空中戦で強さを見せた植田(5番)は、奈良とCBコンビを形成。身体を張ってイラクの攻撃を撥ね返した。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

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 イラクの先発メンバー、そして交代カードの切り方には少なからず驚きがあった。まず“イラクのメッシ”と評され、要注意人物としていた11番のフマムがベンチスタートとなったのだ(85分から途中出場)。また、準々決勝では途中出場から2ゴールに絡み、日本側が危険視していた長身FWのA・フセインは結局最後までピッチに現われなかった。

 それでも右サイドに入った10番のヒスニ、「強さがあってボールを収められた」(遠藤)という1トップの8番・アブドゥルラヒームを中心にしたイラクの攻撃に日本は手を焼いた。

 この日のCBは「ラインコントロールでの牽制の仕方が、(奈良)竜樹が一番メリハリがある。今は3人で高め合っている」(手倉森監督)と、岩波ではなく植田と奈良のコンビが先発。「責任がありましたし、いろんな人の想いを持ってピッチに立って、勝利という結果を得られたのが良かったです」と奈良が語ったように、ふたりは気持ちのこもった粘り強い対応を見せた。

 後半はやや足が止まり、81分にはクロスをボランチの4番・ムスタファにフリーで合わせられるなどピンチが増えたが、CKからの失点以外、ゴールを許さなかった点は評価して良いだろう。

 一方、両SBは通常通り、オーバーラップを控え、主に守備に力を注いだ。特に室屋は65分に左サイドを崩された際には、素早く中に絞ってクロスをクリア。この試合でも大きな働きをした。
 
 また、つけ加えたいのがGKの櫛引の好調さだ。イラク戦でも後半に相手の強烈なミドルをセーブするなど、ファインプレーを披露。手倉森監督も評価する守護神の活躍はチームを勢いに乗せたと言える。

 ただCKからの失点シーンは鈴木のニアでのクリアがゴール方向に飛んでしまうミスが起きるなど、対応を再確認する必要がある。櫛引が二度のセーブを見せたものの、守備陣が相手に寄せきれなかった点も反省材料だ。
 足の付け根の違和感で、前日練習は軽いメニューをこなしただけだった遠藤は、予想に反して先発出場。キャプテンの存在感はやはり大きかった。

「相手の8番(1トップのアブドゥルラヒーム)は強さがあって、なんとか入れ替わられずに最終ラインで勝負させないようなポジショニングを取ろうと思っていました。8番に収まったとしても、次の相手に対して前向きにプレッシャーに行けるように意識しました。最低限ボランチの前でプレーさせられれば良いので。収まる時は収まっちゃうので、落としに対してすぐに対応に行けるようにしました」と話したように、遠藤はCBやボランチの相棒である原川と協力して守備ブロックを形成。ディフェンスの中心に立ち、周囲を鼓舞する姿は頼もしい限りだった。

 見事な決勝弾を挙げた原川も、遠藤が後ろに控えるという安心感があったからこそ、試合終盤に高い位置をキープできたのだろう。

 また右サイドハーフに入った南野の貢献も見逃せない。守備時にはマークをする相手から決して離れず、最終ラインまで戻って対応した。そして、ひとたびボールを持てば、キレのあるドリブルでカウンターをしかける。原川の決勝ゴールもこの18番のクロスが起点となった。

 左サイドハーフの中島は相手のフィジカルに苦戦したが、残りの3人は高い守備意識を持ちつつ、攻撃時には原川、南野が仕事を果たすなど、中盤はおおむね機能したと言える。
 日に日に連係が高まっていると話していた2トップの鈴木と久保は、見事なコンビネーションで先制点をマーク。久保が中盤に引いて、スルーパスで鈴木のスピードを活かす形も見られ、ふたりの関係性からチャンスを作れた点は大きな収穫だろう。

 また、南野がこの日はタイミング良く2トップに絡めたため、攻撃の厚みが増していた。

 久保、鈴木、南野と縦への推進力のある3人は、手堅く守って素早く攻めるチームのやり方にマッチしている印象だ。

 またオナイウ、浅野と、交代出場で前線を活性化できる駒がいたことも幅を広げた。決勝弾のシーンではまず、浅野が前線でボールをキープして起点となり、南野のクロスにオナイウが飛び込んで相手を惑わした。目に見える結果は残せなかったが、ふたりの働きぶりはチームを大いに助けた。

 これまでは得点力不足が懸念されたが、攻撃面は今予選を通じて順調に成長している。

 ただ厳しい見方をすれば、今回は“アジアレベル”だったという面もある。今後は対世界のために崩しのバリエーションや質を高める必要がある。その意味では、まず決勝の韓国戦が良い試金石になるかもしれない。

取材・文:本田健介(サッカーダイジェスト編集部)