いまの日本のSUV市場は、ホンダ・ヴェゼル、トヨタ・ハリアー、そしてこの日産エクストレイル......が、毎月順位を入れ替えながらトップをあらそう"御三家状態"となっている。

 エクストレイルは2000年に初代モデルが登場してから、先代の2代目(第9回参照)の途中までは"国産SUV売上ナンバーワン"の座を長くキープする鉄板銘柄だった。

 初代〜2代目のエクストレイルはモダンで洗練された乗用車設計でありつつも、昔ながらのオフローダーを思わせる四角四面スタイルや引き出しなどを駆使した便利収納に加えて、本格的な悪路性能、アウトドアで使い倒せる防水インテリア......といったツボが売りだった。"タフギア"というキャッチフレーズが、単なるお題目ではなかったのだ。

 さらに、エクストリーム系スポーツとのコラボを積極的にしかける独自のプロモーションも、初代以来のエクストレイルの伝統。そうした地道かつ巧妙な手法で、"スキー、スノボにマジ使いするならエクストレイル"という絶大な信頼感とイメージの構築に成功した。

 もっとも、いまのSUV市場は、かつてみたいにエクストレイルひとり勝ちを許す甘い状況ではなくなっている。

 たとえば、より小さくて手頃な(ヴェゼルを筆頭とした)コンパクトSUVが大増殖したし、上級クラスから階級ダウンしてエクストレイルにブツかってくるハリアーもある。しかも、SUVの市場規模がかつてとは比較にならないほど拡大して、エクストレイルのような"タフギア"を必要としないライトユーザーが大量流入したことも大きい。

 最新の3代目エクストレイルは従来とは一転して、スタイリングはうねるような曲線基調、そしてインテリアもまるで高級セダンみたいな仕立てである。聞けば、ちょうど2代目エクストレイルの発売前後から、SUV市場は日本のみならず世界的に急拡大、かつ大変貌。昔のような泥んこ系テイストは急速にウケが悪くなったからだという。エクストレイルは今も"タフギア"をうたっているが、少なくとも見た目は、そのキャッチフレーズにはまるで似合わなくなった気もする。

 ただ、見るのと、乗って触って使うは別問題。エクストレイルは、いまでもやっぱりエクストレイル。伝統のツボは健在......どころか、そのうえで「本気で使うなら、やっぱりこれかなあ」と思わせる機能性である。

 スタイリングもたしかに表面は丸っこいのだが、基本骨格は後ろ半分の容量をきっちりと確保した生真面目なプロポーションで、後席やトランクはクラストップ級に広い。スポーツやアウトドアの道具を、濡れたままトランクに放り込める防水インテリアもきちんと設定されている。

 走りもドシッと重厚。どこぞの新興勢力SUVのようにチャキチャキ曲がったりはしないが、ゲレンデ特急(笑)よろしく高速道に乗ると、ヒタッとフラットに落ち着いて、ストレスのない安定感。高速を延々ひた走る使い方だと、このクラスでもっとも快適で疲れにくい。高級になったけどやっぱりタフ。

 さらにハイテクを駆使した独自技術の "アクティブライドコントロール"もメチャ効く。これは四輪ブレーキを緻密に操ることで、凹凸路での前後方向の揺れをおさえる技術。黒子に徹するアシストなので、無意識に乗っているとなんの感動もない(!)のだが、ほかのSUVで同じ道を同じように走ると、ステアリング操作もままならないほどバウンバウンといろんな方向に揺すられて驚く......というシロモノである。つまり、悪路上級者の名人級アクセルコントロールを、機械が勝手にやってくれる目からウロコの新技術である。

 熾烈なSUV市場で、いまだにエクストレイルがトップを張っている理由は、絶大な知名度に加えて、今の日本の空気にドンピシャのハイブリッドが追加されたおかげもあるだろう。ハイブリッドというと顔をしかめる悪路マニアもいるだろうが、毎日の実用ではトヨタ系ハイブリッドに匹敵する滑らかさでありながら、モーターの出力設定やバッテリー重量や搭載位置も綿密に設計されていて、過酷な走りにもネを上げないタフギアっぷりは損なわれていない。

 エクストレイルの機能や走りは、表面的にスポーツカーや高級サルーンをマネしたがる新人に百戦錬磨のベテランが「SUVっつうのは、そういうもんじゃない!」とツボを諭しているかのようでもある。

佐野弘宗●取材・文 text by Sano Hiromune