日本は逆転勝利で優勝を飾ったが、多くの時間で韓国に主導権を握られていたのも事実だ。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

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 劇的な勝利だったね。韓国を3-2で下したリオ五輪予選の決勝のことだ。
 
 2点を先行されながら、後半に3点を奪っての逆転優勝。今大会はヒーローが出ないかと思っていたけど、最後に浅野がやってくれた。途中出場で2得点は大きな仕事だ。1得点・1アシストの矢島も素晴らしかった。
 
 優勝という結果は胸を張っていいし、ドラマチックな勝利は日本サッカー界を盛り上げるうえでも良かったね。選手やスタッフには、心からおめでとうと言いたい。
 
 韓国戦の勝因は、やっぱり粘り強さだろう。日本は立ち上がりから韓国の攻撃を受けて、良いところがまるでなかった。なんとか2失点でとどめたけど、展開を考えればもっと取られていてもおかしくなかったんだ。
 
 それでもGK櫛引のファインセーブなどで決定的な3点目を与えなかったことが、後で効いてきたよね。前半から飛ばしていた韓国には試合途中で足を攣った選手がいたけど、日本は早めの選手交代でフレッシュな状態を保った。2点のビハインドを背負っていたから当然の判断だったけど、この交代で上手く試合の流れを変えられたと思う。
 
 それに、韓国の試合運びの拙さに助けられた部分もあったね。韓国は2点をリードしているにも関わらず、3点目を取って試合を決めようとしてきた。そこで決めきれなかったことで、序盤から飛ばしたツケが回ってきたんだ。
 
 今大会は18日で6試合をこなす強行スケジュール。中2日や中3日が続く消耗戦だ。そんな過密日程の疲労も影響し、韓国は後半に運動量がガクッと落ちていた。
 
 それでも、彼らは攻撃的な戦い方を変えなかった。選手の足が止まっているのに全体が前がかりなままなんだから、当然スペースは空いてくるよね。スピードのある浅野にとっても、2点を返さなければならない日本にとっても、願ってもないシチュエーションが生まれていたんだ。
 
 仮に韓国の監督が守備的な指示を出すなり、選手交代で守りを固めるなりしていたら、試合は膠着してしまったかもしれない。むしろ、成熟したチームであれば、そうした選択をしたはずだ。2点リードのなかで攻めに出た韓国は、文字通り墓穴を掘った。そういうラッキーな面があったんだ。
 
 厳しいことを言うようだけど、日本が“強かった”わけではないことも、受け止めておくべきだね。90分間をとおして見れば、韓国に圧倒される時間のほうが長かったからね。韓国の足が動いていた前半や後半の序盤は押されていたし、実際に2点を先に取られている。この事実を見過ごしてはいけないよ。
 
 ヒーローになった浅野も、果たして90分間プレーしたらどうなのか。もちろん、浅野の途中投入は戦術的に有効だけど、個のレベルアップを考えたらスタメンで活躍できる選手にならないといけないよね。所属クラブのサンフレッチェでも、U-23代表でもスーパーサブとして起用されているのは、まだ浅野には「スタメンから使いたい」と思わせる力がないからなんだ。
 
 同じことは、他の選手にも言えるよね。手倉森監督は毎試合、選手をターンオーバーして使っていた。短期決戦ではコンディション調整が大きなポイントになるから、その判断は理解できる。でも、ここまで選手を入れ替えるチームは珍しいでしょ? つまりは、絶対的な存在がいなかったから、スタメンを固定できなかったともとれるんだ。
 
 僕がこの大会のMVPを選ぶとすれば、GKの櫛引かな。唯一、不動のレギュラーと言える存在感を見せたし、彼がコンスタントに活躍したから日本は接戦をものにできた。A代表の仲間に入ってもおかしくないと思うよ。レギュラーを獲れるかは別として、西川や東口、川島たちと競わせるのは悪くない手だよね。