世話になった上司が起業する。会社を辞めてついていくべきか?
【石原壮一郎の名言に訊け】〜中居正広の巻

Q:どっかのアイドルグループの独立騒動がありましたけど、自分もまさにそういう状況に置かれています。入社以来、自分を育ててくれた恩人の上司が、会社を辞めて起業することになりました。どうやら派閥争いに負けて追い出されるようです。その上司から「いっしょにやらないか。お前の力が必要だ」と誘われているんですが、どうすべきか迷っていて決められません。何を基準に判断すればいいんでしょう。(愛知県・29歳・広告)

A:どっかのアイドルグループの騒動、すごかったですね。いやまあ、このコーナーとは関係ありませんけど。と言いつつ、喫茶「いしはら」のカウンターには、微妙に関係ありそうな方が座ってます。町内一のジャ○オタであの件以来ゲッソリやつれている恭子さんに、たぶん人ごととは思えないであろうこの悩みに答えてもらいましょう。

 解散しないことになったのは嬉しいけど、彼らにとって本当にそれでよかったのかしら。メンバー同士の関係とか事務所との関係とか、大丈夫なのかしら。テレビでコントを見せてくれたとして、こっちも今までと同じように笑えるのかしら。ああ、心配だわ……。

 今は彼らのことで頭がいっぱいで、それ以外のことはどうでもいいわよ。えっ、辞める上司についていくか会社に残るか、迷ってるですって。やりたいようにやりなさいよ。あなたの業界は芸能界と違って、会社を飛び出したからって干されるわけじゃないんでしょ。じゃあ、どっちでもいいじゃない。

 あのね、今までの話の流れとは関係なく、あくまで「ちなみに」だけど、SMAPっていう人気グループのリーダーの中居正広クンが、前にこんなこと言ってたわ。

「正解なんて無いから、まわりからどう思われているかより自分がどうあるべきなのかを考えたほうが、どう転んでも後悔しないはず。やっぱ反省はしても後悔はしたくないから」

 今ごろ反省してるのかな……後悔してるのかな……。悪いことしたわけじゃないんだから、反省も後悔もしててほしくないわね。なのにさらし者にされてさ……。あら、また話がそれちゃった。だから、あなたは胸に手を当てて、どっちが「こうありたいと思う生き方」なのか、どっちが「後悔しなさそうな道」なのかを考えればいいんじゃないの。その上司をどれだけ信頼しているのかが、大事なポイントになりそうだけどね。

 えっ、もし失敗したらどうするかって。そんなの、今の会社のほうが先になくなる可能性だってあるわけでしょ。まだ若いんだから多少つまづいたってどうにでもなるし、自分が選んだ道を「正解」にしてやるって気持ちを持ちなさいよ。中居クンはね、こんなことも言ってるのよ。「僕は極限まで追い詰められたとき、『そう簡単にくたばらないぞ』っていう言葉を胸にいつも必死にはい上がってきた」

 あくまで「ちなみに」だけど、あのグループのメンバーも、きっとそう思っているはずよ。このままくたばる彼らじゃないわよ。どんなはい上がり方を見せてくれるのか、彼らから目を離せないわね。あら、失礼。アイドルのインタビュー記事の読み過ぎでこんな口調になっちゃったわ。ついでみたいで申し訳ないけど、あなたもがんばってね。

【今回の大人メソッド】
◆「客観的な判断」なんてしょせんは幻想である

 仕事にせよ結婚にせよ、私たちは人生の中で時々「重要な選択」を迫られます。そのときに「客観的な判断」をしようとしても、なかなか答えは出ません。まだ起きていないことを客観的に判断するなんて、そもそも無理な話。「自分がどうしたいか」「自分はどっちが楽しそうか」といった主観を信じて判断するのが、たぶん自分にとっての「正解」です。

【相談募集中!】ツイッターで石原壮一郎さんのアカウント(@otonaryoku )に、簡単な相談内容を書いて呼びかけてください。

いしはら・そういちろう/フリーライター、コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』(扶桑社)でデビュー。以来、さまざまなメディアで活躍し、日本の大人シーンを牽引している。『大人力検定』(文春文庫PLUS)、『大人の当たり前メソッド』(成美文庫)など著書多数。近年は地元の名物である伊勢うどんを精力的に応援。2013年には「伊勢うどん大使」に就任し、世界初の伊勢うどん本『食べるパワースポット[伊勢うどん]全国制覇への道』(扶桑社)も上梓。最新刊は、定番の悩みにさまざまな賢人が答える画期的な一冊『日本人の人生相談』(ワニブックス)