累計7000万本を超えて売れ続ける箱庭ゲーム Minecraft の作者 Notch こと Markus Persson が、Oculus Rift など仮想現実ヘッドセットで楽しめる新作 Unmandelboxing を発表しました。

新作といってもVRゲームではなく、無限に複雑な三次元フラクタル図形を生成するデモ作品です。ノッチらしい企みは、プログラム全体がわずか3524バイト(3.5KB)でHTMLファイル内に書かれていること。

ブラウザでの表示にはバーチャルリアリティ向けAPIのWebVRが使われており、Firefox や Chromeの対応ビルドで有効にしている場合はVR環境で見られます。

目が回るトリッピーな形状は Mandelbox と呼ばれるフラクタル図形。どこまでも拡大できる自己相似パターンで有名なマンデルブロ集合の親戚で、シンプルな式から無限に複雑な立体を生成できます。

描画の技法はレイトレーシング法のひとつレイマーチング。こちらも簡潔なコードで立体を描画できることから、できるだけ短いプログラムで驚くような体験の生成を競う「デモ」文化でよく使われます。

こうした技を駆使して、複雑な立体アニメーション生成をわずか3.5KBのHTMLファイルだけで実現したのがすごいところ。3.5KBといえば、一般的なJPG写真の10〜100分の1くらい。Unmandelboxing 数秒間の映像を動画に保存しただけで1000倍の3.5MBは必要になります。
要は「ただの良くできたデモ」ではあるものの、シンプルなルールから複雑な世界を生成する点はMinecraftとも通じます。プログラミングが好きだから、という理由で個人的な趣味としてマインクラフトを誕生させたノッチらしい作品です。

デモとかそういうのはいいから早く次のゲーム作ってよ、との声もあるかもしれませんが、ご存知のようにノッチはMinecraftと自分の興した開発会社 Mojang を約2700億円でマイクロソフトに売却しており、現在は商業的なゲーム制作からは距離を置いています(Minecraftの開発からは、売却するかなり以前からすでに手を引いていました)。

そもそもノッチは趣味で作ったゲームが爆発的な大成功を収めたことで知らぬ間に「インディーゲーム・ムーブメントの黒幕」「既存のゲーム業界を激震させる風雲児」に祭り上げられ、開発の現場から離れてもプレーヤーからはゲームのありとあらゆる更新や規約や商品展開について罵詈雑言を24時間365日受ける羽目になったことから、「金のためではなく正気を保つため」会社ごとマインクラフトを売却していました。

売却に至る経緯と心情を綴った文章 I'm leaving Mojang によれば、今後は小さな実験作やウェブ作品に専念して、もし万が一作品がマインクラフトのような影響力を持ち始めたら直ちに手放すだろう、とまで宣言しています。

(Mojangを売却する以前から、新作の開発を始めては途中で行き詰まったり放棄するくせがあったノッチだけに、仮にまた商業的な作品を作る気になったとしても完成するかは分かりませんが)。

ノッチによる実験ゲームの例は、制作四時間というテキスト人生ゲーム Drowing in Problems など。興味が続けば、将来的にはVRを使った実験作も作ってくれるかもしれません。