英国在住のジャーナリスト・小林恭子氏(写真左)が日本記者クラブで日英のジャーナリズムについて講演。英国の新聞記者が政府や企業に対し攻撃的かつ反抗的であるのに対し、日本の記者は礼儀正しく権力者に反抗しない傾向にあると指摘した。

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2016年1月28日、英国在住のジャーナリスト・小林恭子氏が日本記者クラブで日英のジャーナリズムについて講演。英国の新聞記者が政府や企業に対し攻撃的かつ反抗的であるのに対し、日本の記者は礼儀正しく権力者に反抗しない傾向にあると指摘した。英経済紙フィナンシャル・タイムズが日本経済新聞に買収されたことで「批判精神」が薄れるのではないかと危惧する声が英国で多いという。小林氏は欧州のジャーナリズムに詳しく、「フィナンシャル・タイムズの実力」(洋泉社)を刊行した。発言要旨は次の通り。

英国の新聞記者は反権力を露わにし、無礼で攻撃的だ。権力者の嘘に対しては「この嘘つき野郎」と立ち向かっていく。メディアと権力者の間には17世紀ごろから激しい対立があり、議会と王室との対立も同様だった。きちっと質問し、絶対につるむ(癒着する)ことはない。

例えばアメリカから来た著名映画俳優に対しても積極的に嫌がる質問を浴びせ、相手が怒って帰ってしまうこともよくある。日本では記者クラブなどで一緒に質問するケースが多いが、英国では新聞記者同士のライバル意識が強く、同席したがらない傾向もある。

英国では王室に潜入したり、盗聴をしかけたりすることもたびたび。とにかくアグレッシブで、日本の週刊誌ジャーナリズムに近いかもしれない。

日本で特派員として勤務したことのある英国人ジャーナリストによると、日本の新聞記者は礼儀正しく権力者に反抗せず、挑戦しないようだ。日本では自社の新聞社を紙面で批判せず、上司のシグナルを見て書く傾向にあるが、英国では自社の経営陣であっても追及する。

フィナンシャルタイムズ(FT)が日本経済新聞の傘下に入ったことで、(政府や企業に)「辛口」ではなくなるのでは、との危惧を持つ人が英国では多い。

先日の日経・FT共同取材企画の安倍首相インタビューは、安倍首相を褒めているような内容だった。FTで安倍首相や日本の扱いが大きくなるのではないか。「共同取材」の今後について、個人的には(FTらしさが薄れないか)心配している。(八牧浩行)