2月29日から始まる、リオデジャネイロオリンピックアジア最終予選へ向けて、なでしこジャパンが始動した。佐々木則夫監督が第1次キャンプの地に選んだのが、1月でも暖かい沖縄県の石垣島。1月18日から9日間でイメージの共有を図っている。国際Aマッチデーにあたる期間ではあるが、今回はマッチメイクが難しく、地元男子高校生らと実戦形式でトレーニングを行なうなど、国際親善試合は組み込まれない強化合宿となった。

 大儀見優季(フランクフルト)、熊谷紗希(オリンピック・リヨン)、宇津木瑠美(モンペリエ)、安藤梢(エッセン)ら海外組を含む総勢26名(※長船加奈=浦和レッズLはケガのため途中離脱)が集結したこの強化合宿。この後、フルメンバーが揃うのは2月末のオリンピック予選の直前合宿しかなく、時間は限られている。

 ところが、3日目からは天候が悪化。記録的な寒波の到来により、暴風雨で練習の中止を余儀なくされるなど、波乱含みの進行となってしまった。それでも佐々木監督はメニューを前倒しで組み直し、2日目、3日目は2部練習を敢行、この中で早くも地元高校生とのテストマッチを組み入れるなど実戦を多く取り入れた。

 昨年のカナダワールドカップでは骨折で無念の途中離脱をした安藤も、久しぶりの代表復帰。自身はクリスマス休暇明けで、急激にピッチを上げていく練習メニューに疲労感を持ちながらも、「いろんな意味で危機感はあります。キツいけど、それでもやっぱりみんなとサッカーをやれるのは楽しい!って改めて感じた」と、気持ちも新たに奮闘している。

「この天候を嘆いても仕方がない。この中で意図してできることをやるだけ」と表情を引き締めたのは大儀見だ。24日の紅白戦では菅澤優衣香(ジェフ千葉L)からのパスでゴールを決めた。カナダワールドカップから菅澤と2トップを組む機会が増えたが、その後のオランダ遠征から今日まで、動き出し、ポジショニングと、大儀見は菅澤とのイメージの共有に多くの時間を割いてきた。このゴールはふたりのイメージがようやく重なった第一歩だった。

 他にも強烈なスパイスを効かせることができる宮間あや(湯郷ベル)との前線でのタテ並び型など、バリエーションは確実に増えてきている。さまざまな組み合わせにも、「イメージの共有は形になりつつある」と大儀見はまずまずの手応えを口にした。

 代表活動に思うように合流できない海外組は、国内組とは異なる危機感を常に抱いている。中でもボランチを務める宇津木はチームの状況をかなり現実的に捉えている。

「カナダでも感じたけど、支配率とかはコンスタントにできるようになっていると思う。でも点が入らない。こういう形なら点を獲れるっていうのがない」

 ヨーロッパ勢を相手にするのであれば、日本のようなパスサッカーに食いついてくれる傾向があるため、スペースも有効に使うことができる。しかし、アジアが相手ではそうはいかない。実力がほぼ互角の国であれば、ピッチ上の展開スピードは増す。そこにフィジカルで勝負をしてくる相手をかいくぐりながら、有効な仕掛けが必要となる。一方、力の差がある国と対戦する場合は、自陣に構えられてしまう。攻撃にはヨコのみならずタテの揺さぶりが不可欠だ。どちらにしても、今なでしこが持っている攻撃型はすでに研究しつくされており、もはや脅威にならないところにまで来ていると言っていい。だからこそ、と宇津木は言う。

「ゴールを狙うためだけの、ゴールに直結するプレーというものが狙いとして欲しい」のだと。キャンプ2日目にはそうした目的のロングボールを生かした攻撃メニューも取り入れられた。それを実践するタイミングの戦術眼はまだ高まっていないが、いい意識づけにはなったに違いない。

「海外組の強みと国内組にしかない利点が孤立してしまっている」(宇津木)

 現状から抜け出すには、そのふたつを融合させるしかない。メンバー選考の要素も色濃いため、それぞれに持ち味のアピールももちろん重要だが、融合のアイデアの提案もひとつのアピールになり得るはずだ。そのプレーが有効だと証明できれば、なでしこの新しいスタイルになる可能性もある。見方によってはこんな刺激的な課題はない。受け身になるのではなく、若手、ベテランも関係なく、新しいなでしこジャパンのスタイルを築くための貪欲な姿勢が見たい。

 国内でオリンピック予選が開催されるのは2004年のアテネオリンピック以来。この予選で代表デビューを果たした大儀見はチャンスを決めきれず、苦い経験をした。だが、それがあるからこそ、今や日本を牽引するエースへと成長した。

「(アテネ予選で)なでしこジャパンはひとつ上のレベルに上がった。国内で予選を戦うのはプレッシャーでもあるけど、逆に自分たちがまたさらに強くなるチャンスでもある」(大儀見)

 その"チャンス"になでしこたちはどう挑むのか。リオデジャネイロオリンピック予選を勝ち抜くためには、これまでのなでしこ的サッカーに加え、新たな変化が必要になる。それはこの選び抜かれたメンバーだからこそ成せるはずだ。この石垣キャンプは、個のアピールにとどまらず、新たななでしこスタイルを生み出すヒントを掴むものになっていなければならない。

早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko