Airbnbrは一気に世界展開を実現した Reuters/AFLO

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 電気製品や自動車に代表されるように、日本人は、モノを「軽く」「薄く」「短く」「小さく」したり、少しずつコストカットするなどの改善を積み重ねたりして、競争力を高めることを得意としている。しかし、ビジネスを取り巻く環境は大きく変わり、それだけでは生き残れなくなった。

 経営コンサルタントの大前研一氏は、この新しい1年は「0から1」、すなわち「無から有を創造する力」がますます重要になると指摘する。大前氏は、まず激変したビジネス環境を知る必要があると主張する。

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 近年、「国家」や「企業」の枠組みを越えた「個人」のアイデアと実行力ひとつで新しい商品やサービスが生まれ、社会が大きく変わるようになった。
 
 今年もその傾向がより加速することになるだろう。ビジネスマン個々人が、商品開発でもエンジニアリングでも、あるいは営業でも、新たなビジネスを切り拓く能力が必要になる。

 無から有を生み出すことを「ゼロイチ」「ゼロワン」と呼ぶが、いま「0から1」を生み出すためのビジネス環境が激変していることを、まず知らねばならない。意欲と能力のあるビジネスマンにとっては大きなチャンスが到来しているとも言える。
 
 20世紀のビジネスの三要素は「ヒト・モノ・カネ」と言われたが、それが今や「クラウドソーシング」「クラウドコンピューティング」「クラウドファンディング」という「3つのクラウド」で代替できるようになり、少人数でも(極端に言えば1人でも)、あるいは設備や資金がなくても、新たなビジネスが展開できる時代になった。
 
 つまり、従業員は、クラウドソーシングで国内外の人材に外注すれば、これまでの数分の1〜数十分の1のコストで済む。ハードウエアやソフトウエアは、クラウドコンピューティングを利用すれば、巨大なサーバーなどを自前で持つ必要はなく、スケーラブル(規模の拡大が可能)だ。
 
 また多くのアプリも廉価に利用できるようになっている。事業資金も、良いアイデアであればクラウドファンディングによって不特定多数の人たちから容易に調達できる。新興ベンチャーキャピタル(VC)の増加も、資金調達を容易にしている。

 今やアメリカ最大のVCは、かつて自らが起業した経験を持つアンドリーセン・ホロウィッツだ。インターネット閲覧ソフトのモザイクやネットスケープを開発したマーク・アンドリーセンと、ソフトウエア企業オプスウェアのCEOを務めたベン・ホロウィッツが2009年に創業した会社である。同社の場合は、共同創業者の2人が自分たちの金を元に投資しているため、すべて他人から預かった金を運用している大手VCより決断が速く、リスクも取れるという特長がある。
 
 日本でも、スタートアップ(ベンチャーの中でも、新しいビジネスモデルを開発して短期間で大きな成長を目指す企業)を対象にしたVCが次々に誕生している。そこではカネを出すだけではなく、新ビジネスのために優秀な即戦力の人材を紹介するなど、「0から1」を創り出そうとする人々のための環境が生まれ始めた。
 
 そうした変化が起きた結果、世界的にビジネスの成否を見極めるスピードが著しく速くなった。今は創業2〜3年で「0から1」を生み出して黒字化できるかどうか、メドをつけるのが一般的だ。3年目までに黒字化のメドがつけば、そこから先は、やはり「3つのクラウド」を活用することによって「1から100」へ、「100から1万」へと、エクスポーネンシャル(指数関数的)にスケールを拡大していくことが可能になる。
 
 ところが日本では、明治以来の「欧米に追いつけ、追い越せ」型で突き進んできたメンタリティの影響によって、今も古いビジネスモデルにとらわれたまま成長を目指す企業が多い。
 
「カイゼン」や「軽薄短小」という言葉があるように、これまで日本企業はすでにあるものをより良くすることや軽く薄く短く小さくすることで成長してきた。つまり「0.3を0.5」にしたり「0.7を0.85」にしたりすることが得意なのである。もちろん、それはそれで悪いことではないし、その方法で世界トップになった企業もあった。しかし、これからの時代は「0から1」を生み出さないと、生き残っていくことはできないのである。

※SAPIO2016年2月号