錦織圭(ATPランキング7位、1月18日付け、以下同)が、オーストラリアンオープン(全豪)で2年連続3度目のベスト8を決めた。だが、今の彼はグランドスラムでの5回目のベスト8は、通過点に過ぎないかのように大きな喜びを表現することはなく、コーチ陣に向かって右手で軽くガッツポーズを作っただけだった。

「今回特に楽なドローではなかった。その彼らを相手に、このスコアでここまで来られたのは、すごくいいことだと思いますし、自信にもなります。ここからさらに勝っていくために、それほど体力と集中力を使わず、温存してできている」

 4回戦で、第7シードの錦織は、第9シードのジョーウィルフリード・ツォンガ(10位、フランス)を6−4、6−2、6−4というスコアで圧倒した。今回も雨のために試合は、ハイセンス・アリーナの屋根が閉じたまま行なわれた。「インドアでもいいテニスができている」という錦織は、ツォンガのバックサイドにボールを集めて、彼が得意のフォアハンドストロークで攻撃させないようにした。さらに錦織のグラウンドストロークが深く入ったため、ツォンガは守勢に回ることが多かった。また、ツォンガのファーストサーブの確率が60%にとどまったこともあり、リターンからも錦織は勢いづいた。

「出だしから良かったので、自信を持って打っていけた」と錦織は、各セットの序盤で、ツォンガのサーブのブレークに成功して試合の主導権を握った。

 ツォンガが背中に違和感をおぼえて、メディカルタイムをとる一方で、錦織は3回戦で治療した右手首の不安を全く感じさせないような充実のプレーを披露。最大の武器であるフォアハンドストロークのウィナーは16本を記録し、今大会進化を見せるネットプレーも21回中15回成功させ、錦織らしい攻撃テニスが冴えまくった。

 今回のベスト8で、錦織は全豪ではマッチ20勝6敗とし、グランドスラムの中では通算で一番安定した成績を残している(USオープン13勝7敗、ローランギャロス(全仏)8勝5敗、ウインブルドン8勝6敗)。

 大会第2週にピークを持っていくために錦織なりに工夫もしている。グランドスラムで、選手は基本的に1日おきに試合をしていくが、錦織は試合のない日の練習を軽めにして体の回復に努め、いかにリラックスするかに重きを置いている。ちなみに、昨年のローランギャロスでは試合のない日ごとに、錦織は必ず買い物に行って、気分転換を図っていたという。

「1〜2回戦は集中してできていますけど、疲れが出てくるし、相手も強くなってくるので、3〜4回戦は集中力を保つのが大変というか、気持ちをさらに入れないと、ちょっとふっと抜ける時がまだありますね。ここからさらに一段階上げていかないといけない」

 こう語った錦織の準々決勝の対戦相手は、全豪で5回優勝し、ディフェンディングチャンピオンで第1シードのノバク・ジョコビッチ(1位、セルビア)に決まった。昨シーズン、28歳にしてキャリアベストのテニスを披露したジョコビッチは、2016年開幕戦のATPドーハ大会(カタール)で優勝して、好調を維持し続けている。

 全豪4回戦では第14シードのジル・シモン(15位、フランス)のカウンターショットにてこずり、4時間32分におよぶフルセットの戦いを強いられたものの、9年連続のベスト8を決めた。同時に、グランドスラムでは27回連続の準々決勝進出となり、往年の名選手ジミー・コナーズ(アメリカ)と並んで史上2位の記録を作った。

 2人の対戦成績は錦織の2勝5敗。現在ジョコビッチの4連勝中で、全豪では初対戦となる。直近の対戦である15年ATPワールドツアーファイナルズでは、ジョコビッチが圧倒して、わずか1時間5分で錦織は敗れた。

「3セットマッチでも5セットマッチでも、(自分が)1セットを取ったとしても、彼(ジョコビッチ)は調子を落とさず、またさらに上げてこられる選手。後半に行くにつれて、彼の良さが出てくる」

 このように語る錦織に対して、ジョコビッチは「錦織と戦う時は凡ミスを減らしたい」と決して油断を見せない。

 たとえ錦織が100%の状態でも、現在全盛期にあるジョコビッチを倒すのは至難の業だろう。だが、言うまでもなく勝負に絶対はない。錦織がベースライン付近から早いタイミングのカウンターショットを入れながら、我慢強くラリー戦に持ち込めば、チャンスを見いだせるはずだ。

「気を引き締めていきたい。(自分が)挑戦者で、思い切ってやらないといけない相手ですが、(今のテニスができていれば)無理をしてすごいリスクを負うようなことは多分しないと思います。自分のテニスを貫けるようにしたいです」

 錦織の準々決勝は、1月26日に行なわれる予定だ。悲願のグランドスラム初制覇を目指す錦織にとって、ジョコビッチ戦は最大のチャレンジとなる。

神 仁司●文 text by Ko Hitoshi