年末年始に北京から一時帰国した駐在員の知人と久しぶりに盃を傾けていたら、彼が「日本では、中国の経済は落ち込むばかりと思われているかもしれないけれども、ビジネスチャンスはまだまだ大きいよ」と笑顔を見せていた。

写真拡大

今年は年初から中国経済減速への警戒感から、東京をはじめ、ニューヨーク市場など世界同時株安に見舞われたが、年末年始に北京から一時帰国した駐在員の知人と久しぶりに盃を傾けていたら、彼が「日本では、中国の経済は落ち込むばかりと思われているかもしれないけれども、ビジネスチャンスはまだまだ大きいよ」と笑顔を見せていた。

意外な言葉に、私は「でも、環境汚染で住むのも大変だし、株価も急速に下がっているのでは?」とつい突っ込みを入れてしまった。ところが、彼は「中国政府は景気浮揚のために2つの秘策を練っている」と自信たっぷりだった。

「秘策その1」は今年から本格導入される「二人っ子政策」だ。36年も続いた「一人っ子政策」が廃止され、子供を2人まで生むことができるので、当面はベビー用品の需要が高くなる。単純に考えると、その後、年を経るごとに生活用品や教育費など、これまでの2倍の需要を見込むことができる。

ただ、中国メディアのアンケートでは、大都市圏では教育費などが高く、いまのところ4割以上が「経済的に2人も育てることは無理」と回答しているが、それでも賛成は3割、状況次第が3割で、全体の6割が肯定的に受け止めている。

「それに、中国政府が政策としてアピールすれば、地方都市では『子供は2人持つもの』との認識も広がってくる。大都市部でも子供を2人以上持ちたいという富裕層も多い。徐々に子供2人が常識になってくるのではないか」と彼は楽観的だ。

「それでは、秘策の2は?」と問うと、「中国は人口が多い。13億人もいる。そのうち農民工(出稼ぎ労働者)は2億7000人。中国政府は農村の都市化を急いでおり、農民工がその住人になれば、余っている住宅もどんどん売れていくというわけだ」と彼は鼻息が荒い。

中国には「鬼城」と呼ばれる誰も住んでいないマンションなどの空き家の在庫が10億平方メートル、約1300万世帯分もあるとロイター通信は伝えている。これはオーストラリアの全人口を収容できる水準だ。

中国政府は農村の都市化を進めるために、これらの余剰住宅の値段を下げて、農民工ら低所得者に優先的に販売するとの政策を立案中との情報がある。また、アジアインフラ投資銀行(AIIB)創設で、海外での出稼ぎ労働も増えることから、農民工の所得アップにもつながるというわけだ。彼は「習近平はこの2つの秘策を単なる初夢には終わらせないと思う」と自信に満ちた笑顔で語っていた。

さて、彼が言うように、中国経済は2つの秘策で上昇局面に転じるかどうか。今年は2017年の党大会の1年前だけに、習近平は人事を含む政治局面を安定化させなければならないが、それには経済が重要なファクターになる。このため、今年は習近平指導部にとって正念場となるのは間違いない。

◆筆者プロフィール:相馬勝
1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。