これまでギリギリの試合を勝ち上がってきた自信が、2点を先行されながらも、まだいけるという勇気を与えたのだろう。逞しさを増した選手たちの姿には大きな成長を感じた。
 
 だがしかしだ――。優勝の喜びを削ぐようで気が引けるが、いくら終盤勝負というゲームプランがあり、浅野投入をきっかけにした反撃を当初から描いていたとしても、出来過ぎた結果としか言いようがない。
 
 終盤の韓国は後半途中までの素晴らしい出来が嘘のように1失点したところでタガが外れ、一気に崩れた。もしこれが五輪本番で、試合巧者を相手にしていたら、あれほど易々とカウンターを許すような大味な展開にはならなかっただろう。
 
 試合前日、韓国との一戦を前に手倉森監督はこう語っていた。
 
「お互い世界を見据えたチーム作りをしていると理解しています。その想いを持って戦うだけで、先にはつながると思います」
 
 決勝の舞台で繰り広げられた戦いからは、確かに互いの勝利への気迫がひしひしと感じられたが、前半まったく良いところのなかった日本、終盤一気に崩れた韓国ともに、まだまだ多くの粗さを抱えていることを再認識させる一戦となった。
 
 優勝という歓喜に今は浸りたいが、約6か月後には五輪本大会が開幕する。Jリーグの戦いが始まれば日々はあっという間に過ぎてしまう。アジアの優勝が到達点ではないだけに、この日の課題をしっかり見つめながら、前へ進む必要がある。
 
取材・文:本田健介(サッカーダイジェスト編集部)