そうした理想的な展開となったのが、延長戦で3ゴールを奪って仕留めたイラン戦だったのだ。
 
 チームを活性化させているもうひとつの理由は、指揮官のローテーションによる采配である。グループステージでメンバーをローテーションさせたばかりか、負ければ終わりとなる準々決勝でも、メンバーを入れ替えることにためらいはなかった。
 
 イラン戦ではザルツブルクに所属する南野拓実は最後までピッチの外から戦況を見守った。最初にピッチを去ったのは、ヤングボーイズでプレーする久保裕也だった。アンタッチャブルな存在はなく、誰かに頼るチームではない。この先、誰もスタメンは保証されていない――それが選手全員のモチベーションと競争意識、一体感を高めている。
 
 2試合連続してスタメンに抜擢されたオナイウ阿道が言う。
「誰がスタメンになるか分からない。僕はいつでもいけるように準備していたし、みんなも誰が出てもしっかりやれていたと思います」
 
 手倉森監督は大会が始まる前、こんな風に言っていた。
「このチームは国際経験の少ない集団だから、勝ちながら経験を積んでいくしかない」
 まさに今、U-23日本代表は試合を追うごとに逞しさを増している。
 
取材・文:飯尾篤史(サッカーライター)