リハビリの効果が科学的に証明 (shutterstock.com)

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 米国の科学誌『Journal of Neuroscience』(2016年1月13日号)に興味深い研究が発表された。"運動を繰り返すことで「神経」を鍛える"という、これまで経験上わかっていたことが科学的に裏付けされたのだ。

 その研究タイトルは「Causal Link between the Cortico-Rubral Pathway and Functional Recovery through Forced Impaired Limb Use in Rats with Stroke」。日本語でいうと「リハビリテーションによる神経回路の変化と運動機能の回復との因果関係」とでもなるだろう。この研究は、脳卒中や脳出血により麻痺を呈した人が、どのようなメカニズムで回復するかを、ラットを使って証明したものである。

 理学療法や作業療法によるリハビリテーションを行うことで神経突起の伸びが生じることは、過去の研究で報告例がある。だが、神経回路の変化がどのように運動機能の回復に関連するかは明らかではなかった。同誌に発表された研究によって、そのメカニズムの一部が明らかになったと言える。

 今回の研究でわかったことは、主に

1.麻痺側のリハビリテーションにより、運動野-赤核間の神経連絡が増加した。
2.麻痺側を集中的に使うことで、その部分を司る脳の領域が拡大し、運動機能が回復した。
3.運動野-赤核間の神経連絡を意図的に切断すると、運動機能が再び悪化した。

 ということである。

 これはつまり、リハビリテーションを集中的に行うことで、麻痺を生じさせた部分に回復が起こるということであり、早期リハビリテーションの重要性が改めて示されたということでもある。

リハビテーションには「神経」を鍛えるという目的も

 先述のように、実際の病院の現場でも、集中的なリハビリテーション(理学療法や作業療法)を行うことで、歩行能力や日常生活動作の改善を見られることを経験している。

 最近の診療報酬改訂で、回復期リハビテーションの存在が議論されている。この研究結果は、これまで経験上わかっていたことを科学的に裏付けることになると思われ、回復期リハビテーションの重要性を裏付けることにつながるかもしれない。

 リハビテーションは、単純に筋力を向上させる、体力を向上させるというようなものだけではなく、練習を繰り返すことによって「神経」を鍛えるという目的がある。このことが今回の研究結果で改めて示されたわけだ。

 同じ運動を繰り返すことによって、神経経路が強化され、運動機能の向上につながる。今後、この研究結果を踏まえて、麻痺状態の人だけではなく、スポーツ選手や一般の人のトレーニングにも応用できるかもしれない。

リハビリの効果を高める装着型「ロボットスーツHAL」

 これと似たようなメカニズムを用いて、以前、当サイトでも2度にわたって紹介した(2015年2月12日掲載、2015年4月6日掲載)ベンチャー企業のサイバーダインが開発した「ロボットスーツHAL」だ。

 外見はロボットースーツであり、全身に取り付けて使用する。身体機能に制限を持つ人たちが使用し、日常生活をサポートすることはもちろん、機能そのものを回復させる機能ももつ。

 そのメカニズムは、動作を使用する際に脳が発する電気信号をHALが読み取り、神経回路を補強するように働く。動いているうちにその回路が強化され、機能回復につながるとされている。このHALスーツは、ドイツではすでに公的保険の一部適応になっている。日本でも保険適応がされるように交渉中だ。

 身体は動かすことによって、神経回路が強化され、機能が回復される。今回の研究やロボットスーツHALの開発は、そのことを世間に広げ、ますますリハビリテーションの重要性が高まってくるかもしれない。
(文=編集部、監修=三木貴弘)


三木貴弘(みき・たかひろ)
理学療法士。日本で理学療法士として勤務した後、豪・Curtin大学に留学。オーストラリアで最新の医療、理学療法を学ぶ。2014年に帰国し、現在は東京都で理学療法士として医療機関に勤務。その傍ら、一般の人に対しても正しい医療知識をわかりやすく伝えるために執筆活動にも力を入れている。執筆依頼は、"Contact.mikitaka@gmail.com"まで。