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兄弟は、子どもの頃は仲睦まじい関係であっても、成人してそれぞれの人生を歩み始めると、隔たりは大きくなりがちです。「私にはかなりの借金がある1つ違いの50代の兄弟Aがいます」という方からYomiuriOnlineの「発言小町」に相談が寄せられました。

「兄Aは5年前に離婚しており、子どももいますが、音信不通のようです」といい、兄の死後、借金の整理などで自分や子どもに迷惑がかかることがないかと心配しています。そこで「Aが死んだ場合、私に連絡が来ると思います。相続放棄をしたいのですが、どのようにしたらよいのかアドバイスをお願いします」と投稿しました。

レスには「あなたには相続権はないですよ」とアドバイスが並びますが、「親戚の者に『お前がAの面倒を見るんだぞ』と度々言われ、色々後始末をしなければと思い込んでいました」と、なおも不安そうな様子です。

実子はいるものの「音信不通」という実兄。連絡がつくのはトピ主だけであっても、借金や死後の整理などをする必要はないのでしょうか? また相続権はまったくないのでしょうか? 小松 雅彦弁護士に聞きました。

(この質問は、発言小町に寄せられた投稿をもとに、大手小町編集部と弁護士ドットコムライフ編集部が再構成したものです。トピ「借金がある兄弟の死亡後の相続放棄」はこちら、http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2015/0917/730761.htm?o=0)

A. 「相続人になって3カ月以内であれば、相続放棄ができます」

お兄さんにお子さんがいて、そのお子さんが生きていれば、お子さんが相続人となり、借金も引き継ぎますし、アパートの片付けの義務も引き継ぎます。トピ主は相続人ではないので、相続放棄は出来ませんし、手続きをしなくても借金も片付けも何ら義務を負いません。

お兄さんのお子さんがお兄さんより先に亡くなっていても、そのお子さん(お兄さんから見て孫)がいれば、「代襲相続」と言って、そのお子さんが相続人となります。ここでも、トピ主は相続人ではないので、義務を負いません。

ところが、お兄さんのお子さんが生きている、ないしはお兄さんのお子さんがすでに死んで孫だけが残っているときも、その人たちが相続放棄の手続き家庭裁判所ですると、相続人ではないことになります。

この「相続放棄」があった場合、お兄さんの親御さんが生きていれば、その方が相続人となります。しかし、その親御さんが亡くなっているか、相続放棄をした場合、兄弟であるトピ主が相続人になります。

この場合、他の相続人が相続放棄をして、トピ主が相続人となってから3月以内であれば、家庭裁判所で相続放棄の手続きが出来ます。

相続放棄の注意点は、相続財産を相続放棄の前に処分すると、相続放棄が出来なくなることです。また、相続放棄後も隠匿や消費をすると、相続放棄の効力が否認されます。

あなたが相続人となって相続放棄を検討中に、兄さんの借金の請求があった場合は、相続放棄を検討中だと押し返せば良いですが、問題は賃借りアパートの片付けを求められたときです。

片付け行為は財産的価値のある相続財産を処分したと理解され、相続放棄が出来なくなる可能性があります。相続放棄が認められない場合は、お兄さんの借金も全てあなたが負うことになりますので、相続放棄が認められるまでに、片付けなどはしないよう注意してください。

なお、相続人がいなくなった場合、大家側としては原則として、お兄さんの賃借りの連帯保証人に、敷金でカバーできない滞納家賃や原状回復費を請求することになります。

連帯保証人がいないような場合は、法的には利害関係人が相続財産管理人の選任を家庭裁判所に求め、相続財産管理人が処理をすることになります。しかし、ここでも相続放棄をしたトピ主が相続財産管理人に指定されることはありません。

【取材協力弁護士】
小松 雅彦(こまつ・まさひこ)弁護士
後見・相続・遺言を多数取り扱う。「気軽に相談できる、親しみやすい法律家」をモットーに身の回りの相談にも対応している。薬害エイズ事件やハンセン病国賠事件、薬害肝炎事件なども担当した。
事務所名:多摩オアシス法律事務所
事務所URL:http://komatsu6.com/