今季のNBAは、早くもレギュラーシーズンの半分を折り返した。前半戦最大の驚きは、下馬評の低かったサクラメント・キングスがプレーオフ出場圏内で争っていることではないだろうか。現地1月28日現在、20勝26敗でウェスタン・カンファレンス10位(プレーオフ圏内の8位ポートランド・トレイルブレイザーズとは0.5ゲーム差)。「ドアマット(※)の常連」だったキングスに、いったい何が起きたのか――。

※ドアマットチーム=ドアマットのように他チームに踏みつけられるほど弱いチーム。

 近年のキングスは、2005−06シーズンを最後にパシフィック地区最長となる9年間もプレーオフから遠ざかり、過去7シーズンは30勝(全82試合)にすら達していない。1990年代後半にジェイソン・ウィリアムス(PG)、クリス・ウェバー(PF)、ブラディー・ディバッツ(C)らを擁し、強さと派手さを持ち合わせたチームの面影は、もはや皆無だった。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 しかし、今季のキングスは突如、生まれ変わった。1試合平均106.3得点は、リーグ30チーム中3位。リーグ1位がウェスタン・カンファレンスを独走するゴールデンステート・ウォリアーズの115.1得点で、2位がケビン・デュラント(SF)とラッセル・ウェストブルック(PG)の2枚看板を擁するオクラホマシティ・サンダーの109.3得点なのだから、この得点力は十分に胸を張れるものである。

 しかし、これほどのオフェンス力を持ちながらウェスタン中位に甘んじているのは、リーグ最下位の1試合平均107.9失点という、極めて貧弱なディフェンス力のせいだ。現在、7勝40敗でリーグ最低勝率のフィラデルフィア・76ersでさえも、1試合の平均失点は105.0点(リーグ25位)。キングスのディフェンスがいかに"ザル"なのかは明白だろう。

 つまり、今季のキングスは、"最高の矛"と"最低の盾"を持ったチーム、なのだ。

 長年ドアマットチームだったキングスを蘇らせたのは、新加入のレイジョン・ロンド(PG)の存在が大きい。2008年にはボストン・セルティックスで優勝を経験し、過去2度のアシスト王に輝いているリーグ屈指のポイントガードは、今季も変わらず健在。現在、アシスト数は平均11.9本をマークしており、リーグ唯一のふたケタ台をキープしている。

 シャーロット・ホーネッツと対戦した今季の2試合(11月23日・1月25日)では、ともにシーズンベストとなる20アシストを記録。1試合20アシストは、1985年にキングスがサクラメントに本拠地を移転して以降、球団最多記録である。過去30年間で、1試合20アシストを1シーズン複数回達成した選手は、わずか18人しかいない。ロンドはこれまで8度達成しており、現役選手では最多。歴代でも史上3位の記録保持者だ。ロンドの活躍はアシストだけにとどまらず、今季すでに6度もトリプルダブルを記録するなど、まさに大車輪の活躍でチームを牽引している。

 そのロンドの加入で今季さらに輝きを増したのが、チーム生え抜き6年目のデマーカス・カズンズ(C)だろう。211センチ・123キロの巨体ながら俊敏性も兼ね備え、ゴール下でのパワフルなプレーはまさしく"アンストッパブル"な存在だ。今季は平均27.2得点(リーグ3位)、平均11.2リバウンド(リーグ4位)の好成績を残し、ロンドとともにキングス快進撃の原動力となっている。

 特に1月のカズンズは、爆発的な活躍でファンを大いに沸かせた。12試合で挙げた平均34.4得点はリーグ1位で、1月25日のホーネッツ戦ではキャリアハイの56得点を記録。2001年にクリス・ウェバーが記録した51得点を抜き、球団新記録を樹立した。その結果、第13週のプレーヤーズ・オブ・ザ・ウィークも獲得している。

 ロンドとカズンズという強力な2枚看板を擁することになった今季のキングス。ディフェンス力さえ向上すれば後半戦も期待大......とは、簡単にはいかないかもしれない。なぜならば、ロンドとカズンズはリーグ屈指の実力者であるのと同時に、気難しさもリーグ屈指だからだ。

 勝ち気で我の強いロンドは、ヘッドコーチ(HC)やチームメイトと何度も対立してきた過去があり、カズンズもこれまで幾度となくHCと衝突し、5年間で4人のHCをクビに追い込み、"コーチキラー"の異名を持っている。気分の乗らないカズンズが露骨に怠慢プレーに走るシーンを、キングスファンはこれまで何度見せられただろうか。

 現在、この"2頭の猛獣"の手綱を握っているのが、27年に及ぶHCのキャリアを誇るジョージ・カールだ。デンバー・ナゲッツを指揮した2012-13シーズンにはコーチ・オブ・ザ・イヤーを受賞したこともある名将で、1月4日のオクラホマシティ・サンダー戦では1156勝目を挙げ、通算勝利数でフィル・ジャクソンを抜いて歴代5位に浮上している。

 そんなカールは、猛獣たちに「ディフェンスをやれ!」と叱咤してモチベーションを下げるよりも、「獲られた以上に点を獲ってこい!」と気分良くプレーさせることを選んでいるのだろう。かくして、「最強の矛と最弱の盾を持つチーム」は生まれたのだ。

 キングスの後半戦の浮沈を握るキーマンは、おそらくルディ・ゲイ(SF)ではないだろうか。今季はカズンズに次ぐ平均18.0得点をマークしており、カズンズとともにリオ五輪アメリカ代表の最終候補30名に名を連ねる実力者である。

 だが、ゲイに関して気になるのは、どこまでも運がない点だ。9年間のキャリアでプレーオフに出場したのは、2011−2012シーズンのたった1回のみ。2012−13シーズン、当時メンフィス・グリズリーズに所属していたゲイは、シーズン途中でトロント・ラプターズにトレードされた。するとその後、グリズリーズは球団シーズン勝利数記録(56勝と)をマークし、カンファレンス・ファイナルまで進出している。

 さらに2013-14シーズン、ゲイは開幕直後にキングスへトレードされた。すると、ラプターズは48勝を挙げて地区優勝を飾っている。両チームとも、ゲイ放出後にチームは躍進しているのだ。現在、ゲイにはトレードのウワサが囁かれているのだが......。

 ロンドとカズンズ――、2頭の猛獣はこのままキングスで共闘していけるのか。それとも、過去の歴史と同じく内部崩壊を引き起こしてしまうのか。どちらに転ぶかは誰にもわからないが、1990年代後半に多くのファンを魅了した"面白いキングス"が帰ってきたのは、間違いない。

※数字は現地1月28日現在。

水野光博●文 text by Mizuno Mitsuhiro