たかがニキビとあなどるなかれ

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大人になっても顔やお腹、背中などにニキビが出る人がいる。ニキビといえば『青春のシンボル』だ。「オレも若いなあ〜」と甘く見てはいないだろうか。

ソレ、糖尿病の前兆かもしれない。ぜひ、一度専門医に診てもらおう。

假屋崎省吾さんは、「ニキビ」で失明から助かった

2015年12月、米の医師会誌「JAMA皮膚科学」(電子版)に「20歳以降のニキビ男性は糖尿病予備軍の可能性が高い」という研究成果が発表された。論文を発表したのは、インドのチャンディーガル医科大学院のモヒット・ナグパール博士らのチームだ。

研究チームは、ニキビの症状と糖尿病の前兆である「インスリン分泌の異常」の関連を調べるために、20歳以上でニキビのある男性100人を対象に、症状の重さに応じて4つのグループに分けた。そして、ニキビがまったくない同年代の男性100人と比較して血液中のインスリン分泌量やコレステロール値、中性脂肪の量などを測定した。

その結果、「ニキビあり」のグループでは、「ニキビなし」のグループに比べ、症状が重くなるにつれて、インスリン分泌の異常の度合いが11〜22%高くなった。ナグパール博士は「20歳を過ぎてニキビの出る人は、将来、糖尿病になる可能性が高いことがわかりました。注意深く経過をみる必要があります」と語っている。

この論文のような研究分析こそ少ないが、「大人ニキビ」に糖尿病の心配があることは、専門医の間では「常識」といわれる。糖尿病患者として闘病生活を続け、現在も講演やインタビューを通じて糖尿病予防の啓蒙活動を行っている華道家の假屋崎省吾さんは、43歳の時に「ニキビ」がきっかけで「あわや失明の危機」から助かっている。その経過を、2007年4月に朝日新聞に連載した「患者を生きる」から抜粋しよう――。

≪「ハァ〜、ハァ〜」。駅の階段を上がりながら一段ごとに息を整えた。華道の道に入って20年。早朝から深夜まで働きづめで、過労は自覚していた。だが、「仕事をいただけるだけで幸せ」と思い、踏ん張っていた。(ある時)おなかに赤い湿疹が出て、自宅近くの皮膚科を受診した。

「血液検査をしてみますか」

医師から勧められるままに採血した。1週間後、再診先に指定されたのは「糖尿病・内分泌科」だった。そこの医師に告げられた。

「すぐ入院してください。このままでは足を切断したり、失明したりする恐れがあります」......≫

ニキビも糖尿病も「血液ドロドロ」から起こる

ニキビと糖尿病は、いったいどんな関係があるのだろうか。専門医のサイトをみると、メカニズムはこうだ。思春期のニキビは、旺盛な男性ホルモンが原因で皮脂が過剰に分泌され、毛穴が詰まることから起こる。しかし、20歳を超えると男性ホルモンの分泌は落ち着き、ニキビが消えてくる。

20歳を過ぎてもニキビが残っていたり、30〜40代になって急に背中やお腹、頭皮などにブツブツができたりするのは、血液がドロドロになっているケースが多い。血液の循環が悪くなり、老廃物や毒素が多くなり、皮膚の再生に必要な栄養素が行き渡らなくなるため、肌が荒れてくる。血液がドロドロになるのは、糖尿病などの生活習慣病が原因のケースが多い。

また、皮膚の細胞の再生には、ビタミンB群が欠かせない。ところが、ビタミンB群は、血液の中の糖分を分解する時にも必要な大事なミネラル。仮に糖尿病にかかっていて、血液中に糖分が多いと、ビタミンB群はほとんど糖分の分解のために使い果たされて皮膚には回らなくなってしまう。すると、肌が荒れてニキビなどの吹き出物や湿疹ができやすくなる。

つまり、二重の理由で糖尿病はニキビを起こしやすくしているわけだ。

日本の糖尿病患者は約950万人、予備軍は約2000万人。特に自覚症状はなく、激しい疲れや意識不明などの症状が出た時は手遅れといわれる。ニキビは、血液検査以外では、数少ない目に見える症状の1つなのだ。