[1.26 リオデジャネイロ五輪アジア最終予選準決勝 U-23日本 2-1 U-23イラク アブドゥッラー・ビン・ハリーファ・スタジアム]

 思いを乗せたボールがゴールネットに突き刺さる。時間は後半45分を経過し、アディショナルタイムに突入。延長戦もチラつき始めた中で生まれたU-23日本代表MF原川力(川崎F)の劇的弾が、リオデジャネイロ五輪への道を切り開いた。

「相手が間延びしてきて、セカンドボールを拾える印象があったので、一つ前のポジションを取っていた」とボランチの位置からスルスルと前線へと顔を出していた。その的確な判断が奏功する。右サイドからMF南野拓実(ザルツブルク)が送ったクロスは相手GKにパンチングで弾き出されるが、こぼれ球にフリーの原川が反応する。

「右からプレッシャーが来ていると思ったので、うまく左足の方に置いてシュートしか考えていませんでした」とトラップでボールを落ち着けると、「ふかさないように、枠の中に入ってくれればと思って」左足を振り抜く。放たれたボールはネットを揺らし、決勝ゴールが生まれた。

「一つの目標を達成できたことが嬉しくて非常に達成感があります。今までで一番気持ちが良いというか、何かが懸かった試合の中で点を取るという経験は、あまりできないと思う。本当に嬉しい」と白い歯を見せた。

 手倉森ジャパン発足当初からの常連メンバーであり、初陣となった14年1月のAFC U-22選手権グループリーグ第1節イラン戦で同代表第1号となるゴールを決めた。その後も14年6月の候補合宿でこそ招集外となったものの、同年9月のアジア大会で全試合出場を果たし、15年3月のリオ五輪アジア一次予選でも2試合でピッチに立つなど、「チームのシステムを自由自在に変えられる能力がある『いぶし銀』」(手倉森誠監督)として存在感を示していた。

 しかし、そんな原川が候補合宿以外で一度だけメンバー外となったことがある。それが、15年7月のコスタリカ戦だった。初めての経験に「メンバーから外れていいとは思いません」と唇を噛みつつも、得たものもあると続ける。「競争は絶対にあるし、そこを受け入れながら自分を成長させるしかない。自分の課題を見つめ直せた部分があるので、そこは成長につながったと思います」と前向きに捉え、悔しさを糧に成長を遂げていた。

 ボランチにはキャプテンのMF遠藤航(浦和)、MF大島僚太(川崎F)らが名を連ねており、ポジション争いはし烈を極めた。「ボランチは90分で何ができるかだと思う」と話しつつもAFC U-22選手権、アジア大会、五輪一次予選では計11試合に出場しながらもフル出場は3試合にとどまり、「そういう部分での悔しさはあった」。しかし、「常に負けたくない気持ちを持っているし、その気持ちがないとサッカー選手としては終わり」と強い気持ちを持ってアピールを続けて、最終予選メンバー入りを果たした。

 迎えた最終予選。初出場となったグループリーグ第2戦タイ戦では的確な散らしで攻撃にリズムを生み、鋭い寄せで守備にも奮闘。再びピッチに立った準々決勝イラン戦では「全然ボールに触れなかった」と悔しさを滲ませたが、準決勝イラク戦に向けて「ボールに触って、しっかりリズムを作りたいし、守備でも自分のリズムを作りながらイラン戦よりうまく試合に入りたい」と自分自身へのリベンジを誓っていた。

 常連メンバーの一人だが、悔しさも味わってきた。しかし、決して腐らずに悔しさをバネに成長し、大一番で結果を残した。リオ五輪出場へと導いた殊勲の男は「喜びなれていないし、まだ実感は湧きません」と苦笑したが、「あまり経験できない」ゴールで歴史に名を刻んだことは間違いない。

(取材・文 折戸岳彦)


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