アレの優勝は半ばもうナイと諦観を抱く中、せめて「優勝」の喝采だけでも送りたい。優勝するのが琴奨菊だとしても…。
選ばれし者だったのに!

望んでいたはずの決着を見て、何故こんなにも口惜しくなるのだろう。日本出身力士が賜杯から遠ざかって10年。何も国籍でケチつけようなんて了見ではないけれど、いくらなんでも長すぎる。開催国が盛り上げのひとつもできないんじゃ、つまらない。誰でもいいからとにかく1回優勝しろ。誰でもいいから。そう思っていた、はずだった。

期待を懸けるべき男はすぐに見つかった。若く、たくましく、記録的なスピードで番付を駆け上がってきた。「足りている」ことに疑いはなかった。特に左からのおっつけに秀でたものがあり、その剛腕にかかれば稀代の名横綱ですら飛ばされるほど。右上手を取って左四つとなればまっこと横綱級のチカラがある。繰り出す寄りは、相手を静かに土俵の外に出させる無類の圧力がある。強さに疑いはない。

横綱になると思った。優勝すると思った。しないはずがないと思った。若くて強いヤツが優勝しないはずがない。実際に何度もチャンスはあった。2012年から2013年にかけては10場所連続で2ケタ勝利を記録した。体力・技能・経験が伴い、充実していた。ほんの少し、ほんの少しだけ噛み合えば、優勝できるチカラがあった。琴欧洲や把瑠都だって1回は優勝できたんだ。噛み合えさえすればできる。残り4日で星2つのリードから引っくり返された悪夢の場所を越えても、何の疑いも持たなかった。

だが、噛み合わない。世界が噛み合おうとすれば、自らそれを拒むように後退し、決して噛み合うことがない。今より強くなれなくてもいいんだ。勝てる相手に全部勝って、ライバルがひとつかふたつヘマすればいいだけだろう。アイツにもコイツにも勝ってるじゃないか。それを一場所に集めろと言っているだけだぞ。何でできないんだ。勝てない相手は誰もいないだろう。何で一場所に揃わないんだ。

平成二十八年大相撲初場所十一日目。大関・琴奨菊がともに全勝で並ぶ横綱・白鵬を下し、優勝争いの単独首位に立ちました。初日からの十一連勝は初めてのことで、白鵬に勝ったのはこれで通算5回目。大きなヤマを越えて、優勝へと大きく近づきました。残るライバル日馬富士に勝てば、上位勢との取組は負け越し目前の豪栄道のみ。残り4日が「日馬富士、豪栄道、栃煌山、逸ノ城(?)」なら1敗で乗り切るのは難しくない。星の差、守れる。

「琴奨菊が優勝してしまうのか…!?」

喜びがこみあげてもよさそうなのに、どうして目を逸らしたくなるのか。アレのせいだ。何故、アレじゃないんだ。何故、アレがこうなっていないんだ。10年の断絶を埋めて、日本の大相撲をつなぐ英雄がアレ以外の力士だなんて。千秋楽の切符を握りながら、賜杯を抱く琴奨菊を想うと、言いようのない辛さが胸をいっぱいにしていく。琴奨菊にだってこんな場所があるのに、アレはどうして。どうして。

千秋楽、アレは土俵下で他人の栄光を見つめ、力水でもつけるのか。見ちゃおれん。そんなんじゃない。日本出身力士の優勝なんてどうでもいい。ただアレに勝たせたかったんだ。アレが持てるチカラを一場所に集め、高速で瞬きしながら涙を流すところをただただ見たかった。賜杯を抱く姿が見たかった。そしてまた綱取りに失敗するところを見たかった。優勝額が一周する間、国技館に行くたびに「あの場所はさぁ」「翌場所がさぁ」「アレは笑ったよなぁ」と昔話をしたかった。

残り4日、アレは白鵬、日馬富士との取組を残しています。千秋楽は日馬富士と白鵬が結びでしょうから、十三日目と十四日目に戦うことになるでしょう。せめて、勝て。もし琴奨菊が全勝を守っていれば、アレの勝ちで優勝が決まる可能性がある。もう、自分のための優勝はしないんだろうと半ば覚悟はできている。だから溜めこんだ喜びと歓声をもうここで使ってしまおうと思う。アレの寄りに横綱が屈したとき、万感の想いを込めて「よくやった、優勝だ!!」と。

夢に見たのとほとんど同じ光景の、違う結果に向かって。

せめて、喝采だけでも送りたい。

◆「日本出身力士うんぬん」を終わらせろ!今こそアレのチカラで!

琴奨菊は強くなっていました。この年でまだ強くなれるのかと思うほど。本人曰く、昨夏から取り組んできた体幹トレーニングが身を結んだのだとか。ケトルベルというヤカンのような形のダンベルを振り、身につけたパワーは、もともと強かったがぶりの威力をさらに増していました。

↓ケトルベルトレーニングに励む琴奨菊!


これで強くなれるのか…!?

アレ、買え!これを買え!


↓ドラクエからヒントを得て精神面も成長したんだってよ!

<琴奨菊が無傷7連勝 ドラクエから学んだ気力充実>

14年名古屋場所で8連勝して以来の初日から7連勝。だが前半戦は好調でも、終盤で負け込むことも多かった。「中日を過ぎると、一番きつい。そこは体力じゃないんだよね」と言うが、当時とは「全然違う」と精神面の成長を強調する。朝稽古後には「面白い例えがあるんだけど…」と、有名ゲーム「ドラゴンクエスト」を例に語り始めた。

「ドラクエは攻撃面では体力を使うから、数値が減るでしょう? 強い相手になると魔法も使わないといけない。必殺技を使ったら数値が減る。『やくそう(薬草)』とかを飲まないと回復しない。それが気力。ゲームもちゃんとできてるんだな」。

ドラクエでは魔法を使う際にマジックパワーを消費し、回復アイテムなどで補う。相撲に置き換えれば、身を削って戦う体力に加え、上位戦となれば、より強力な技を繰り出さなければ勝てない。必要なのは体力だけではなく気力。ゲームから勝負のキーワードを得ていた。

全勝は白鵬と2人。06年初場所の栃東以来、10年ぶりの日本出身力士優勝の筆頭候補となったが、自宅には、場所後に結婚式を控える妻祐未さんという「やくそう」がある。折り返しとなる中日は、第1関門の稀勢の里戦。猛者ぞろいの後半戦へ、気力十分の最古参大関は、土俵でドラクエばりの魔法を繰り出すつもりだ。

http://www.nikkansports.com/battle/sumo/news/1593247.html

・ドラクエは攻撃面では体力を使う⇒使わない
・数値が減るでしょう?⇒攻撃しただけでは減らない
・強い相手になると魔法も必要⇒別にそういうことではない
・魔法で減った気力はやくそうで回復⇒やくそうは体力回復

「やくそう」は大体8ゴールドくらいで売ってる、一番手軽な体力回復の道具な!

場所後に結婚を控える妻祐未さんという「やくそう」って、何かもういろいろと間違い過ぎてて微妙に失礼…!

IVANKO ケトルベル 32kg

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単にパワーが増しただけでなく、スピードも増し、それゆえに弱点とも言えた「変化」に屈することもなくなりました。変化より琴奨菊の踏み込みのほうが速く鋭い。三日目、スピード自慢の嘉風を一気に持っていた瞬発力。四日目、安美錦のはたきを上回る速さで土俵外に突き進んだ一気呵成。八日目、アレを真っ向寄り切った会心の取組。十日目、横綱・鶴竜に何もさせなかった横綱相撲。強い、ここまで強かったのか。

迎えた十一日目。相手は全勝で並ぶ大横綱・白鵬。通算対戦成績、4勝46敗。10回に1回勝てればいいレベルでチカラの差がある相手。しかし、琴奨菊は「噛み合った」。白鵬はわずかに呼吸をずらし、先に立とうという立ち合い。左で張って右差しを狙う構えです。しかし、今場所の琴奨菊は速い。鋭い反応から、白鵬以上の踏み込みを見せると、ここまでの十日間とまったく同じように左を差して右を抱える左四つに。差し勝った。

上体を起こされた白鵬は、懸命にこらえるも一瞬で土俵際まで追い込まれます。回り込んで反撃の機をうかがおうにも、文字通りズルズルと後退させられてしまう寄り。最後は伸び上がって全体重をかける琴奨菊。諦めたように土俵を割る白鵬。大関が横綱に勝っただけで、金星でもないのに乱れ飛ぶ座布団。大きな、大きな、大きな勝星でした。

↓みんな嬉しそうだな…!そうか、日本出身力士だもんな…!


この相撲なら優勝できそうだな…。

ここから崩れたりしないよな…。

充実してるから単独トップなんだもんな…。

ここから崩れたりしないんだよな…。

アレはその直前、嘉風に転がされクビを傾げていました。6勝5敗の低調な成績は、カド番の予感すら漂わせるもの。もはやカメラもその姿を追うことはなく、期待を懸ける者もいません。琴奨菊が拝みポーズで集中する脇をケツだけが通り過ぎていきます。そうだな、日本出身力士としての優勝の可能性はもうとっくに潰えているもんな。初日にインチキ物言いで取り直しまでさせてやったのに、毎日のように転がってるもんな。もうアレの今場所は終わっているんだな…。

↓みんなとっくに奥の爺様みたいな目になってるんだろうな…!

怒るでも、嘆くでもなく、淡々と受け止めるような諦観を…。

応援団も解散だ、解散…。

もう琴奨菊の綱取りでも応援しようや…。

あきらめる勇気 [ 村瀬孝生 ]

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一般論で言えば、昇進を争ってきたライバルの活躍に奮起し、アレがさらなる成長を見せる、ということになるのでしょう。が、ならないと思います。そんなことで成長するなら、アレがこんな体たらくで留まっているはずがない。場所前の連合稽古で、琴奨菊がアレとだけ稽古をしたあと何と言ったか。「一番強いから。稀勢の里を持っていけたら、ほかの力士も持っていける」だそうですよ。ハハハハハ。どこが一番強いんだ…。「やくそう」でも煎じて飲ませてやりたい…。

どうなったら満足な結末を迎えられるのか。しばらくは悩みの時間となりそうです。いつも通り白鵬が勝てば余計な辛さが消えるのか。ただ、そうなればアレは負け越し濃厚で、それはそれで辛い。いっそドーンと幕尻まで下がれば優勝できるのか。いやいや、そこではやっぱり適当に3つくらい負けるんだろう。「自分以外全員インフル」くらいのビッグチャンスがなければきっとダメなんでしょう。

日本出身力士が優勝から遠ざかって10年となった場所、そのトンネルは抜けられそうですが、きっとアレは「幕下優勝以来、優勝と名のつくモノから遠ざかってきた年月」を12年に更新するのでしょう。30手前くらいの女性が「もう貴方を待つのに疲れたの!」って部屋を出て行く気持ちが、今ならわかる気がします…。

↓この笑顔をオラぁ土俵の上で見たいんだ!

めっちゃ楽しそうやんけ…。

相撲のあとでこんな顔したこと、あったっけな…。

↓もう少し楽しそうに相撲に取り組んでみたらどうだろう?


ほぼほぼイヤイヤじゃないか…!

いい言葉を教えよう、「笑う門には福来る」だぞ…!

Nhk大相撲ジャーナル 2013年 8月号 【雑誌】

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「日本出身力士うんぬん」が終わったら、アレはラクになれるのかな…。