治療法は確立されているが、厄介な「梅毒」。写真は原因となる梅毒トレポネーマ(C)Susan Lindsley, CDC

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梅毒の増加が止まらない。国立感染症研究所によると、報告数は、2015年12月27日までで累計2638件となっており、 昨年同時期の約1.5倍だ。

1960年代までは日本を含め世界で流行していたが、治療法の確立によって減少しているといわれていた。実際、日本でも1999〜2012年の報告数は平均500件程度だったが、2013年に1228件、2014年は1683件とハイペースで増加している。

止めるのが難しい「性感染症」

梅毒は主に性交渉によって感染する性感染症だが、治療法が確立されている疾患がなぜ、今増加しているのだろうか。

神戸大学感染症内科教授の岩田健太郎医師は、「今の段階では、なぜ梅毒が急激に増加しているのか正確にはわからない」と語る。若年層間での性交渉の割合や、不特定多数との性交渉の増加、性産業の複雑化など、さまざまな要因をあげる声はあるが、梅毒との関係が調査されたわけではなく、推測にとどまる。

国立感染症研究所の発生動向調査では、男性は25〜39歳での発生率が高く、主に同性間の性的接触が原因。女性は20〜29歳、異性間が多く、男性間での流行が波及している可能性があるとしているものの、増加の理由については言及していない。

「性感染症は感染経路が明確なので、理論上は経路遮断、つまり性交渉をしない、セーフティーセックスを意識する、といった方法で止められるはずです」(岩田医師)

コンドームの使用で、100%ではないが梅毒を予防できるというエビデンスも存在する。しかし、性行為には知識や理性以外も大きく作用する。悲しいことに、わかっていても確実には予防できないというわけだ。

「梅毒に限らず、現実には、性感染症をコントロールするのは非常に難しいのです」(岩田医師)

とはいえ、放置するわけにもいかないだろう。梅毒はきちんと診断されていれば、治療も比較的容易とされているが、診断が遅れてしまうと神経梅毒などを発症し、後遺症が残る可能性もある。また、妊娠中に感染してしまうと、生まれてくる子どもが先天梅毒となるリスクもある。すでに、2014年度には4例の先天梅毒が確認されているのだ。

発症するまで検査できない? 早期検査もあるが...

では、梅毒に感染してしまったかどうかは、どうすればわかるのか。皮膚科専門医として梅毒の症状も診断してきた、アンチエイジング医師団の山田秀和医師は、皮膚に現れる特徴的な症状から判断できるという。

「3週間3か月3年、というのが有名です。まず、感染から3週間程度で、感染部位(主に性器)に痛みのない小豆大のしこりができたり、リンパ節が腫れたりします。ときにはしこりが潰瘍になりますが、自然に治ってしまいます」(山田医師)

「1期梅毒」といわれるこの時点では、そもそもあまり目立った症状として出ないこともあり、気がつくのは難しい場合が多い。国立感染症研究所の発生動向調査でも、早期に無症状の患者が多くなっているとされていた。

3か月ほどすると、「2期梅毒」となり、皮膚に「バラ疹(2期疹)」と呼ばれる5〜20ミリ程度の赤い発疹が出てくる。バラ疹は手足の平に出てくることもある。「さらに脱毛、発熱、疲労倦怠感、全身のリンパ節が腫れるなどの症状をともないます。バラ疹もしばらくすると消えてしまい、放置すると『3期梅毒』といわれる状態になります」(山田医師)

そこまで悪化させない確実な方法は、皮膚科や性病科、泌尿器科、産婦人科(婦人科)、地域の保健所などで受けられる「梅毒血清検査」だが、検査にもいくつか注意が必要だ。

まず、早期検査として実施される「STS法(脂質抗原検査)」は、実際には感染していないのに陽性と判定されてしまう、「偽陽性」が起きることがある。アンチエイジング医師団の一人、AAC銀座クリニック院長の浜中聡子医師によると、輸血もしておらず、やましいこともないのにと、偽陽性に混乱して診察に訪れる患者もいるという。

また、そもそも血液検査は、1期梅毒の早期発見には向いていないとされる。皮疹などがでる2期梅毒以降は、STS法とTPHA法といった複数の血液検査を組み合わせ、診断できる。[監修:岩田健太郎 神戸大学感染症内科教授、山田秀和 近畿大学医学部奈良病院皮膚科教授]

(Aging Style)