そんな時、知人からLOH症候群のことを知らされ、自分の症状と似ている点があると感じたAさんは、思い切って専門医の診察を受けることにしたという。
 Aさんを診た荏原クリニックのメンズヘルス担当医はこう話す。
 「Aさんはテストステロンの値がかなり低く、男性更年期障害と診断しました。テストステロンの補充療法を始めた結果、目に見えて症状が改善し、元の状態に戻っていきました」

 男性更年期障害は約3年前、世界的な医学雑誌で研究成果が発表され、注目が集まり始めた。しかしまだ、すべての患者がAさんのように正しい診断を受けられる状況ではないという。
 「代表的な症状は、Aさんのように、うつや集中力、気力、性的能力の低下。さらにイライラや疲労感などです。しかし、初期の段階はちょっとした“変化”のため気付きにくいのです。ふと“以前と比べて”“齢のせいで”と感じた人の多くは、テストステロンの減少に関係していると考えるべきでしょう」
 とは、総合クリニックを営む医学博士・遠藤茂樹院長。

 その“変化”については例えば、「以前は徹夜しても全然平気だったが、今は翌日使いものにならない」、「買い物をしても両手に荷物を持てる量が減った気がする」、「初対面の人の名前を1回聞けば覚えられたのが、できなくなった」、「彼女と一晩2回戦は当たり前だったのが、1回戦が精いっぱい」などなど。いずれも意識しなければ気が付かない“変化”なのだ。
 「テストステロンは、ストレスなどでも急激に減少します。もともと徐々に低くなっているところに、何らかのストレスが加わると、ある日突然、ドカンとやってくる。そして社会生活がうまく送れなくなり、それがまたストレスとなって、一層テストステロン値が下がって悪化します。よって、40歳以上の男性でうつ病の場合も、男性更年期障害を念頭に置いた治療が必要でしょう。抗うつ剤にはテストステロンを減少させる作用があるため、その影響もあるかもしれませんが、テストステロン補充療法で、うつ症状が改善し、結果、抗うつ剤を止められる人もいます」(前出・専門医)

 テストステロン値は医療機関で簡単に測定できる。性機能の衰えなどをチェックする「男性力ドック」を行っているところもある。また、以前は補充療法というと脱毛と発がん性が心配されたが、現代はそれも否定されている。脱毛に関しては、むしろ抑える方に役立つ、という考えもあるという。
 「女性の更年期障害の場合は、発症が閉経のおよそ5年前後と比較的分かりやすい区切りがあり、周りにも経験者も多く、悩みを相談しやすい環境があります。対して男性の場合は、始まりが分かりにくいのが非常に厄介。いつ襲われるか分からず、何年か経つうちに自然に症状が収まることも少なくない。一方、悩みを打ち明ける場所がないため、不安と症状が増幅してしまう可能性も高い」(同)

 中でも、「最近笑っていない」、「新聞を集中して読めない」、「よく眠れない」という3つの傾向があるとすれば、比較的重い男性更年期障害の場合が多く、早めに医師に相談するべきだという。専門医にしっかりと自分の症状を伝え治療することで、本来の健康な体を取り戻せるのだ。