立ち仕事、妊娠・出産、遺伝的体質が3大原因(shutterstock.com)

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 血行が悪くなる寒い冬の季節に起きやすい病気がある。たとえば、下肢静脈瘤。静脈の弁逆流防止が壊れるため、血液が心臓に戻らなくなる病気だ。長時間の立ち仕事、妊娠・出産、遺伝的体質が3大原因である。

 下肢静脈瘤は、長時間、同じ姿勢で立っている仕事に従事している美容師、理容師、調理師、販売員、教師、看護師などが発症しやすい。妊娠中や出産後に発症する女性も多い。とくに妊娠や出産の回数が増えるほど罹るリスクが高くなる。また、親族に下肢静脈瘤の人がいる場合は、遺伝的な体質が誘因になって発症しやすい。

 下肢静脈瘤は4つある。

  嵒在静脈瘤」は、足の付け根や太ももの内側、ふくらはぎの表面近くの太い血管が蛇行したコブのように浮き出る。足のだるさやむくみ、こむら返りなどの症状がある。進行すれば、強いかゆみや湿疹、色素沈着などの皮膚炎症を引き起こす。
 ◆崑枝静脈瘤」は、伏在静脈瘤から枝分かれした細い血管が浮き出る。膝から下に多く見られ、伏在静脈瘤に比べると血管のコブは小さい。
 「網目状静脈瘤」は、直径2〜3mmの細い静脈が拡張し、網目状の青色の血管が膝裏の皮膚に現れる。
 ぁ屮モの巣状静脈瘤」は、皮膚の浅い部位を通っている直径1舒焚爾虜戮ぬ唳抃豐匹坊豈佞溜まり、クモの巣のような放射線状に浮き上がる。

 下肢静脈瘤はどのようにして起きるのか? 静脈は、体内で不要になった老廃物を含んだ血液を、足の筋肉のポンプ作用によって心臓まで運ぶ。足の静脈には、筋肉と皮膚の間にある表在静脈と、足の付け根や膝裏の筋肉内にある深部静脈がある。表在静脈は、皮下の血液を深部静脈に運び、深部静脈は血液を心臓に戻す働きがある。

 足の静脈には、深部静脈の血液が表在静脈に逆流しないように、「ハ」の字型の逆流防止弁があり、重力に逆らって血液の逆流を防いでいる。逆流防止弁が壊れると、血液の逆流が起こるため、逆流した血液は、足の下の部位に溜まる。

 その結果、静脈は血液を心臓へ運べなくなり、血液の流れが滞るので、血管は徐々に拡張してコブのように見える静脈瘤になる。これが下肢静脈瘤だ。逆流防止弁は、一度壊れると修復できない。

足がだるい、疲れやすく、むくむ! こんな症状が強くなったら要注意

 下肢静脈瘤は、まず見た目に正常な血管でないと分かるが、女性ならスカートがはけない、人前で足を見せることができないなど、外見的な兆候が強まる。

 やがて、足がだるく重い、足がむくんで疲れやすい、歩行時や就寝時に足がつる、痛みやかゆみを感じるなどの自覚症状が出る。進行すれば、皮膚炎、湿疹、色素沈着を伴うことが少なくない。

 さらに、血液の循環が悪いため、エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)や下腿潰瘍に進行する恐れが強まる。下腿潰瘍は、下肢のふくらはぎの下の部位に生じた慢性の湿疹や血行障害による潰瘍だ。

 下肢静脈瘤の治療法には、硬化療法、ストリッピング手術、高位結さつ術、圧迫療法、レーザー治療などがある。

 「硬化療法」は、静脈内に硬化剤と呼ぶ薬剤を注入して血管を閉塞させ、静脈瘤を消失させる。手術のような傷は残らず、体の負担も少ないが、クモの巣状静脈瘤などの細い静脈瘤に有効な治療法だ。

 「ストリッピング手術」は、血管内にワイヤーを通して静脈瘤血管を引き抜く。太い血管の伏在静脈瘤の標準的な治療法だ。半身麻酔や全身麻酔で行われ、傷も残りやすい。手術後の痛みが強く、皮下出血、神経障害などの後遺症を伴うことがある。

 「高位結さつ術」は、弁不全のある静脈と深部の静脈の合流する部位を糸で縛って血液の逆流をくい止める。局所麻酔で行われ、傷はストリッピング手術よりも小さいが、入院が必要になる場合がある。再発率が高いため、多くは硬化療法と併用される。

 「圧迫療法」は、伸縮性の強い医療用の弾性ストッキングを履き、拡張した血管を圧迫して下肢に血液が溜まるのを防ぐ。深部静脈への血流が促がされ、下肢全体の血液循環が改善されるので、だるさや足がつるなどの症状が緩和される。妊娠中や仕事の事情などで、手術できない場合に行なわれる。

 「レーザー治療」は、壊れた逆流防止弁にレーザーファイバーを通し、血管内からレーザーを照射する血管内治療と、皮膚表面からレーザーを照射し、皮膚下にある静脈瘤を収縮させる治療がある。
 
 「血管内治療」は、太い血管の伏在静脈瘤や側枝静脈瘤に行なわれ、皮膚表面からレーザー照射する治療は、細い血管の網目状静脈瘤やクモの巣状静脈瘤に活用されている。レーザー手術は、治療時間が短く、体に負担が少なく、再発率が低いメリットがある。

 このように、下肢静脈瘤は、立ちっぱなしの状態を続けると、重力によって血液が戻りにくくなるために、血液が足の静脈に滞りやすくなり、逆流防止弁が働かなくなって発症する。自然に治ることはなく、加齢とともに悪化する。とくに血行が悪い冬は起きやすいので、注意が必要だ。

 前述したような自覚症状が少しでもあれば、下肢静脈瘤の疑いがあるので、血管外科や静脈瘤専門クリニックなどで適切な診断・治療を受けてほしい。
(文=編集部)