脳卒中には、脳出血や、くも膜下出血といった血管が破れるものと、脳梗塞など血管が詰まるものとの2種類がある。
 日本ではかつて脳出血が多かったが、主な原因となる高血圧の管理が進み、栄養状態も良くなり血管が破れにくくなったことで、その割合が下がった。しかし、一方で増えたのが、脂質異常や糖尿病の人に多い脳梗塞。現在では、脳卒中のうちの約60%が脳梗塞となっている。
 脳梗塞は、脳の血管が詰まって発症するが、動脈硬化と、不整脈など心臓が原因のものに大きく分けられる。後者については、心臓の上部にある心房(左房にある肺静脈付近)が、痙攣したように激しく動く心房細動を起こし、それが一つの引き金となっていることが分かっている。

 こんな例がある。東京・杉並区の男性(68)は昨年11月、銀行で用事を済ませ外に出た際に、足元がふらつき上手く歩けなくなり、道端にしゃがみ込んでしまったという。ふらつきは数分間で収まり、普通に歩けるようになった。しかし、1週間後、今度は自宅で倒れたのだ。
 今度は喋ることもできず、右手と右足が動かない。家族に付き添われ大学病院に行ったところ、診断結果は脳梗塞で、直ちに治療が始まった。検査の結果、この男性の場合も心房細動を起こしていたという。
 「重症化せずに済んだのは、心臓が原因と分かり、血液が固まるのを防ぐ抗凝固薬を適切に使うことができたからです」
 と、治療にあたった神経内科の教授は語っている。

 発症後、早めの治療だったことに加え、幸い詰まった血管が細く悪影響があまり広がらなかった。そうしたことから、この男性は軽い会話ができる程度までに回復し、治療経過も順調で12月上旬には退院できた。
 男性は、話し方に多少の後遺症を残しながらも「健診も受けて健康には自信があった。よもや自分が脳梗塞になるとは思わなかった」と語っている。

 この、脳梗塞を引き起こす原因で最も怖い心房細動は、心臓で血液がよどみ、流れにムラができて固まりやすくなる状況で起きる。
 ある脳神経外科医は、こう説明する。
 「血の固まり(血栓)が血管の中を通って脳に運ばれ、脳梗塞を起こすのです。血栓は時に指先ぐらいの大きさになることもあります。これが脳の太い血管を塞ぐと重症化する。心房細動は、突然発症するとドキドキする、気持ちが悪くなるなどの症状が出ることもありますが、慢性になると気が付かない場合も多い。健康診断の心電図で偶然、発見されることもあるほどです」

 これにより脳梗塞を発症すると、7〜8人に1人は死亡すると言われている。
 「つまり、いかにして脳梗塞を防ぐかが、心房細動の治療の最重要ポイントになります」
 と語るのは、都立多摩総合医療センター・心臓血管外科の大塚俊哉部長だ。