造血幹細胞が減少する再生不良性貧血 透流/PIXTA(ピクスタ)

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 最愛の妹さんを亡くしたばかりのノルディックスキー・ジャンプ男子の葛西紀明選手(43)が、2つの新たな快挙でギネス世界記録の認定を決めた。

 W杯最年長優勝・冬季五輪7大会連続最多出場・冬季五輪スキージャンプ最年長メダリストの3冠に次ぎ、今回はW杯個人最多出場とノルディックスキー世界選手権ジャンプ部門最多出場のW認定で計5冠だ!

 1月19日に行なわれた実妹・前川久美子さん(享年38)の告別式翌日、「今日から僕はまた強くなっちゃいましたよ!」と気丈に、今後の残り試合への決意表明をブログで綴った葛西選手。

 久美子さんは16歳時に「再生不良性貧血」を患い、一時は臍帯血移植手術で回復したものの、入退院を繰り返す闘病生活を長く続けてきた。

16歳で余命5年を宣告された葛西選手の妹

 最近の久美子さんの容態について葛西選手は、「昨年の5月終わりに意識を無くして8カ月間が経ち、一度も意識を戻す事なく母親(幸子さん:1997年に火事で死去)の元へ旅立ってしまいました」と悼んで綴っている。「よくここまで生きてくれた」とも。

 この恐ろしさが伝播してくる再生不良性貧血は、骨髄中の血液を造る基の細胞(=造血幹細胞)が減少する。

 それに伴い、/搬里鮗蕕觝挧Δ稜魴豕紂↓∋請任鯊ヾ錣冒る赤血球、出血を止める血小板、のいずれもが三つ巴で減少する病気だ。

 医学的には汎血球(はんけっきゅう)減少と呼ばれ、この状態が進んで,減ると咳や発熱の感染症が、△減ると動悸や息切れ、頭重感や顔色不良、あるいは疲れやすさに襲われる。

 さらにの減少では痣が出来やすく、鼻や歯肉からの出血症状に見舞われる。

四十九日を待たずの快挙報!

 さまざまなタイプのある貧血のなかでも最も質が悪く治りにくい病とされる再生不良性貧血は1972年、厚生労働省によって特定疾患(=難病)に指定された。

 かつて重症者の1年後の生存率は70%という時代もあったが、その後の骨髄移植や免疫抑制療法によって80%前後の重症者が5年以上も生きられるまでに治療法も進歩してきた。

 再生不良性貧血の原因には、生来の遺伝子異常による<先天性>と、何らかの損傷で造血幹細胞が機能減少した<後天性>の2種があり、ファンコニ貧血と人名でも呼ばれる前者は極めて稀な疾患例だ。

 また、後者の80%が原因不明、残り20%が放射線や化学薬品、ある種の抗生物質やウィルスなどが原因と考えられてきた。

 が、再生不良性貧血が実は<自己免疫疾患>ではないのか、というのが最近の新説。本来はウィルスらの外敵を攻撃する役目(免疫機能)のリンパ球が何らかの原因で狂い、あろうことか自らの造血幹細胞を攻撃し始めたのでは!?

 免疫抑制療法の根拠がこれである。

 一部報道によれば、久美子さんも病名を告げられた際、「余命5年」との宣告を受けている。それが1993年時点だから、宣告の4倍強の歳月を頑張られた計算となり、この間の医療の進歩と効能が前掲の「よくここまで生きてくれた」という言葉の背後にも読み取れるだろう。

 同時に「いつも痛みに耐えながらの辛い日々だったと思います」と葛西選手は妹の闘病の歳月を述懐。遺影の中で微笑む久美子さん、その手には"レジェンド"と人々から称賛される兄がソチ五輪で獲得した銀メダルと銅メダルが握られていた。

 「ソチのメダルを見せられたことが一番嬉しかった」と、兄妹間の想い出を口にした葛西選手。今回のギネス5冠達成も、四十九日前の快挙報だ。

 遠征先での訃報から死に目にあえなかった兄妹ではあるが、きっと故人も喜んでいることだろう。レジェンドの挑戦は終わらない。
(文=編集部)