藻谷浩介・日本総合研究所調査部主席研究員が講演し、アベノミクスの異次元緩和によってバブル期(1980年代後半)の8倍もの日銀資金が投じられ、時価総額は既に同額に達していると強調した上で、歴史に学べば、株価の長期大幅下落につながると警告した。

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2016年1月24日、藻谷浩介・日本総合研究所調査部主席研究員は、日本記者クラブで講演した。安倍政権の経済政策であるアベノミクスに触れ、「金融緩和による株高は日本の国内総生産(GDP)の拡大につながらない」と指摘。異次元緩和によってバブル期(1980年代後半)の8倍もの日銀資金が投じられ、時価総額は既に同額に達していると強調した上で、歴史に学べば、株価の長期大幅下落につながると警告した。

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藻谷氏は人口動態を基に日本経済を分析、「デフレの正体」「里山資本主義」などベストセラー書を刊行している。発言要旨は次の通り。

アベノミクスが謳う、株価が上がれば資産効果が生まれ国内総生産(GDP)が上昇するというのは間違い。歴史的国際的に見ても、ごく一時期の米国を除き効果を上げていない。株高は日本のGDPの大半を占める個人消費に影響を与えておらず、15年の個人消費は約280兆円で、株高となった3年前から横ばいだ。

アベノミクス異次元の金融緩和により、昨年各月末平均のマネタリーベース残高は313兆円に膨らんだ。日経平均が約4万円に達したピーク時(1989年末)は34兆円だったから、実に8倍も資金をつぎ込んだ計算だ。現在の金融緩和がいかに異常な状態か分かる。

15年の東証株時価総額は569兆円に達し、既に1989年前後のバブル時代や、リーマンショック前のITバブル時代と同レベルに達している。前2回のバブル後、何が起きたか。「賢者は歴史に学ぶ」と言われるが、歴史(株価長期大幅下落)を学ばなければならない。

15〜64歳の生産年齢人口が1996年を境に減少し、内需の縮小が避けられない。こうした状況下では、アベノミクスの異次元緩和はGDP上昇につながらない。日本のGDPは民主党政権下の2012年に実質1.7%だったが、15年には0.6%に鈍化している。

日本企業は生産年齢人口が減り始めた90年代半ばに、人件費の総額を減らすという方向で調整したが、GDPを増やすためには賃金引き上げと女性の労働参画が欠かせない。

「東京を中心とする大都市は元気で地方は衰退」といった見方は一面的で、実態としては首都圏のジリ貧も明白である。

高齢者の激増と生産年齢人口の縮小という、避けられない現実に対して、金融緩和によるインフレ誘導や公共投資といった従来型の政策では成果を上げらない。発想を転換する必要がある。(八牧浩行)