■木村和司が我がまま申す vol.11

サッカー解説者の木村和司氏が、サッカー界のあらゆる出来事について、独自の視点でモノ申していく、好評コラムが久しぶりに復活。今回は、リオ五輪アジア最終予選に挑んでいるU−23日本代表の戦いぶりについて話をうかがった――。

―― U−23日本代表がリオ五輪出場を目指してアジア最終予選に挑んでいます。グループリーグ初戦の北朝鮮戦を1−0で勝って、2戦目のタイ戦では4−0と快勝。大会前は不安を囁かれていましたが、2戦を終えて早々に決勝トーナメント進出を決めました。そして、最終戦のサウジアラビア戦も2−1と勝利して3連勝。その戦いぶりをご覧になっていかがですか。

木村:ひどいな。正直、びっくりしたのぉ。

―― 「ひどい」......ですか?

木村:特に初戦の北朝鮮戦はひどかった。"勝った"だけよ。大事な大会の初戦で、選手たちが緊張していたのもあるかもしれんが、見るべきものは何もなかった。ガチガチに守って、ただ蹴っているだけ。なんやこのサッカー、勘弁してくれって思ったわ(笑)。

 もちろん、代表というのは結果が最優先されるべきだし、何より今回はリオ五輪の出場切符獲得という大事な使命があることもわかる。だとしても、U−23代表というのは、まだ上、A代表があるわけよ。それなら、もっとそこにつながるようなサッカーをして、A代表でも戦えるような選手を育てることも考えんといけんよのぉ。そうした要素が、少しでも見られたか? 見られんかったじゃろ。

 本来であれば、日本代表の"下部チーム"でもあるU−23代表は、そのトップチームであるA代表のサッカーというか、そのコンセプトを理解して、同様のサッカーを目指してやっていくべきだと思うわけよ。でも、U−23代表のサッカーからは、A代表のやろうとしているサッカーとか、その狙いとか、何ひとつ見られんかったよのぉ。

―― 実際、U−23代表のシステムは4−4−2。4−2−3−1をベースとしているA代表とは違っていました。

木村:それだけでも、上とのつながりを何も考えていない証拠じゃろ。それは、Jリーグでもよくある話。サンフレッチェ広島とか、鹿島アントラーズとか、チームのコンセプトがきちんと確立されているクラブ以外は、ユースとトップチームとがまったく違うサッカーをやっていることがある。それって、明らかにおかしな話よのぉ。今のU−23代表は、まさにそれと同じで、何を考えているのか、ようわからん。

―― それでも、2戦目、3戦目もあっさりと勝利を飾りました。

木村:2戦目のタイ戦にしても、やっているサッカーは北朝鮮戦のときと大差なかった。4−0で勝ったけど、それぞれのゴールにこれといったチームとしての意図、狙いのようなものは感じられなかった。相手が相手だから、結果として4ゴール奪えただけ。

 3戦目のサウジアラビア戦にしてもそう。自分たちのサッカーというものがないから、相手のシステムに合わせて、相手のよさを消すサッカーに徹して勝ったに過ぎない。攻撃でも、1対1の関係だけで、ふたり目、3人目の選手が絡んでくるシーンはほとんど見られんかった。

 それに、勝っても負けても大勢に影響がない日本と、勝たなければいけないサウジアラビアでは、心理的な差があったよのぉ。日本も切羽詰まった状態だったら、あそこまで落ち着いてプレーできんかったじゃろ。逆の結果になっていた可能性は十分あるわのぉ。

―― 確かに日本の攻撃を見ていると、"行き当たりばったり"といった印象を受けました。

木村:ほんと、そうよ。ただ前にボールを蹴り出すだけで、何の狙いも感じられない。北朝鮮戦では、相手と同じようなサッカーをして、単にボールを蹴って、前でがんばって......と、戦術も何もない。ずっとそうしたコンセプトでやってきた北朝鮮のほうがまだマシで、そんなサッカーをやり慣れている分、日本よりも多くのチャンスを作って、いいサポートができていた。昨年夏の東アジアカップの際に抑え切れなかった大型FWパク・ヒョンイルがおったら、おそらく負けとったんじゃないかのぉ。

 アジア予選を突破することは大事じゃけど、それだけじゃないでしょ、ってこと。日本サッカーは、世界の上位を目指していくわけじゃろ。そうしたら、そこで戦えるようなサッカーをやっていかないといけんと思うで。もしも今、「日本のサッカーってどんなサッカー」って問われたら、ワシからは何とも説明できんな。「ただ勝つことだけを考えて、一生懸命やるサッカー」って言うしかないんかのぉ......。

 他のチーム、例えば韓国なんかは、彼らが意図するサッカーが見えたというか、ちゃんと狙いのあるサッカーをしていた。1タッチ、2タッチでパスを回して、スムーズにボールを運びながら決定機を生み出していた。攻守において連動性もあって、それこそ、上につながるサッカーをしているな、と感じたよ。

 それに比べて日本は......。U−23ということを考えれば、ただ勝てばいいってものじゃないと思うんだけどな......。やっぱり、たとえ予選であっても、狙いを持ってやるべき。その狙い、日本のサッカーというものを徹底してやっていって、それができたかどうかが大事なんじゃないんかのぉ。

 そして、大会が終わったときに、それができたから「予選を突破した」、それができなかったから「予選で敗退した」という形になるのが理想よ。そうすれば、予選を突破できなかったとしても、その原因が見つけやすいし、何を強化していけばいいか、ということも分析しやすい。当然その結果が、今後の代表の強化、A代表にもつながっていく。

 でも、今のままでは「勝った」「負けた」という結果が残るだけよ。勝てばまだ、五輪に出場できるからいいかもしれないが、負けたら何も残らない。A代表とはまったく違うサッカーをやっているので、選手たちの評価もできないし、彼らの経験が上にもつながらんのじゃないかのぉ。

―― 世間的には、早々に決勝トーナメント進出を決めて楽観ムードですが、決してそうとは言えないわけですね。

木村:心配だらけ。一発勝負の決勝トーナメントに入って、準々決勝であっさりやられてもおかしくない。このまま狙いのない、目指すものがないサッカーをしていくのかと思うと、不安ばかりよ。日本のサッカーと言えば、ちょっと前まではボールを大事にして、人とボールがうまく連動して動いてゴールを狙っていく、という狙いがあったけど、U−23代表のサッカーは何がある? 蹴って、前に行って、ボールを保持する地域を挽回するだけ。サッカーは、陣取り合戦じゃないじゃろ?

 だから、U−23代表のサッカーを見ていると、日本のサッカーは、進化しているんじゃなくて、退化しているように感じる。このままじゃあ、日本サッカーの未来は暗いのぉ......。

text by Sportiva