紙を捨てよ、お姉ちゃんのカラダに絵を描こう「東學女体描写展」

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なまめかしぃ〜。
真っ白な柔肌がくねる、その曲線に絡み付くように、動植物の絵が描かれている女性のヌード写真の展覧会が、渋谷のポスターハリスギャラリーで開催中だ。


モチーフは、クワガタ、サソリ、狼、龍、カエル、タツノオトシゴというちょっとえぐい生き物ものから、牡丹、鉄線、蓮などの華麗な花まで多岐にわたる。兎や髑髏、四聖獣なども。
それらが女体と交わるその様は、メタモルフォーゼなのか合体なのか。写真なのか絵なのかも決めかねるほど。いずれにしても日常や既成の概念から超越した儀式めいたものを感じてしまう。
ギャラリーの扉を開けたら、47体の観音様がいたというようなありがたい気持ちになった。

「逆ノ罪」とか「嘘ノ起源」とか「満月ノ呪縛」とかゴシックの香りのするタイトルのついた展示作品は47作。モデルは43人。20代から40代後半まで、主婦、ダンサー、占い師まで人生いろいろな女性たちのカラダに絵を描いているのは、東學(あずま・がく)。
大阪を拠点に、絵師として、アートディレクターとして活躍している。ことに演劇の宣伝美術でも高い人気を誇り、最近では「スーパー歌舞伎IIワンピース」や「レミング〜世界の涯までつれてって」などの宣伝美術を手がけている。


女体をキャンパスにして、直接、墨汁で描くにあたり、最初に軽くラフを描いたらあとは、ほとんど即興的に、後ろから前から全身、局所にまで筆を入れる。

「入れ墨のように痛くなく、むしろ、描いている時に、眠気を催すほどソフトなタッチです。お風呂に入ったらすぐ落ちるし、何度でも好きな絵を試せます。とはいえ、これで外出できるわけではないですが」とウィットに富んだことを言う東。でも、作品は繊細で深遠だ。

東の絵のテーマは一貫して女性。女性のボディアートをはじめたのは10年程前。最も描きやすいのは、40代前半くらいの出産したことのない、痩せすぎでもない女性の肌だという知見を得たほど、たくさんの女性の肌に絵を描いてきた。
ライブパフォーマンスも行ったが、昨年ふいに「これは残さないといけない」と思いたち、やったことのなかった撮影まで自らはじめるようになった。

はいてますよの逆パターン


そもそも、いったいなぜ、女性のカラダに絵を?
「修行です(笑)。女性とふたりきりになって、一糸まとわぬそのカラダに触れながら絵を描くときに、いっさいの煩悩を捨て去ることに挑んでいるんです。だから、描いている時は、邪な気持ちにならないよう、面白い話ばかりしているんですよ」
“雄”としての本能を抑制して描き、撮影した作品の数々は、むしろとてもエロティック。

局所のヘアーを剃って、そこにも描いているそうで(余談だが、“大阪一の剃りスト”という異名もあるという)、その絵を見せるため、ポーズもかなり際どいものもある。安心してください、はいてますよの逆パターンで、安心できません、はいていませんよ にもかかわらず、本来のはっきり出したら、わいせつ問題が勃発しそうな部分が、みごとに絵で隠れ、全然わからない。

モデルの母親や恋人が反対するケースもあるそうだが、モデルになりたがる女性はあとを絶たず、目標の108人(煩悩の数)にあっという間に届きそうな勢い。
実際、この写真群を見たら、生々しくないキレイさなので、試してみたくなる気持ちもわからなくない。
「絵を描くまでに、モデルさんとご飯を食べながら、話をします。そこから出てきた好きなものを描くこともあるし、逆に嫌いなもの、苦手なものを描くこともあります。かっこいいことを言ってしまえば、その人が隠しているいけない部分や暗い部分を表に描いてあげて浄化させるんですよ」と東は言う。

描くほうは修行、描かれるほうは浄化、どちらも自分をみつめる作業をしているのだ。
(木俣冬)