Kis-My-Ft2 presentsOLくらぶ』(テレビ朝日)や『ロンドンブーツ1号2号田村淳のNewsCLUB』(文化放送)ほか、多数のメディア番組に出演中。

ブログ「弁護士篠田恵里香の弁護道」

(アディーレ法律事務所編)