若いころからの運動は、心にも効く

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最近、「太目の方が長生きする」などという研究があり、「肥満でも健康なら良い」とする考え方がもてはやされている。ところが、これを真っ向から否定する「肥満は早死にする」という大規模な調査をもとにした研究が発表された。

スウェーデンのウメオ大学のチームが、国際疫学雑誌「IJE」(電子版)2015年12月20日号に論文を掲載した。

「運動能力高い肥満」は「運動能力低い標準体重」より悪い

研究チームが対象にしたのは、1969〜1996年に徴兵検査を受けたスウェーデンの男性131万7713人(検査時の平均年齢18歳)。同国では2010年に廃止するまで徴兵制度(男子のみ)があり、徴兵検査時の健康データはしっかり保存されており、対象者を平均29年間追跡調査した。対象者は、2016年時点で30代後半〜60代後半だ。

チームは、「健康なら肥満でも長生きするかどうか」を調べるため、「健康度」の基準に、徴兵検査時に全員が測定する自転車こぎによる有酸素運動能力の数値を参考にした。有酸素運動能力を「高い」「低い」の2つのグループに分けた。また、対象者全員の肥満度を測る指数にBMI(体格指数)を使った。

調査期間中に4万4301人が死亡した。対象者は、60代以下の比較的若い層が多いこともあって、主な死因は多い順に「事故死(アルコール・薬物中毒を含む)」「がん」「心血管疾患」「自殺」などだった。

その結果、次のことがわかった。

(1)標準体重の人のグループ内では、有酸素運動能力が高い人は、低い人より死亡リスクは34%低い。このリスク減少は、肥満の人のグループ内では26%になるが、肥満の度合いが進むにつれて差が小さくなる。つまり、肥満になればなるほど、運動能力が高くても死亡率は下がらないのだ。

(2)肥満だが運動能力が高い人は、標準体重だが運動能力が低い人に比べると、死亡リスクが30%高い。つまり、たとえ運動能力が高くて健康でも肥満の人は、運動能力の低い不健康な標準体重の人より長生きしないのだ。

(3)体重に関係なく、運動能力の低い人は、自殺や事故死(アルコール・薬物中毒)による死亡リスクが非常に高くなる。その度合いは、がんや心血管疾患による死亡率より高い。

若いころからの運動は、うつやアルコール依存症にも効く

以上の結果から、ウメオ大学のガブリエル・ホグストロム教授は「『肥満でも健康なら良い』という考え方が間違いであることが示されました。早死にするリスクを下げるためには、青年期から標準体重を維持することが重要です」と語っている。

しかし、3点目の結果は意外だったようで、同教授は「早死にする大きな原因に自殺や事故死がありますが、有酸素運動はうつ病やアルコール依存症などの心の病の改善にも大事だとわかりました。逆にいえば、青年期に飲酒量が多かったから、徴兵検査当時の有酸素運動能力が低かったこともあるかもしれません」と語っている。