欧米諸国では、高齢者の自動車運転事故の増加により、一定の年齢に達したら免許証を返還する「ドライバー定年制」を設けるべきだという議論が盛んだ。日本でも道路交通法が2014年に改正され、免許更新時に75歳以上の認知能力テストが導入された。

実際に高齢者が運転できなくなったらどうなるのか。精神的ショックや生活の不便さから「うつ」になる人が2倍に増えるという研究を米コロンビア大のチームがまとめ、米医学誌「JAGS」(電子版)2016年1月19日号に発表した。

長期療養施設に入居するリスクも5倍

研究は、過去に発表された高齢者と自動車運転に関する多くの論文の中から、運転を中止したケースを取り扱った16件の調査を分析する方法で行なわれた。その結果、次のことがわかった。

(1)運転の中止は、高齢者の全体的な健康状態を悪化させ、認知能力の低下を招く。特に車を使えないことで便利な社会生活を送れなくなり、老人ホームなどの長期療養施設に入居するリスクが5倍近くも高まる。
(2)運転中止を余儀なくされた高齢者は、運転を続けている高齢者に比べ、うつになるリスクが1.91倍に高まる。
(3)車の代わりにバス・鉄道などの交通手段を使用しても、うつ症状の改善にはつながらない。

この結果について、同大医学部のスタンフォード・チフリー教授は「高齢者が運転を中止する際には、健康への悪影響も考慮するべきです」と語っている。