クリントン元大統領からトロフィーを贈られたダフナー(Photo by Jeff Gross/Getty Images)

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 欧州ツアーのアブダビ選手権では、リッキー・ファウラーがミラクル・プレーを連発して勝利を掴んだ。7番でダブルボギーを喫した直後、8番ではグリーン30ヤード手前のバンカーから第3打をカップインさせるミラクル・イーグル。17番でもチップイン・バーディーを決め、2位に1打差で勝利を飾った。
勝負を決め、ガッツポーズをするダフナー
 「勝つためには運も必要」とは、選手たちがしばしば口にする言葉。ファウラーのボールがあちらこちらでカップに吸い込まれていった様子は、まさに運命の神様が味方をしていると思わされる場面だった。
 同じ日、米ツアーでも同じことが起こった。「勝つときは、そんなもんさ」とは、キャリア・ビルダー・チャレンジを制したジェイソン・ダフナーが口にした言葉だった。
 最終日を首位で迎えたダフナーは好プレーを続けていたが、デビッド・リングマースが猛追をかけ、16番のバーディーで単独首位へ躍り出た。が、ダフナーは慌てることなく16番でバーディーを奪って首位に並んだ。
 その直後の17番パー3。ダフナーのティショットは、ややフック回転がかかり、グリーンをヒット後、グリーン左の岩場へ転がり込んだ。ボールは大きな岩と岩の間。打てるのだろうかと心配になるほどのライだったが、ダフナーは器用に打ち出し、ボールはグリーン上を転がっていった。
 強めにフェースを入れざるを得なかったため、ボールの転がりにも勢いが付いていた。が、ピンに当たってうまくブレーキがかかり、50センチに止まった。ライからすれば、チップイン・バーディーを狙っていけるような状況では無かったし、ピンに当てて勢いを止めようなんて離れワザに挑める状況でもなかった。が、あらゆる可能性を信じ、奇跡さえ起こそうと願いながら挑んだダフナーの第2打は、運よくピンに当たり、ピンのすぐそばで止まってくれた。
「(ウエッジを)短く握り、フェースを開いてガツンと打った、うまく出て転がってくれた」。パーを拾い、窮地を逃れたダフナーはリングマースとのプレーオフに突入し、2ホール目で勝利を決めた。
 プレーオフ1ホール目もダフナーはティショットをフェアウエイバンカーに入れ、ピンチに陥った。が、冷静にフェアウエイへ出し、3打目をピン2メートルに付け、パーパットを捻じ込んで次ホールへとつなげた。その第3打もミラクルショットとまでは言わないが、プレーオフという状況下であることを思えば、奇跡に近い出来栄えだった。そして、プレーオフ2ホール目は池に落としたリングマースの自滅により、ダフナーの勝利。
「勝つときは、そんなもんさ」。ダフナーの言葉には「運が味方してくれた」という意味合いが込められていた。
 38歳で挙げた米ツアー4勝目。2013年の全米プロ以来の優勝となった。振り返れば、あの全米プロの優勝トロフィーを本当に抱いたまま寝ているダフナーの写真が大きな話題になったあのころの彼は絶好調で幸せで輝いていた。
 だが、翌年から故障と不調に悩まされ、あの愛らしい写真をSNSで発信した美人妻アマンダとは離婚に至った。アマンダとタイガー・ウッズの噂も浮上したが、真相はわからず、離婚の理由もいまだに明かされていない。
 トレーニングとダイエットで全米プロ優勝当時とは別人のようなすっきり体型になっているダフナーは、体重の激変同様、人生の山も谷も経験したが、「気持ちは常にポジティブで」を目標に掲げ、歯を食いしばってきた。
 このオフはひっそりと猛練習を重ね、自らの復活と勝利を目指してきた。ミラクルのようなリカバリーの数々を眺めれば、運が味方してくれたと思えるけれど、ダフナーは勝つべくして勝ったのだ。ファウラー、然り。
 「優勝には運も必要」だ。しかし、それはあくまでも「運も」であって、「運が」絶対的に必要なわけではない。絶対的に必要なものは、勝ちたいと願う気持ちと、そのための努力。それが揃ったとき、運が初めて味方してくれる。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
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