クロールで泳ぐ際の手部の軌跡と局面を示した図(筑波大学の発表資料より)

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 筑波大学の高木英樹教授らによる研究グループは、最先端の流体計測解析技術を水泳のクロールに適用し、最適な泳ぎ方のメカニズムを解明した。

 水泳の泳ぎ方については、どうやって水をかけば効率よく推進力が得られるのか、長年に渡る研究にも関わらず、未だ結論は出ていない。特に、S字を描くように曲線的に水をかくのと、I字を描くように直線的に水をかくのとではどちらが有利なのかは、現在でも論争が続いている。

 今回の研究では、水泳人体シミュレーションモデル(SWUM)を用いて、ヒトの筋出力特性を考慮した最適泳法シミュレーションを行った。その結果、最も少ない身体発揮パワーで効率よく推進力が得られる泳ぎ方は、肘を曲げて、指先が曲線を描く、S字ストロークに類似した泳法であることがわかった。一方、最も速度が高くなる泳ぎ方は、肘をあまり曲げずに、指先が直線的に移動するI字ストロークに類似した泳法であることがわかっている(Nakashima et al., 2012)。

 さらに、ヒトの泳動作を再現できる水泳ロボットを用い、手部における流体力、圧力分布、流れ場の計測を行った研究成果(Takagi et al., 2014)をもとに検証を行った結果、S字のように曲線を描いて水をかくと、手の進行方向が変わる局面において渦が放出され、その渦の影響によって手部周りの循環渦の向きが逆転し、手背側の圧力が急激に低下して瞬間的に大きな揚力が発生することが明らかになった。

 一方、I字のように直線的に水をかくと、手部の両サイドから交互に渦が放出され、手背側の圧力が低下するとともに、手掌側は水が当たって圧力が上昇するので、結果的に手掌と手背で圧力差が生じ、抗力が発生することが明らかになった。

 研究グループは今後、今回の研究を発展させて、体格、筋力、テクニック個人差といった個人差を考慮し、特定のスイマーにとって最適な泳法はどうあるべきか個別に対応できるように検討を進めるという。また、ヒトの水泳運動は非定常で非常に複雑な流体現象といえるが、最新の流体計測・解析技術を用いて、このメカニズムのさらなる解明に取り組む予定という。

 なお、この内容は「Journal of Sports Sciences」に掲載された。論文タイトルは、「Numerical and experimental investigations of human swimming motions」(和訳:水泳運動を対象とした数値的・実験的解析結果についての考察)。