登録メンバーをフル活用しながら乗り切っている感もある手倉森監督の采配。イラン戦でもスタメンの選考、終盤の交代策などで冴えを見せた。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

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 この年代にとって“鬼門”と呼べる準々決勝ではやはり苦しい戦いが待っていた。
 
 試合開始直後の1分には1トップのモタハリに単独突破を許すと、36分には再びモタハリに決定的なシュートを放たれる。後半になっても流れは変わらず、60分にはミラドにクロスバー直撃のシュートを打たれた。
 
 日本は局面で身体を張るものの、高いテクニックを見せるイランの選手を捕まえ切れず、耐える時間を長く強いられた。
 
 それでも「イランの時間帯が長く、我慢する展開になったが、相手が勢いを持ってくるのは分かっていたので、失点をしないことだけを考えた。イランがどこかで落ちるっていう予想も含めて我慢比べに勝てたのが大きい。厳しい戦いになるのは覚悟していたので、そこは割り切れた」と、最後の一線は越えさせず、プラン通りの終盤勝負へ持ち込めたとキャプテンの遠藤は語る。
 
 そして勝利のシナリオを完成させたのは、ほかの誰でもない手倉森監督だった。
 
 指揮官はこの試合で82分までスーパーサブの浅野の投入を延ばした。その背景には「後半勝負のところで、イランがもっと(スペースが)空いてくるのかなって思っていたら、空かなかった。延長でようやく落ちた感じになりました」と遠藤が語ったように、イランの予想外の粘りがあった。もし焦れて先にカードを切っていれば、まだ余力のあったイランDFに潰されて勢いを失い、反撃の芽が潰えていた可能性があっただろう。
 
 しかしタイミングを見計らって浅野を投入すると、85分には豊川もピッチへ。疲れが見え始めたイランに対して一気に攻勢をかけた。そして延長戦に突入してからの96分に豊川が劇的な先制弾を奪い、中島が2ゴールと続く。チーム発足から撥ね返され続けてきたベスト8の壁を、ついに突破してみせた。

 
 今予選、手倉森監督の采配は冴えに冴えている。初戦の北朝鮮戦では、「奈良とどちらを起用するか迷っていた」という植田をCBで先発させると、その植田が決勝ゴールをマーク。続くタイ戦では先発起用した矢島がゴールを決め、70分から途中出場させた久保も2得点と結果を残した。さらに3戦目のサウジアラビア戦でも先発起用の井手口がゴールを挙げている。
 
「日本のサッカー界を支える選手たちを鍛えあげたいなと、全員を使う気持ちでこの大会に来ました」とグループリーグでは、フィールドプレーヤー20人全員を起用した点もチームに好影響を与えた。各選手の体力消費を抑え、コンディションを整えさせたことで、イラン戦では終盤勝負という策も練れた。
 
 またイラン戦で先制弾を挙げた豊川は元々、切り札としてではなく、先発起用を考えていたという。「スタメンは各ポジションでヘディングが強い選手を選んだ。(イランの)高さが恐かったので。そのため前日の段階では、先発は中島じゃなく豊川にしていた。でも試合日の朝『あまりにも高さを恐がって相手に合わせすぎたら、勝ち運にも見放されるのではないか』と、一瞬の閃きで決めました」と明かす。
 
 この決断が勝敗に直結するのだから、まさにその采配は神懸っているとしか言いようがない。
 
 ただし、ここまでの4試合、選手起用でやりくりをしてきたとはいえ、相手のフィニッシュ精度の低さに助けられた部分も少なからずあった。たらればの話になってしまうが、もしイラン戦で先手を取られていたら、まったく別のゲームになっていたはずだ。
 
 そう考えると、まだまだ安心などできない。リオ五輪出まであと1勝(準決勝もしくは3位決定戦で勝利すれば決定)のところまでは来たが、苦しい戦いはこれからも続きそうだ。
 
 準決勝の相手はイラク対UEAの勝者となる(試合は日本時間1月24日の深夜1時半から)。
 
 指揮官は準決勝へ向け「まずしっかり回復し、対戦相手の分析をしないといけない。ただ、チームには勢いがある。それを持続できるような戦い方に持ち込みたい」と話す。また、イラン戦の先発メンバーは「先のことも考えてのオーダー」だったという。
 
 勝負師・手倉森監督が準決勝ではどんな顔ぶれをスタメンに選んでくるのか。そのメンバーリストを見る瞬間が待ち遠しくなってきた。
 
取材・文:本田健介(サッカーダイジェスト編集部)