ここまで1アシストに止まっている南野に待望のゴールが生まれるか。イラク戦での爆発に期待が懸かる。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

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「大一番ですけど、そんなに気負うことはないです」
 
 その口からは冷静な言葉が返ってくる。ただ、鋭い視線からは内に秘めた熱い想いが感じられる。勝てば五輪出場が決まる準決勝のイラク戦へ南野は静かに闘志を燃やしているようだ。
 
 今予選、南野は少なからず苦戦を強いられてきた。“リベンジ”の意味合いがあったグループリーグ初戦の北朝鮮戦では持ち味を出し切れずに後半早々に交代。第3戦のサウジアラビア戦では井手口の得点をアシストしたが、続く準々決勝のイラン戦では出番がなかった。
 
 まだゴールという歓喜の瞬間は訪れていない。一方で、十分な休養を取れたために「不安はない」とキッパリと答える。
 
 やや懸念するのはキックオフ前後のチームの雰囲気。
「チームは乗っていると思います。でも、いざ試合になってみると、切符がかかった試合で変な雰囲気というか、(苦戦した北朝鮮との)初戦みたいな感じになるかもしれません。そうならないように良い準備をしたいです」と語る。
 
 大一番で緊張に呑まれる感覚。一昨年、U-20ワールドカップ出場を目指して戦ったU-19アジア選手権ではベスト8で北朝鮮と対戦したが、「あの時は北朝鮮にやられました。勢いに呑まれたと言うか……。ただそういうことを経験しているので、今回に活かせればと思います」と振り返る。
 
 周囲からの大きな期待、そしてイラクの激しいプレスを前に南野はいかに立ち回るか。果敢に仕掛け、チームに活力を与えれば、日本は変に受け身に回ることもないはずだ。
 
 重要な一戦だからこそ、ここまで悔しさを味わってきた男に、貴重なゴールが生まれそうな匂いが漂っている。
 
取材・文:本田健介(サッカーダイジェスト編集部)