老化は「劣化」ではなく「グッドエイジング」(shutterstock.com)

写真拡大

 先日、社会学者・古市憲寿氏が出演したテレビ番組内で「ハーフってなんで劣化するのが早いんでしょうね」と発言したところ、ネット上で「差別発言ではないか?」と非難された騒動がありました。一緒に番組に出演していた、あるタレントさんの幼少時代の写真を見た流れでのコメントだったようです。

 この場合に使われた「劣化」は、おそらく「見た目の老化」のことを指しているのでしょう。最近メディアなどでも用いられている「劣化」という言葉――。時間を経て、あるいは年齢を重ねて、見た目が以前と変わったことに対して使われています。つまり、以前より老けて見えることは"マイナス"であると捉えたものなのでしょう。

 しかし、そもそもこのようなケースで用いられる「劣化」の定義とは、いったい何なのでしょう? 皆さんは、この言葉についてどのような印象をお持ちですか?

見た目の老化症状は「劣化」ではなく「グッドエイジング」

 年齢とともに見た目が変わっていくことを「老化」と呼びます。見た目だけなく、人間は加齢とともに身体の機能も衰えるため、「老化」という言葉は広い意味を持ちます。見た目に限ると、顔のシワ、シミ、たるみなどは老化の代表です。

 鏡を見ながら頬のラインを引っ張りあげて、シワやフェイスラインを伸ばしてみたり、昔のアルバムを眺めて、ため息交じりに「老けたなあ」と感じたりした経験は、多くの方がお持ちではないでしょうか。

 ですが、今回、私が触れたいのは、これを否定的に「劣化」と呼ばなくてもよいのでは、ということです。だって老化は人間の道筋、老化しない人間なんていないのですから。

 たとえば、年齢を重ねることを"人生経験"と考えてみてはどうでしょう。年月とともに熟成していくワインのように、人間こそ年月とともに味わいを増していくことができるはず。「劣化」と言うよりは、むしろ「グッドエイジング」として向き合った方が幸せではないかと思うのです。

老化しない人間なんていない

 とはいいながら、美容クリニックには、シワやシミ、たるみを何とかしたいという多くの患者さんがご相談にいらっしゃいます。「シワが目立ってきて、気分が落ち込む」「数年前の自分に戻りたい」といった悩みを持つ方と毎日お会いしているので、その心情は十分に理解しています。そうした悩みを手助けする手段となりえるのが美容医療なのです。

 「老化した自分を何とかしたい」という気持ちが分かるからこそ、私たちは美容医療で応えます。年々気を揉んでいたシワが目立たなくなった患者さんはとても喜んでくれます。「鏡を見るのも嬉しい! 毎日が楽しくなった」「年齢より若く見えるねと言われた!」などと、イキイキした表情で話してくれます。医師としてうれしい瞬間のひとつです。

 つまり、老化症状が改善されたことで、見た目だけでなく内面的な変化をもたらすことも実感できるのが、美容医療の現場です。

メラニンの少ない白色人は紫外線ダメージを受けやすく老化が進みやすい

 冒頭の記事に絡めて、ちょっと医学的観点からのお話しを付け加えさせてください。

 ハーフの方だから云々、ではなく、私たち日本人のような黄色人種と、欧米人のような白色人種で比較すると、白色人はメラニンの量が少ないという事実があります。シワやたるみの一番の原因は紫外線です。メラニンは紫外線から肌を保護する役割を持つため、メラニンの少ない白色人は紫外線のダメージを受けやすく、老化が進みやすいともいえるのです。

 「老化=劣化」とネガティブにならず、「グッドエイジング」で人生を重ねていきたい、医療で美や若々しさをもたらすことを仕事とする私が言うのは矛盾もありそうですが、年齢を重ねながらも見た目も気持ちも美しくありたいという患者さんと日々接するからこそ、そんな風に感じるのです。


伊藤康平(いとう・こうへい)
聖心美容クリニック東京院院長。日本美容外科学会(JSAS)専門医、日本美容外科学会(JSAPS)会員、日本美容外科医師会会員、日本外科学会専門医など.冷静・的確なカウンセリングや美容外科医としてのセンス、技術に定評。年代を問わず幅広い支持を受けている。趣味は車やスキー、オーディオなどの電化製品、料理、熱帯魚観賞と幅広く。
聖心美容クリニック www.biyougeka.com