1月18日から石垣島で行なわれていたなでしこジャパン第1次キャンプが25日の練習で打ち上げを迎えた。

 オフ明けの状態から、悪天候のために前倒しで進められたメニューも無事に終了。常に練習前にミーティングを行なうことで意図を伝え、イメージを共有しながら、実践で確認をする。一連の流れを徹底した8日間のトレーニングに、佐々木則夫監督は「やりたいことは一通りやれた。相対的にステップアップしてくれたように思う」と、一定の成果を認めた。

 地元高校生とのゲームや、紅白戦の中で目についたのは一人一人が複数のポジションにトライしていたことだ。新たな可能性の模索段階であるが、そこでの発見も重要なステップアップにつながる。

 そのひとりが川澄奈穂美(INAC神戸)だ。なでしこジャパンでは主にFWやSH(サイドハーフ)を担うが、このキャンプでは右SB(サイドバック)での起用もあった。彼女の特長はスピードとスタミナ。新たなポジションではその双方が生かされる場面も見られた。アジア予選では、両チームが拮抗する試合が予想される。攻撃面で閉塞感が出ることもあるはずだ。そういった時間帯に動きをつけるには川澄のSBがいい一手になる。

「自分は攻撃型なので、その一面で考えれば広くスペースを捉えることができるし、ボランチとの位置関係でもっと攻撃に関わることができる。自分がハーフのときにそこをどう引き出すのかというのも見えた」と新鮮な視界に手応えを掴んでいる様子。

 もちろん相手の攻撃を受けるとなると、SBとしてのまた違う取り組みが必要となる。川澄の完全なるコンバートは現実的ではないが、あくまでも限られた時間の中で生み出す攻撃のひとつとしては、十分に実戦で通用しそうだ。何より、SBからの攻撃参加の方が川澄の持つスピードを生かせる。それはこのキャンプで取り組んだロングボールからの攻撃で感じられたという。

「その距離のパスで大きくサイドチェンジができれば、さらに効果的にスペースを使えるし、アイデアが広がる」と、川澄自身もタテだけでなくヨコへのロングボールでの展開を視野に入れている。

 そして、ドイツワールドカップや、アメリカへの移籍を経験する中で川澄が取り組んできたのがシュートの質だ。ドイツワールドカップでの川澄のシュートはコースの正確性が際立っていた。が、パワーには欠けていた。そこを痛感した川澄の現在は、どうだろう。シュート練習でも、際どいコースへの意識の高さはそのままに、シュート自体に確かな重さが加わっているのが目に見える。

「意識付けでシュート練習も変わってくる。上積みをしていきたい」とこれからの1カ月でのさらなる底上げに気を引き締めていた。

 キャンプでは、若手も懸命なアピールを続けた。中でも指揮官の興味を引いたのは乗松瑠華(浦和L)だった。もともとはCBだが、昨シーズンは右SBとしても評価されてきている。U−19時代にはここぞ、という場面で左SBから精度の高いクロスでゴールを引き出す実力も証明済み。このキャンプの紅白戦でもその片鱗を垣間見せた。

「なんでもこなせるSBになりたい」と語った乗松だが、スタミナには課題が残る。努力の量だけ伸び幅があるスタミナは、根気強く積み重ねるしかないが、それさえ身に付ければ強力なSBが誕生するかもしれない。

 さらに、昨年からなでしこ入りのチャンスを掴んでいる横山久美(長野パルセイロL)も生き残りをかけた戦いに全力で挑んでいた。

「パスがなかなか来ないのは、まだ自分が信頼されていないから。自分から欲しいパスを呼び込めるようにしないといけない」と、これまでのプレーを分析していた横山。紅白戦では「貴重なチャンスを決めきれなかった......」と反省しきり。それでも、欲しかったパスを引き出せる機会は確実に増えてきている。

 他にも大儀見優季(フランクフルト)の相棒一番手へと成長した菅澤優衣香(ジェフ千葉L)やケガから復帰した高瀬愛実(INAC神戸)、すでに実力経験ともに揺るぎない川澄、大野忍(INAC神戸)らに加え、最終予選前にはカナダで切り札として活躍した岩渕真奈(バイエルン)の招集も濃厚で、攻撃陣は色彩豊か。そこへ横山が切り込むには決めきる力を上げていくしかない。次の第2次キャンプ(2月14日〜19日)が正念場となりそうだ。

「今は完成形ではないので、また(チームに)戻ってコンディションを上げ、そしてまたキャンプで質を上げて、直前には完成するというような感じでやっていく」とは佐々木監督。

 今回のテーマであった"意識改革"と"イメージの共有"はクリアした。あとはオフ明けの1カ月を選手たちがどう過ごすか。2月末という時期の短期決戦は、所属チームの協力体制がなければ難しい。あらゆる環境からのバックアップを受けて、選手たちがいかにして形にしていくのか。特に試合のない国内組のこれから1カ月の取り組みがリオへの扉を開くカギとなる。

早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko