「選ばれるだけだったらなにもしていないのと一緒」。そう前日に語っていた井手口は、決勝点という結果で自身の価値を証明した。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

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 サウジアラビア戦の前日、今予選初出場の可能性が高まっていた井手口陽介に意気込みを訊くと、こんな言葉が返ってきた。
 
「本当にこの2試合なんにもできていないので、出場機会をもらえれば、悔しい想いを晴らしたいです。選ばれるだけだったらなにもしていないのと一緒。決勝トーナメントでも使ってもらえるようにアピールしたいです」
 
 果たして先発に名を連ねた井手口は、望外の活躍で想いを成就させた。
 
 53分、右サイドで南野拓実がボールを持つと、ゴール前へ駆け上がり、折り返しをダイレクトで右足で流し込んだ。最も求めていたゴールという結果。指揮官に存在を大きくアピールする一撃だった。
 
 日本はサウジアラビア戦に4-3-3で臨み、井手口はアンカーの三竿健斗の前に大島僚太と並びインサイドハーフでプレーした。求められたのは、攻撃面では前線へパスを供給する働き、守備面では相手の2ボランチのマークだった。井手口は攻守で役割を果たすべく積極的にボールに絡んだ。
 
 序盤は固さからかパスミスがあったが、11分にはオナイウ阿道の落としを受けてシュートを狙い、15分にはオナイウの突破のこぼれ球に反応して右足を振り抜く。ボールはDFに当たりわずかにゴール左に外れたが、このプレーで得たCKから松原健が決定機を迎えるなど、チームに攻撃のリズムを生み出した。
 
 そして後半立ち上がりの前述のゴール。
 
 現チームでのボランチは遠藤航、大島という“鉄板コンビ”、原川という実力者が揃うレギュラー争いの最激戦区となっている。しかし、サウジアラビア戦のゴールで手倉森誠監督の頭のなかには、井手口という選択肢が大きく広がったはずだ。
 
「まだまだやれるなというのは感じています」
 
 本人も自信を深めている。
 
 G大阪ユース育ちで、宇佐美貴史以来の飛び級でトップ昇格を果たした19歳の“逸材”は段違いの成長速度を見せる。このゴールをキッカケに決勝トーナメントでも重要な役割を担う可能性は大いにあるだろう。
 
取材・文:本田健介(サッカーダイジェスト編集部)