誰もが悩む得体の知れない口臭の正体とは? shutterstock.com

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 東大阪市の歯科医院長・本田俊一氏は日本で初めての「口臭外来」を開設して好評だ。きっかけは、中年男性患者の「先生、俺って口臭ひどくないですか?」のひと言だった。

 「困っている人を見捨てない」の精神で、口臭の原因と治療法を探求し、現在は全国約300の歯科医院と提携を結び「ほんだ式口臭治療」を行っている。日本口臭学会常任理事でもある口臭治療のパイオニアに、口臭のすべてを訊いた。

 「口臭はだれにでもあります。イ気錣笋な息イ箸いΔ發里和減澆靴泙擦鵝廚函∨榲聴綮佞蕨辰兄呂瓩拭

 「口の中が無臭ならば、ガムなどを噛んでミントの香りを乗せれば、さわやかになります。ですから、まず臭いをとること、。つまりデオドラントが重要ということになります」

 私たちの多くは口臭を気にしている。そして人に会う前に、ミントキャンデイをなめたり、歯を磨いたりするが、根本的な口臭対策になっているのだろうか? 本田医師は、私たちの多くは口臭に対して正しい知識を持っていないという。

 「よく誤解がありますが、口臭の見地からいうと胃と口はつながっていません。胃が悪くなったからといって悪臭成分が食道を逆流して呼気にあらわれることは、逆流性食道炎のような疾患でない限りまずありません」

 市販されている口臭対策グッズで、飲み込むタイプのものなどはほとんど効果がないという。

 さらに「胃などの消化器官が変調をきたすと、だ液の分泌が減少します。そのため口臭が起こるのです。また口の中には、さまざまな菌が棲みついていますが、臭いの元になるのは嫌気性の菌です。歯磨きや殺菌剤では、一時的に菌を減らすことはできますが、しばらくすると、ほぼ元の数に戻ってしまいます」という。

 「口の中には1ccあたり、臭いの元になる菌とならない菌を含めて約700億個の細菌がいます。歯磨きをするとこれらの細菌は約350億個に減りますが、40分後には700億個に増えることがわかっています。さらに、舌を磨いても臭いはとれません。むしろ傷つけてしまうと口臭の原因になります」
 
 口臭対策には、歯磨きや舌磨きもまた、あまり効果がないのである。

健康な人でも1日4、5回は口臭が強くなる

 さらに口臭を気にしすぎて、メンタルの深い闇に沈んでしまう人もいる。

 「生理的口臭といって、人は生きていれば誰にでも、1日の中で4、5回は息が臭いときがあります。もちろん、虫歯、歯周病、鼻炎、扁桃腺炎、さらには糖尿病など内科の病気に罹ると口臭が起こることがあります」

 「しかし健康であっても、朝起きたときなどには生理的口臭が起こります。健康な人の9割は、口臭がするかな?と気づいてもすぐに忘れてしまいます。ところが、10人に1人ぐらい、このわずかな時のことを一日中気にしてしまう人がいます」

 ほんだ歯科の「口臭外来」は、このような人を救うために木・金・土曜日に開かれている。

 「私が口臭を研究し始めたきっかけは、Aさんという患者さんでした。中年の男性、おっさんです。Aさんは歯周病の治療が終わって、予防のために定期的にスケーリング(歯石除去)に来られていました。そのAさんが、私に尋ねられたのです。『先生、俺って口臭ひどくないですか?』」

 「私はAさんの口に鼻をもっていきました。おっさん同士が顔を合わせて妙な光景でしたが、私は臭いを感じませんでした。『臭いませんよ』というと、Aさんは『奥さんもそう言うが、会社に行くと口臭がひどくなって、オフィス中に臭いがたちこめて、私と話す人はみんな手を鼻に持っていくのだ』と、いうのです」

 通院歴が長かった患者さんということもあり、Aさんの悩みを「気のせいですよ」と伝えただけでは片付けられずに、本田医師はとことん付き合った。

 「まず、食生活や生活習慣、会社で口臭を感じたときの状況を詳しく書き出してもらいました。すると、私がとるにたらないと考えていた生理的口臭の全てに、不快や不安を感じていることがわかりました。

 「しかし、歯も舌もきれいです。ためしに、だ液をメスシリンダーに吐き出してもらうと、大変に汚れていて、かいでみるとものすごい悪臭でした。口臭の真犯人が見つかった! と思いました」

口臭で"人生が壊れてしまった"患者さんが元気に

 アメリカでは、90年代に口臭治療ブームが起こったが、当時も今も、第三者が確かに臭いと認めた場合だけ治療が行われている。Aさんのように、奥さんが臭くないといえば、治療されない。

 本田医師は、「健康であっても起こる生理的口臭をコントロールする」「口臭がなくても口臭不安につながる原因について治療する」という2つの治療法を編み出すことで、第三者が認定しない口臭についての悩みを解決することに成功した。

 「ある青年は、中高生の頃から口臭に悩んでいて、口臭を治すために歯医者になった。けれども治らない。しかし、当院の口臭外来に来たら元気になりました。28歳の女性は、思春期からずっと口臭に悩んでいて結婚もできなかった。ところが元気になって、生まれて初めて電車に乗ってコンサートに行かれました」

 「口臭外来の患者さんを診ていて思うのは、虫歯や歯周病で人生がこわれてしまうことはないが、口臭ではあるのだということです」
 
 本田医師は、治療の方法を公開していて、それを学んだ医師がいる全国約300の歯科医院で、ほんだ式口臭治療を受けることができる。提携医院は、ほんだ歯科のホームページにリストが掲載されている。
 
 また、大多数の、ときどき口臭が気になるが、深刻にはとらえていな人たちも「生理的口臭のコントロール」には大いに興味があるだろう。
 
 第2回では、まず口臭の原因をくわしく説明してもらい、さらに口臭についてメンタル的に悩み「口臭外来」にやってくる人たちがどうやって元気になっていくかを訊く。
(取材・文=増澤曜子)


『もう口臭で悩まない』(アーク出版)
昨年12月に上梓された『もう、口臭で悩まない!』(アーク出版)。老若男女を問わず口臭を気にする人は多いが、歯磨き、舌磨きをすれば口臭はきえるのは間違い! など長年の口臭研究から明かされる口臭の真実。口臭の原因は多種多様で、ほんとうの原因はを解決しなければ口臭は消えない。その一方で、過剰に口臭を気にする人も少なくない。こうした口臭に悩むすべての人に人に対しても、診断から最新の医療技術を紹介しつつ実際の治療法も解説した書き下ろしの福音書。

本田俊一 (ほんだ しゅんいち)
日本口臭学会常任理事・指導医、医療法人ほんだ歯科理事長・院長。1980年山口大学農学部獣医学科を卒業後、厚生省(現・厚生労働省)に入省。8年にわたり検疫業務に携わる。業務の傍ら大阪大学微生物病学研究所において腸管感染症の基礎研究も行なう。退官後、大阪大学歯学部に学士編入し、卒業後、歯科医院勤務を経て、1995年に、ほんだ歯科を開業し、1997年には医療法人ほんだ歯科を設立。歯科医師として臨床に携わることで口臭に悩む患者の多さを目の当たりにし、「口臭・口臭症」の研究に取り組む。2000年には口臭のデオドラント技術および口臭症治療に関するプロトコル「ほんだ式口臭治療」を確立。口臭に関する第一人者として知られる。