安倍晋三政権が主導した、GPIFの株式大量購入が、昨年後半からの株価下落により巨額の含み損を抱えている。日銀が29日、「マイナス金利」を打ち出したが、株価吊り上げにつながり、年金の損失を取り戻すことができるだろうか。資料写真。

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「株価連動内閣」と言われる安倍晋三政権が主導した、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の株式大量購入が、昨年後半からの株価下落により巨額の含み損を抱えている。日銀が1月29日、異次元金融緩和(バズーカ)の第3弾として、“劇薬“ともいえる「マイナス金利」を打ち出したが、株価の吊り上げにつながり、年金の損失を取り戻すことができるだろうか。

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GPIFは世界最大の政府系ファンドで、総額約130兆円。厚生年金と国民年金の「年金積立金」を扱っている。従来は国債中心に運用していたが、14年10月末、運用ポートフォリオ(資産構成割合)を変更。国債の運用比率を下げ、国内株式の割合を全体の12%から25%まで拡大した。これにより新たに約18兆円の東京株式市場への流入が可能となった。国家公務員共済などの共済基金も同様に株運用の比率を高め、政府系のゆうちょ銀行も株価を購入した。

表向き、高い運用益の確保を目的としているが、アベノミクスの一枚看板「株高」を促すため、安倍政権が主導したもので、野党などから「株高誘導策」と批判された経緯がある。従来、国民の“虎の子”である年金基金をリスクマネーである株式に多くを投じるのは禁じ手と言われているが、日本の比率はズバ抜けている。元本が保証されないリスクマネーは株価が急落した場合、年金基金に穴を開け、最終的に国民にツケが回る

GPIFは式運用枠拡大を受け、運用比率を高めてきた。比率を1%上げれば1兆円超の資金が市場に投入されるため、株価は底上げされたが、昨年後半からの株価下落で裏目に出た格好だ。

1月29日の日経平均株価(引値1万7518円)で計算すると、GPIFの含み損は10兆円近くに達した可能性が高い。さらに一時1ドル=115円台まで進んだ円高で生じた為替差損により、海外株や外債でも大損している。GPIFのポートフォリオは、おおよそ国債35%、国内株25%、外債15%、海外株25%で構成されている。

GPIF運用資産の国内株比率は既に上限(25%)に接近し、投資家から「これ以上の株下支えは不可能になる」と足元を見透かれている。現水準以上に日経平均株価や円高が進めば含み損はさらに膨れ上がる。

政府は年金について、「100年先まで積立金が底をつかないよう運用すること」を基本方針として掲げているが、今回のような株価暴落に見舞われたり、ジャンク債など高リスクの投資に失敗したりすれば、一瞬にして巨額の資金を失う。政府答弁書でも、リーマン・ショックの年の損失を現在の運用比率に当てはめた場合、損失額は当時の3倍近い約26兆円になるとしている。100年どころか近い将来、積立金が枯渇することになりかねない。

◆直接投資解禁で企業を操る?

GPISを巡ってはもう一つ問題が浮上している。政府が議決権の行使や個別株の売買を通じて企業経営に介入するのを防ぐため、法令でGPISの株直接売買を禁じており、信託銀行など外部に投資を委託して議決権の行使も委ねている。ところが、政府は株式の直接投資を解禁する方針で、3月にも関連法案を国会に提出したい考え。

これに対し、政府による企業経営への介入を懸念する経団連や連合が猛反対。「政府の要請通りに賃上げする企業の株式は買い、従わない企業は売る」というように選別的に運用されるのではないかという警戒感や、GPIFが個別企業の大株主として議決権を行使することへの懸念からだ。

国民の“虎の子資産”であるGPIF年金基金は複雑で、一般庶民には分かりにくいが、常に監視し、その行方を注視しなければならない。(八牧浩行)