日本でも「○○ヒルズ」といった超豪華な高層マンションの最上階あたりに住む人々は憧れの的だが、その分、心肺停止などの万が一の事態が起こった場合、生存率が極めて低いという研究が、カナダの救急救命隊によってまとめられた。

特に16階以上では助かる率は「ほぼゼロ」という。理由はいたって単純。救急隊の到着までに時間がかかり、救命治療が間に合わないのだ。

いざという時の生存率、25階以上はゼロ

研究を発表したのは、カナダ・トロント市のヨーク地区救急サービスの隊員たちのチーム。カナダ医師会誌「CMAJ」(電子版)の2016年1月18日号に掲載された。

心肺停止が起こった時、自動体外式除細動器(AED)などで心臓に電気ショックを与え、正常な律動を回復させる「除細動」を早く行なうほど生存率が高まる。1分以内なら90%以上は助かるが、1分遅れるごとに生存率は7〜10%ずつ下がる。脳障害を残さずに助けるには、3分以内に気道を確保、胸骨圧迫などの心肺蘇生を行ない、5分以内に救急措置の専門医に渡すことができるかがカギといわれる。

研究チームは、2007〜2012年に管轄内のマンションで心肺停止を起こした約8000人を対象に生存率を調べた。退院まで生存していた人はたった3.8%であった。1〜2階に住む約6000人の生存率は4.2%だったのに対し、3階以上の約2000人の生存率は2.6%。16階以上では1%未満、25階以上ではゼロだった。

同救急サービスのイアン・ドレナン氏は「高層階に住む人は、危険と隣り合わせの生活であることを自覚し、AEDを建物内に設置して、お互いに助け合うために普段から住民同士で訓練しておくことが重要です」と語っている。