29日、東アジア総合研究所主催の緊急時局北朝鮮問題セミナーが「朝鮮労働党第7回大会を占う」をテーマに、東京で開催された。北朝鮮研究の政治と経済における第一人者である、鄭成長・韓国世宗研究所統一戦略研究室長、梁文秀・韓国北韓大学院大学教授らが報告した。

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2016年1月29日、東アジア総合研究所(姜英之・理事長)主催の緊急時局北朝鮮問題セミナーが「朝鮮労働党第7回大会を占う」をテーマに、東京・千代田区の学士会館で開催された。北朝鮮研究の政治と経済における第一人者である、鄭成長・韓国世宗研究所統一戦略研究室長、梁文秀・韓国北韓大学院大学教授らが報告した。

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鄭氏は「核と長距離ミサイルの持続的な開発によって大量兵器部門で南北間の軍事力の差が拡大している」と指摘、韓国が核兵器保有計画を打ち出すことが対抗策になり得る、との見解を述べた。梁氏は北朝鮮の改革開放路線について「静かに推進され、北朝鮮の経済内部に深く組み込まれている」と述べた上で、5月の労働党大会で遠大なビジョンが提示される可能性があると予想した。

<鄭成長・韓国世宗研究所統一戦略研究室長>

一部の専門家は先入観に基づいて金正恩体制について脆弱性を指摘、恐怖政治が体制を不安定にすると分析するが、過去にもソ連のレーニンやスターリンが恐怖政治を通じて政権基盤を強化した事例もあり、不安定さにつながるとは限らない。専門家の間では、北朝鮮軍エリートたちの解任を「粛清」と同一視する傾向にあるが、長官クラスで粛清された2人は、解任後も他の職を得ており、より若い幹部たちは軍部内の他の要職に就いている。金正恩が「即興的」に軍事の人事を断行し、軍部掌握を粛清のみに依存しているというのは事実と大きく違う。

金正恩は党中心の統治を行うために、党と政権機関の人事は20〜30%にとどめ、軍は40%以上の大幅な交代を実施した。金正日時代に過度に肥大化し、高齢化した軍部の上層部を縮小し、世代交代を通じて若返りを図るもの。事なかれ主義に陥った勢力を遮断し、軍紀を引き締めている。既得権益をいかに剥奪するかがポイントとなる。

韓国と比べ、北朝鮮は経済力をはじめほとんどの分野で大きく劣っているが、核と長距離ミサイルの持続的な開発によって大量兵器部門で南北間の軍事力の差が拡大している。

金正恩の年齢だけを取り上げて、「未熟な指導者」と性急な判断を下し、軍部改革での部分的な動揺をもって「不安定」と論じるのは不適切である。金正恩は父親の金正日より緻密で、政治局会議など幹部たちを集めた会議を頻繁に開き、討論を経た後、決定することを好んでいる。北朝鮮軍を「戦える軍隊」に改革している金正恩を、韓国と日本の安全保障にとって、「一層脅威となる軍事指導者」と見なすべきだ。北朝鮮の軍事力強化にもっと徹底的に対応する方策を模索することが望ましい。

2008年以降、韓国と米国は北朝鮮と取引交渉をせず、この間に同国は核開発を進め、韓半島の非核化は困難な情勢となっている。北朝鮮は年内にも5回目の核実験を実施することになろう。安保面で圧力をかけながら外交努力をすべきだが、将来、韓国が対抗策として、核兵器保有を迫られ、開発計画があることを宣言することも有効だ。韓国内世論調査では54%が「核保有」を支持している。

<梁文秀・韓国北韓大学院大学教授>

北朝鮮は「改革開放」を推進しており、「市場化」の結果、年間経済成長率は1%以上を確保。2〜3%に達するとの推計もある。国民の生活水準は明らかに向上している。中国のような水準まで改革開放を公開的な形で明示するのは現段階では期待できないが、静かな形で推進する「北朝鮮式の改革開放」が当分の間持続する可能性が大きい。

市場はもはや、北朝鮮の経済内部に深く組み込まれている。市場の構造を見ると、最も上部に国家機関の貿易会社があって、その下には、トウジュ(金持ち)がいて、労働党、保安署など地域権力機関があって、最も底辺に小売商と生産者がいる。市場の発展は、生産より貿易など流通の発展に依存している。16年5月の第7回労働党大会で、経済分野で遠大なビジョンが提示される可能性があり、注視したい。

<姜英之・東アジア総合研究所理事長>

北朝鮮の第4回核実験により、韓国が強く反発、南北関係はまたもや悪化し始めた。また昨年、労働党創建70周年記念大会への劉雲山共産党常務委員の訪朝を契機とした、中朝和解の兆しも雲散霧消することになり、米日など西側が主導する国連制裁の強化で北朝鮮は、ますます国際社会で孤立している。

北朝鮮にとって最大の懸案である米朝平和締結は、逆に遠のいた。北朝鮮への弱腰外交を批判されている米オバマ政権は大統領選挙を前に、中東情勢が大混乱の中、対北融和政策を展開する余裕も実力もない。ただちに核兵器搭載のB-52戦略爆撃機を朝鮮半島に飛ばし、北朝鮮を威嚇するなど、平和協定締結交渉は当分望めそうにない。

今後、北朝鮮がどういう行動に出るかは、予断を許さないが、中国が国連制裁に同調すれば、無茶な軍事行動に出ることはないだろう。大局的には東アジア戦略上、北朝鮮崩壊を望まず、北朝鮮擁護の政策は変わらないにしても、中国にとって、米国との「新しい大国関係」を進める上で、国際社会からの圧力は避けがたいものがあり、これ以上中国のメンツをつぶし、北朝鮮が暴走すれば、思いきった経済封鎖を強行するとみられる。

したがって、北朝鮮は、国際社会の制裁レベルを見極めながら、耐乏できる範囲内であれば、5月の第7回労働大会を控えて、再び対韓国融和策を持ち出し、中国との関係修復に全力を注ぐことになる。米国に対しても何らかの秋波を送らざるを得ないだろう。(八牧浩行)