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●Qiとは違うCota
米・ラスベガスで開催された「CES2016」で、日本の携帯キャリアであるKDDIが米Ossia社と共同開発したワイヤレス給電技術「Cota(コータ)」を共同出展していた。

この"放射型"技術は、Wi-Fiと同じ2.4GHz帯を用いて最大10メートル離れたデバイスにも給電できる。給電力は1Wと小さく、これだけでスマートフォンをフル充電するのは厳しいものの、電波の届く範囲であれば複数のデバイスに給電することが可能だ。今後ますます増加するウェアラブル製品やIoT製品に向けた給電技術として注目を集めている。

○「おくだけ充電」など、普及が進む「Qi」

一般にワイヤレス給電(非接触電力伝送)と呼ばれる技術は、大きく「放射型」と「非放射型」に分類できる。「Cota」のように電波を飛ばして、離れた場所にある機器も充電可能な放射型の技術に対して、ワイヤレスというよりも非接触と呼んだほうがピンとくるのが、電磁誘導方式や磁気共鳴方式といった非放射型の技術だ。

中でも電磁誘導方式の技術は、すでに多くの製品が世に送り出されている。最も普及している製品は、日本でも「おくだけ充電」のサービス名で知られる「Qi(チー)」だ。電磁誘導方式では、充電台の特定の位置、例えばマークが書いてある場所に対応デバイスを合わせるといった必要はあるが、給電効率は高く、大容量バッテリーを搭載するスマートフォンでも、USBケーブルを差す場合と同様に充電できるレベルにまで達している。

「おくだけ充電」対応のスマートフォンのほか、「Apple Watch」のマグネット式充電なども、Qi規格に準拠している。推進する業界団体であるWPC(Wireless Power Consortium)には200社以上の企業が参加しており、すでに800以上の製品に採用されているという。

なお電磁誘導方式にはこのほか「Powermat」という技術もあり、こちらはアメリカのスターバックスの店舗で導入が進んでいる。ちなみに昨年発売されたサムスン製スマートフォン「Galaxy S6/S6 edge」は「Qi」と「Powermat」の両方に対応しているため、国内外でワイヤレスチャージができる。

○金属筐体のデバイスも充電可能な「WiPower」

「Qi」では拡張規格として磁気共鳴方式も採用しているが、その磁気共鳴方式で先行しているのが、クアルコム開発の「WiPower(Rezence)」だ。磁気共鳴方式では、電磁誘導方式のように充電台とデバイスを1対1で密着させる必要がなく、間に障害物があっても給電ができる。木のテーブルなどでも容易に組み込めるほか、1つの充電台でいくつものデバイスに充電可能だ。またクアルコムは、金属筐体のデバイスであってもワイヤレス給電を可能にする技術開発も行った。

実際にCESのクアルコムブースでも、充電台が組み込まれた木のテーブルの上で、金属筐体のスマートフォンを充電するデモを見ることができた。「iPhone」を筆頭に、最近は金属筐体を採用するデバイスが増えているため、金属があると充電ができない「Qi」に対しても優位な点となっている。

なお「WiPower」を推進する業界団体A4WP(Alliance for Wireless Power)は昨年、「Powermat」を推進するPMA(Power Matters Alliance)と合併している。新たにスタートしたAirFuel Allianceにはすでに195社が参加するなど、「Qi」のWPCと並ぶ2大業界勢力となっている。

今後は「WiPower」と「Powermat」の両団体の認証を受けた製品も登場する予定で、規格の標準化を巡る「Qi」との勢力争いがどうなるのか、今後の動きに注目が集まっている。

●放射型ワイヤレス給電の課題は「給電効率」
製品化が進んでいる非放射型の技術に比べると、「Cota」のような放射型のワイヤレス給電技術には、まだクリアしなければならない課題が多い。その1つが給電効率の問題だ。例えば「WattUp」という技術を開発する米Energous社は、5.8GHz帯を使用する送電機(トランスミッター)をCESに出展していた。

この送電機では15フィート(約4.6メートル)離れた製品にも給電できるが、距離が長くなれば給電効率が落ちるため、実際には5フィート(約1.5メートル)程度での使用を想定しているとのこと。0〜5フィートで4W、5〜10フィートで2W、10〜15フィートで1Wの送電というスペックシートだそうだ。

一方の「Cota」では、2.4GHz帯を使用して、約10メートル離れた場所に1Wの送電が可能となっている。Wi-Fiなどと同じ周波数帯を使用するため、レシーバー(受電チップ)さえ組み込めば、アンテナはWi-Fiと共用できる。しかし、給電効率を高めるためには専用の設計が必要になるという。放射型では、超音波を使って送電する米uBeam社の技術も注目されているが、こちらもやはり給電効率が大きな課題になっているようだ。

放射型のワイヤレス給電では人体への影響も懸念されるが、Ossia社は「Cota」がすでに米FCC(連邦通信委員会)準拠のテストをクリアしていることから、安全性は確認済みだとしている。あとは正式な認可が受けられれば、米国内で製品化できるものの、日本への導入にはまだ高いハードルがある。

「日本にはこうした放射型のワイヤレス給電に対する規制がなく、導入するためにはまず、法整備を働きかけるところから始めなければならない」(KDDI)

スマートフォンをはじめ、スマートウォッチのようなウェアラブル製品やスマートキーのようなIoT製品など、私たちの周りには今、毎日のように充電しなければいけないものがどんどん増えている。ワイヤレス給電はこうした充電の煩わしさから解放してくれる、まさに夢の技術だ。

先行する非放射型の技術の規格が統一され、より大きなデバイスでも使えるようになり、かつ放射型のワイヤレス給電技術も広く普及すれば、自宅で、クルマで、カフェで、PCからウェアラブルまで、電池の減りを意識せずに使える世の中がやってくるかもしれない。

規格の標準化や、技術革新による給電効率の向上、さらに国内の法整備の行方など、今後もワイヤレス給電の動向は注目すべき技術だろう。

(太田百合子)