菅義偉官房長官は1日午後、「わが国はいかなる国に対してもスパイ活動は行っていない」と強調した。中国版ツイッターの微博(ウェイボー)に「うそだ!」とする書き込みが殺到した。(イメージ写真提供:123RF)

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 菅義偉官房長官は1日午後、中国でスパイ活動に関わったとして、2015年6月に北京市内で刑事拘束された日本人男性が1月に逮捕されたと明らかにした。菅官房長官は「わが国はいかなる国に対してもスパイ活動は行っていない」と強調した。同ニュースが中国に伝わると、中国版ツイッターの微博(ウェイボー)に「うそだ!」とする書き込みが殺到した。

 中国現行犯逮捕の制度がなく、警察など関係機関が自らの判断で容疑者の身柄を拘束する場合には「刑事拘束」という制度を適用する。警察は「容疑が固まった」と判断した時点で、検察院(日本では裁判所)に「逮捕」の許可を申請する。

 菅官房長官は、北京市内で身柄を拘束された日本人男性は「刑事拘留」の状態だった男性に対して、中国当局から1月に逮捕したと連絡があったと述べた。しかし、中国の刑事訴訟法では、警察による刑事拘留期間の延長申請が認められ、検察院による逮捕の許可までの期間もいっぱいに使ったとしても、「刑事拘留」期間は40日以下であるはずで、中国当局がどのような法的根拠で男性を拘束しつづけたかには、疑問が残る。

 中国メディアは、菅官房長官の発言を報じた。中国人読者が特に注目したのは、「わが国はいかなる国に対してもスパイ活動は行っていない」の部分だ。

 微博によせられたコメントのうち、2日正午現在で「いいね」が最も多いのは「自分をスパイと認める奴はいない」だ。2番目に多かったのは「いいね」が2番目に多かったのは「日本じゃ『間諜』じゃなくて『特務』と呼んでいるんだろ」だった。

 中国でスパイは「間諜(ヂェンティエ)」と呼ばれるが、スパイを含め「特殊工作」をする軍・政府関係者が「特務(テォーウー)」と呼ばれることが多い。菅官房長官が、いい加減なごまかしをしたとの見方だ。

 さらに「冗談だろ。あんたらはいかなる国にもスパイ活動をしているだって。そういうことは自分の国の国民にだけしている」といったコメントが並んだ。「日本はいかなるAVも撮影したことがない」との書き込みもあった。「誰が見てもうその発言」の意だ。

 ただし、日本を一方的に非難するのではなく、「外交辞令が恥しらずなのは、われわれと同じ」と、自国政府への当てこすりとみられる書き込みもある。

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◆解説◆
 中国人の間では、日本人に対して「勤勉」、「礼儀正しい」といったプラスの評価があると同時に、「思っていることと言うことがが違う」、「言うこととやることが違う」といった悪評もある。背景には、日本人はその場の雰囲気を壊すことを恐れる場合が多く、相手に調子を合わせる発言をすることが多いことがあると考えられる。

 「日本人は中国人に対しては『中国に戦争を仕掛けたのは悪かった』と言いながら、日本人だけで集まると『日本だけが悪かったのではない』と言う」と批判する中国人も珍しくない。

 菅官房長官の発言も「その場限りのきれいごとで言い逃れ」と受け止められたようだ。

 10年以上前の話だが、日本に長期滞在していた中国人研究者が、「憲法第9条で、日本に対する不信感をかえって強める中国人もいる」と指摘した。戦争と戦力保持を憲法で謳いながら、「専守防衛のための戦力は戦力ではない」と主張するのは、国内向けの政治手法としては分からないでもないが、国際的には通用しないとの意見だった。中国人にとってみれば「日本人のいつもの方法。思っていることと言うこととやることがバラバラ」と感じる場合が多いと言う。

 同研究者は日本と周辺国の関係が良好な時期に、時間をかけて真意を説明してから憲法9条を改正して、「言行一致」にした方が、日本にとって長期的には有利との考えを示した。日本人が得意とする「根回し」の能力を発揮すべきとの意見だ。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:123RF)