『十五万両の代償 十一代将軍家斉の生涯 (講談社文庫)』佐藤 雅美 講談社

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 本日、沢尻エリカさんの主演のドラマ『大奥』(フジテレビ系列)の第二部が放映されます。先週放映された第一部では、『大奥』シリーズでも初めて、女性同士の"百合"シーンが描かれたことが注目を集めました。

 第二部で描かれるのは、第一部に引き続き、11代将軍・徳川家斉(いえなり)の時代。成宮寛貴さんが演じる家斉は、精力増強用にオットセイの粉末を愛飲していたというエピソードも伝わり、"オットセイ将軍"の異名を奉られた将軍です。

 そんな家斉の生涯を描くのが、歴史小説『十五万両の代償 十一代将軍家斉の生涯』。

 幼名を豊千代と言い、御三卿の一橋治済(はるさだ)の長男に生まれた家斉は、後継ぎがいなかった10代将軍家治の養子となり、15歳で将軍に就任。寛政の改革を行った松平定信の後、水野忠成(ただあきら)を老中首座に登用します。将軍在位は50年にも及び、歴代将軍の中でも最長記録。将軍の位を息子の家慶に譲った後も、自身は"大御所"として実権を握りました。

 40人以上の側室を持ち、男子26人と女子27人、計53人もの子を儲けた家斉。なかでも寵愛した側室・お美代の方が生んだ娘・溶姫(やすひめ)は加賀前田家に嫁ぎますが、その際に建造された御守殿門が現在、東京大学の"シンボル"として知られる赤門です。

 とかく子沢山ばかりがクローズアップされがちな家斉ですが、本書では、有力大名に多くの子女を嫁がせた背景には、家斉の父・治済(はるさだ)の戦略があったとしています。つまり、家斉の娘を嫁がせたり、息子を養子に出したりすることで、御三家・御三卿をはじめ、有力大名の血筋を、自身の血統で独占しようとしたのです。

 しかし、将軍の子女を送り出す場合には、将軍家から多額の持参金を贈る慣例だったため、財政を圧迫、幕府の金庫は窮乏することになったのでした。

 また、本書で見逃せないのが、幕末期に多大な存在感を示す雄藩・薩摩藩や、最後の将軍・慶喜を生んだ勤王の藩・水戸藩の動向。家斉の閨房(けいぼう)ではなく、政権下での政治経済にスポットを当て、徳川幕府最後の"黄金期"を描いた本書は、"幕末前史"としても楽しめる作品となっています。